相談:弁護士紹介業務
はじめまして。
私は、会社を退職しましたが、元の仕事の関係で弁護士さんを沢山知っています。また、私が弁護士を知っているので、私に、紹介を頼むと言ってくる人も多く、弁護士に紹介してあげて、感謝されています。ときには、謝礼をもらうこともあります。
依頼者を弁護士に紹介することを繰り返すと、法律に触れますか。また、依頼者に弁護士を紹介することを仕事にして利益をあげることは、法律上、認められますか。
お答え
弁護士でない者(非弁護士)が行う法律事務と法律事務の周旋については、弁護士法 72条が規定しています。違反すると、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金で、重いです(同法77条)。
弁護士法72条(下記参照)は、次の行為を取締りの対象としています。
(1) 法律事務を取り扱う行為
(2) 法律事務の取り扱いを周旋する行為
「業とする」とは、反復継続の意思を持って行うことを言います。
この本文の読み方について、次の2つの説が対立していました。縁故者が紛争解決に尽力して本人が謝礼を贈った場合とか、知人に、好意で知り合いの弁護士を、複数回紹介した場合とか(二罪説では、このような場合も処罰される)は、本条の対象として処罰されるのでありません。
- 一罪説
非弁護士が
条件1 報酬を得る目的で + 条件2 法律事務を取り扱 い、又はこれらの周旋をすることを + 条件3 業とすること を禁止すると解する説 - 二罪説
条件 「報酬を得る目的で法律事務を取り扱うこと」 または「これらの法律事務取扱いの周旋をすることを業とすること」 をそれぞれ禁止するものと解する説
本条による取締りは、もつぱら、いわゆる三百代言的な行為に向けられています。
昭和47年7月14日の最高裁判決は、従来の判例を変更して、一罪説をとることを明らかにしました。すなわち、法律事務を取扱い、あるいは、周旋した場合でも、報酬を得る目的と業とする(反復継続性)の2つの条件がなければ、法律違反になりません。
あなたの場合も、法律事務の周旋に当たりますが、他の2つの条件、すなわち、報酬を得る目的と、業とするの2つの条件がなければ、法律違反になりません。謝礼を1回もらっても、法律に触れません。依頼者を弁護士に紹介することを繰り返しても、法律に触れません。
しかし、依頼者に弁護士を紹介することを仕事にして利益をあげることは、反復継続性がありますので、違法です。
判例条文
- 最高裁判所昭和46年7月14日判決
このような立法趣旨に徴すると、同条本文は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、業として、同条本文所定の法律事務を取 り扱いまたはこれらの周旋をすることを禁止する規定であると解するのが相当である。換言すれば、具体的行為が法律事務の取扱 いであるか、その周旋であるかにかかわりなく、弁護士でない者が、報酬を得る目的でかかる行為を業とした場合に同条本文に違 反することとなるのであつて- 最高裁判所昭和50年4月4日判決(出典:判例タイムズ324号195頁)
商人の行為はその営業のためにするものと推定され、商人の営業のためにする行為は商行為となるから、宅地建物取引業者である被 上告人が上告人の本件法律事件に関して法律事務を取り扱つた行為は、被上告人の営業のためにするものと推定されて商行為となり、 したがつて、右法律事務の取扱につき報酬支払の約定がなくても、被上告人は商法512条により上告人に対し相当額の報酬請求権を 有するのである。しかし、被上告人の右法律事務の取扱が商行為になるからといつて、直ちにそれが弁護士法72条に触れるものとい うことはできない。けだし、弁護士法72条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、かつ、業として、他人の法律事件に関して法 律事務の取扱等をすることを禁止しているのであり(最高裁昭和44年(あ)第1124号、同46年7月14日大法廷判決・刑集25巻5号690頁参照)、右の「業として」というのは、反復的に又は反復の意思をもつて右法律事務の取扱等をし、それが業務性を 帯びるにいたつた場合をさすと解すべきであるところ、一方、商人の行為は、それが1回であつても、商人としての本来の営業性に着 目して営業のためにするものと推定される場合には商行為となるという趣旨であつて、商人がその営業のためにした法律事務の取扱等 が1回であり、しかも反復の意思をもつてしないときは、それが商行為になるとしても、法律事務の取扱等を業としてしたことにはな らないからである。そして、原審の適法に確定した事実によると、被上告人のした法律事務の取扱は、本件行為のみであり、しかもそ れを反復の意思をもつてしたものとは認められないというのであるから、これを弁護士法72条に触れるものとすることはできない。
弁護士法
第27条 (非弁護士との提携の禁止) 弁護士は、第72条乃至第74条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。 ・・・ 第72条 (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止) 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。