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2022.2.10更新mf
弁護士河原崎弘
共同保証人の求償権
相談
私は、友人(専務取締役)の会社が銀行から1億円を借入れする際の連帯保証人になりました。連帯保証人は、私の外、友人と、社長でした。私は、その会社の役員ではなく、関係はありません。友人と社長は、「あなたには、迷惑をかけませんから、(保証人を)お願いします」と言いました。
ところが、その3年後、その会社は、倒産し、会社の債務は、自分の自宅を売却して友人が支払いました。
友人は、生前、社長に対し、自分が支払った金額の2分の1を請求していたそうです。
その後、友人が亡くなりましたら、友人の遺族(妻と2人の息子)の代理人弁護士が、私宛に、内容証明郵便にて、支払った額の3分の1を請求してきました。
私は、「あなたには、迷惑をかけませんから」と言われて、保証人になったのですから、責任はないと考えています。
相談者は、法律事務所を訪れました。
弁護士の回答
複数の連帯保証人(共同保証人)が、自己の負担部分を越える額を支払った場合に、他の連帯保証人に対し自己の負担部分を超える額を求償できます。しかし、
連帯保証人相互間の負担割合を決める基準については、@当事者の特約により、A
特約がないときは、受けた利益の割合により、Bこの基準
がないときは、平等と考えられています。
判例をみると、連帯保証人相互間で、保証契約時の事情により、連帯保証人の1人について負担部分がないものとする黙示の合意があったものとした判例があります(仙台高判昭61年1月27日、判例タイムズ591号56
頁、)。
他方、複数の連帯保証人相互間において、「君には迷惑をかけない」といわれて連帯保証人になった者でも、債務者(会社)から受益をしている事情があるので、「内部的負担部分を免除する合意や負担部分がないものとする黙示の合意があったとはいえない」とした判例もあります(大阪地判平1年5月30日、判例タイムズ725号168頁)。
さらに、「あなたには、迷惑をかけませんから」と言われて保証人になった場合は、求償しない特約があったとの判決もあります(高松高等裁判所平成10年5月21日判決)。
あなたの場合は、@友人が生前あなたに対し求償しなかった事実、Aあなたはその会社の役員でなく会社から利益を得ていない事実、B「あなたには、迷惑をかけませんから」と言われて保証人になった事実から、裁判では、あなたの負担分はゼロ、ないし、あなたには求償しない特約があったと認定される可能性が大きいです。
判決
- 高松高等裁判所平成10年5月21日判決
控訴人は、原審及び当審における本人尋問において、亡乙山から迷惑はかけないと言われたので、前記のとおり連帯保証をしたも
のであって、これにより四国銀行に対して保証責任を負うことはともかく、亡乙山が求償請求などすることはあり得ないと考えていた、
という趣旨の供述をし続けているところ、右一の認定事実によれば、亡乙山が生前、自ら提起した連帯保証人に対する求償金請求訴訟
において、控訴人だけを除いていたことは、右供述に符合するといえる(本件の証拠関係からして、控訴人を除いたことが単なる失念
によるものであったとは認め難い。)。
また、貝類博物館やシェルパレスは、亡乙山やその親族等の関係者が中心になって、設立・運
営していたものであり、控訴人は、シェルパレスの取締役とされてはいたものの、実質的な設立・運営には関与していなかったものと
認められることも、右供述を裏付けるものといえる。
そして、右供述の信用性を疑わせるような格別の資料はない。
したがって、右供述は信用できるものというべきである。
三 以上に認定検討したところによれば、控訴人が前記のとおり連帯保証をした際、亡乙山と控訴人との間で、亡乙山が連帯保証人の
一人として弁済をしても控訴人に対しては求償権を行使しない旨の合意が成立していたと推認するのが相当であるから、被控訴人らは、
控訴人に対し、求償権を行使することができないというべきである。
- 釧路地方裁判所平成5年3月16日判決
(二)(1) 以上の事実によれば、タケダは、原告の個人会社ともいうべきものであり、吉沢は友人として保証人になっていたものと認められるから、原告が
吉沢に保証人になってくれるよう依頼した際、原告の負担部分を一〇〇、吉沢のそれを零とする黙示の合意が結ばれたと認めるべきである。
(2) 助川についても、助川はタケダの工場長とはいえ従業員の立場で保証人となったものであるから、同じく、原告の負担部分を一〇〇、助川のそれを零
とする黙示の合意が結ばれたものと認められる。
- 仙台高等裁判所昭和61年1月27日判決
3 同一六枚目表八行目の「前記2認定の事情」の前に「連帯保証契約の際に、各保証人間において明示的な内部負担の取り決めが
なされなくても、連帯保証時の保証人相互間の事情に基づいて、保証人相互間の内部負担の割合につき相互に黙示的な合意が存ずる場
合には、負担部分はその合意によつて定まるものと解されるところ、」を加え、同裏四行目の「零である」を「ないものとする黙示的
な合意が存在したもの」に改める。
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