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2022.12.15mf
立替え払いによる求償債権の消滅時効期間
弁護士河原崎弘
相談:求償権の時効
知人が手術のために入院することになり、私に保証人になってくれと頼まれました。人助けと思って、保証人になりました。
知人は、無事、手術を終えましたが、入院が長くなったため、退院時には、手持ち金がありませんでした。
そこで、退院時に、私に請求が来ました。
私は、仕方なく、病院に、約125万円を支払いました。
当時、知人は、「必ず、返します」と言っていました。
その後、知人は、「返します」と言うのですが、返済せず、4年が経過しました。
この時点で、返済を迫ると、知人は、消滅時効をにおわすのです。
病院の債権は、3年で時効消滅するとは、本当でしょうか。
立替金もそうですか。
回答
旧法では、債権の種類別に消滅時効期間が決められていました。これが、2020年4月1日以後廃止されました。
債務者に代わり立替払いした第三者は、債権者が有していた権利と債務者に対する求償権を取得します。この求償権債権は、債権者が有していた債権とは、別で、時効期間も別です。
立替払いが、2020年3月31日までなされた場合
病院の有する患者に対する債権の時効消滅期間は、3年です(旧民法170条)。
病院に対して支払いをした第三者は、債務者(患者)に対し、求償権を取得します。この求償権の時効消滅期間は、10年です。
相談者の有している求償権は、まだ、時効消滅していません。
なお、立替え払いした第三者が、会社の場合は、求償権(立替金)の消滅時効期間は、5年です。
立替払いが、2020年4月1日以後になされた場合
病院の有する患者に対する債権の時効消滅期間は、5年です(民法166条1項)。
病院に対して支払いをした第三者は、債務者(患者)に対し、求償権を取得します。この求償権の時効消滅期間は、5年です。
相談者の有している求償権は、まだ、時効消滅していません。
なお、立替え払いした第三者が、会社の場合も、求償権(立替金)の消滅時効期間は、同じく、5年です。
判決
- 東京地方裁判所平成19年3月28日判決
控訴人は,前記2(4)記載の計算書(1)記載の日時,店舗において購入したとされる食料品の代金債務は,民法173条1号,174条4号の定める短期消滅時効(それぞれ2年,1年)によって時効消滅するところ,被控訴人の主張する立替金の支払時期から既に1年ないし2年以上が経過しており,短期消滅時効期間を経過している旨主張するので,以下検討する。
まず,民法173条1号は,「小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権」について2年の短期消滅時効を定めたもの
であるところ,その短期消滅時効期間は,本条に定められた債権が,取引社会の実情において比較的短期間のうちに請求又は弁済がな
され,処理されているのが通常であることにかんがみて,時効期間の短縮を図ったものであると解されるから,同号に定められた債権
の発生原因となる売買等の法律関係とはこのような趣旨が該当するものに限られるべきであり,たとえ原因関係が小売商人による売買
であったとしても,立替払委託に基づく代位弁済の結果,新たに発生した立替金支払請求権には,同号が適用されるものではないとい
うべきである。
また,同法174条4号も同様の趣旨に基づくものであり,同号の「立替金」とは,同号所定の営業をなす者が,その代価を立て替えた場合に限られると解すべきであるから,その契約関係の外にある者が代位弁済した立替金については,本条の適用がないとい
うべきである。
登録 2014.4.17
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