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弁護士河原崎弘

常習犯罪の一事不再理効

質問
常習犯罪の場合、同種の複数の犯罪が、包括して1罪と扱われています。
中間の1罪につき、確定判決があった場合、それ以前に犯された犯罪はどのように扱われますか。あるいは、中間に常習犯罪としての確定犯罪があった場合は、それ以前に犯された犯罪はどのように扱われますか。

弁護士の回答
常習犯の場合、常習性が表れている犯罪は、包括的に1罪と扱われます。そこで、常習犯に確定判決があると、それ以前の犯罪は、全て、確定判決を受けた犯罪と1罪となり、後に起訴された場合は、免訴になります。
他方、検察官が、複数の犯罪をまとめて常習犯とせず、1罪として起訴した場合は、どうなるでしょう。これに関係する最高裁判決がありました。まとめると、下記のとおりになります。
前訴の判決の一事不再理効が後訴に及ぶと、後訴では、免訴判決を下す(刑事訴訟法337条1号)。
一事不再理効は、前訴の訴因と後訴の訴因を比較して決定することになります。

前訴:確定判決後訴後訴の実体判決結論
単純窃盗単純窃盗常習特殊窃盗最高裁判決平成15.10.7一事不再理効が後訴に及ばない
単純窃盗常習累犯窃盗 常習累犯窃盗 最高裁判決昭和43.3.29一事不再理効が後訴に及び、免訴
常習痴漢 単純痴漢常習痴漢 最高裁判決平成15.6.2一事不再理効が後訴に及び、免訴

43年3月29日の判決は、単に、訴因のみを比較するのではなく、前訴因の単純窃盗につき、実体に踏み込み、それが常習性の発露であるとの心証を形成した上で、両訴因が1罪の関係にあると判断したものと考えられている。
15年10月7日の判決は、実体上、常習特殊窃盗罪を構成する窃盗行為について、検察官の訴追裁量権に基づき、単純窃盗として訴因を構成できる、すなわち、分断して起訴できるとの考えに基づいている。
前訴の訴因と後訴の訴因を比較するに当たり、基本的に、訴因を比較すれば足り、常習性の発露と言う実体に踏み込む必要はないとの判断が示されている。
以上は、明快な理論ですが、一事不再理効を考える場合、訴因ではなく、公訴事実の同一性の範囲とすることとの調和をどうするか、問題が残ります。
登録 2006.6.1