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2014.11.18mf
弁護士河原崎弘

著作物を譲渡すると著作権侵害か

相談

私は、インターネットのオークションサイトに、(以前、ネットで購入した)英会話の教材本とCDを中古品として出品しました。それを見た英会話の教材本の販売元の会社が、内容証明郵便にて、 「弊社の英会話の教材本をオークションに出品して第三者に譲渡することは違法であるので、出品の中止をせよ。中止しない場合は著作権法違反で損害賠償を請求する訴えを提起する」と通告してきました。
私は、これは、常識に反すると考え、区役所の法律相談で、この件について弁護士に相談しました。
法律相談担当の弁護士は、「ネットで販売されている本は、一般の書店で販売されている本ではないので、その英会話教材の本とCDは販売元の会社が言う通り中古販売をすることはできない」と説明し、オークション出品を中止すべきと回答しました。
英会話の教材本の販売元の会社の言うことも、区役所の弁護士の回答も、私には納得できません。これは、常識に反すると思います。
合法的に購入した著作物の転売は、著作権法に違反するのでしょうか。著作権法の正しい解釈を教えてください。

弁護士の回答

相談者が、教材本とCDの正規品を購入した場合、そのまま転売しても、転売行為に著作権法違反はありません。落札者においても教材本とCDを使用することは問題はありません。ただし、映画の著作物は除かれます。

著作権法26条の2第1項では、著作物の譲渡行為も規制しています。著作権法は、販売行為自体も著作権侵害に該当することを定めていますが、著作者の承諾の下に正規に一度販売された場合には、以後の再譲渡行為には規制が及ばないことを規定しています(26条の2、2項)。
これは、著作物利用の流通促進を図るという法の趣旨から、いったん譲渡に許諾を与えた複製物に関しては、以降それが転々と流通したとしても、最初の譲渡行為によって著作権者の権利はすでに使い切ったものとして扱うのです(消尽、用尽、消耗、exhaustion)。それ以後の譲渡行為に対しては権利主張を制限するという制度です。但し、プログラム著作物については制限があります(47条の3)。

英会話の教材本の販売元の会社の言うことも、区役所の弁護士の回答も、誤っています。相談者の考えが正しいです。

著作権法26条の2(1999年新設)

1 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
2  前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
 第六十七条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
 第六十七条の二第一項の規定の適用を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
 国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物
2011.6.29
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161