医療過誤:顔の傷跡

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2017.9.8mf更新
河原崎法律事務所
弁護士河原崎弘

質問:顔の傷跡

私の子どもは3歳の女の子です。
その子は、病院で帝王切開で産まれたのですが、そのときに頬の中央部に医師のメスにより長さ3cmほどの傷を負いました。担当医は、「傷はすぐに消えますよ」と言っていたので、私は安心していました。
ところが、その子が3歳になった今も傷はくっきりと残っており、女の子ですので、私は、将来を考えて大変心配しています。
先日、その病院に行ったとき、医師は、「形成外科で治療できます」と言っただけで、謝ろうとせず、責任を感じていないようです。
私は、腹ただしく思い、医師に対して損害賠償を請求したいのです。せめて治療費だけでも請求したいと思っているのですが、今からできるでしょうか。

弁護士の回答:後遺症等級表に該当するか

時効

医師および使用者である病院に対し治療費を請求できます。
不法行為に基づく損害賠償請求権は「損害および加害者」を知ったときから3年経過すると消滅時効にかかります(民法724条)。治療契約による債務不履行に基づく 損害賠償請求権も10年で時効消滅します。しかし、時効については判例では色々救済されていますので、大丈夫でしょう。
医師は、初め、「傷はすぐに消えますよ」と言ったのですから、あなたは損害をまだ認識していなかったと解釈できます。 後遺症に気付いたときを時効の起算日とすることができます。

傷の程度

形成外科で傷が直らない場合は後遺症に基づく慰謝料および治療費を請求できます。 後遺症等級表 によると、一応、外貌に著しい醜状を残すものとして7級、あるいは、外貌に相当程度の醜状を残すものとして9級、 醜状を残すものとして12級に該当しますので、傷の程度で判断してください。
傷の程度による顔面の醜状の判別は、次の通りです。

認定基準

厚生労働省労働基準局長平成23年2月1日通達

1 外貌の醜状障害
(1)「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分をいう。
(2) 外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人 目につく程度以上のものをいう。
@ 頭部にあっては、手のひら大(指の部分は含まない。以下、同じ)以上の瘢痕又は頭蓋骨の 手のひら大以上の欠損
A 顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
B 頸部にあっては、てのひら大以上の瘢痕
(3)外貌における「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5cm以上の線状 痕で、人目につく程度以上のものをいう。
(4)外貌における単なる「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程 度以上のものをいう。
@ 頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
A 顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線状痕
B 頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕
(5)障害補償の対象となる外貌の醜状とは、人目につく程度以上のものでなければならないから、 瘢痕、線状痕及び組織陥没であって眉毛、頭髪等にかくれる部分については、醜状として取り 扱わないこと。
例 眉毛の走行に一致して3.5cmの縫合創痕があり、そのうち1.5cmが眉毛にかくれている場合は、顔面に残った線状痕は2cmとなるの で、外貌の醜状には該当しない。 '