弁護士(ホーム)刑事法の争点 >事後強盗の問題点 更新2023.6.28
弁護士河原崎弘

刑事法の争点:事後強盗罪の問題点

事後強盗の未遂
このような判決が出た理由は、強盗傷人等の保護法益(人の身体の安全)が、財物の保護 法益より、大きくて重要と考えたからでしょう。 より大きくて重要な法益を基準にして構成要件の既遂、未遂を決めれば、そこに、小さな先行行為(窃盗)が含まれるからです。

事後強盗罪の予備
規定 身分犯 処罰可能か 処罰の必要性
最高裁昭54年11月19日決定
積極説
強盗をもって論ずる 身分は誰でも取得可能 予備罪は着手前 銃砲刀剣類所持等取締法の対象とならない行為
を処罰できる
消極説 予備罪の後に規定 窃盗犯との身分がない 窃盗の前段階は処罰不可

事後強盗の共犯
事後強盗罪は身分犯か
基本犯身分犯条文判例実行行為
不真正身分犯暴行罪・脅迫罪窃盗犯人との身分で刑が加重65条2項新潟地裁昭和42.12.5判決
東京地裁昭和60.3.19判決
暴行、脅迫のみなら財物を取還されても既遂ではないか
真正身分犯65条1項 大阪高等裁判62.7.17判決:傷害の限度でしか刑法60条を適用しなかった原判決を破棄 強盗致傷の共同正犯を認定暴行、脅迫のみなら財物を取還されても既遂ではないか


承継的共同正犯説(結合犯説):窃盗は身分ではなく、実行行為の一部とする説
理由
事後強盗の共犯説強盗の手段としての暴行であるので
暴行罪・脅迫罪説因果的影響の不存在


承継的共同正犯説(結合犯説):一罪性、一体性(判例百選総論p108)
理由
肯定説強盗の手段としての暴行であるので構成要件上不可分の犯罪なら全体で共犯が成立
肯定説強盗の手段としての暴行であるので分割可能な包括一罪なら分割
否定説行為共同説加功していない先行者の行為に共犯は成立しない
否定説因果的影響の不存在因果性は将来に向かってのみ進行する

登録 2006.11.5
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