弁護士に対する懲戒請求が不法行為になるか

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2015.5.3mf
相談
私は、友人に紹介された弁護士に 離婚訴訟(裁判) を依頼しました。約 1 年の裁判後、和解で、被告(元夫)から、3000万円(慰謝料、財産分与)が入りました。お金は私の弁護士の口座に振り込まれました。弁護士は、そこからから報酬368万円と実費6万円を取りました。
私は着手金として100万円、裁判所出頭日当9回分27万円を支払っています。委任契約では、離婚の着手金50万円、報酬50万円、経済的利益があった場合は、弁護士会の旧報酬規定 の標準報酬額となっています。
しかし、弁護士が取った368万円の報酬は高すぎます。 そこで、私は 弁護士会 に懲戒の請求をしようと思っています。
私が懲戒請求をすると、弁護士から損害賠償請求されると言う人がいます。懲戒とはどんな制度ですか。私の申立ては認められますか。

回答
弁護士法 57条によると、 懲戒には、次の4種類があります。 退会命令あるいは除名では、弁護士として活動できなくなります。除名の方が退会命令より重いです。退会命令は、弁護士名簿から登録を取消されますが、その後(実際には難しいです)他の弁護士会に入会を認められれば再び弁護士活動ができます 。 これに対して、除名は、3年間弁護士資格を剥奪するという効力があり、その後も登録請求があっても、弁護士会は登録を拒絶できます。退会命令あるいは除名の懲戒処分の受けた弁護士が、再度、弁護士登録を認められることは難しいです。

ほとんどの懲戒申立は、下記判決のように濫訴であって、理由がありませんが、それでも、毎月、数件の懲戒処分が出ます。多い懲戒事由は、依頼された手続きを怠った(戒告)、非弁護士と提携した(業務停止)、預り金の横領(業務停止、退会命令、除名)などです。
懲戒処分は、弁護士会に掲示され、報道機関に公開され、日弁連(日本弁護士連合会)発行の雑誌「自由と正義」に掲載されます。

懲戒処分を受けることは、弁護士にとっては、大きな痛手です。特に業務停止以上の懲戒処分は弁護士の社会的信用を失わせ、弁護士にとって、致命的でしょう。3か月程度の業務停止の懲戒処分を受けたが、懲戒処分期間中に、法律相談などをして、さらに懲戒処分を受けた例が結構あります。法律相談をしないと、依頼人は、逃げて行ってしまうので、弁護士は懲戒処分期間中に法律相談をしたのです。継続的に弁護士活動をしていないと弁護士としての業務は成り立ちません。
懲戒処分は重要な意味を持ち、反面、不当な懲戒請求(申立)は、不法行為になることもあります。
虚偽の事実を主張して懲戒請求すると、不法行為になり、請求人に損害賠償支払い義務が生じます。下記判決参照。

あなたの場合、離婚についての報酬が50万円です。さらに、離婚裁判で3000万円の経済的利益があったのですから、旧報酬会規では、この標準報酬額は318万円です。そうすると、あなたの代理人(弁護士)の請求する報酬は、当初の契約とおりであり、不当とはいえません。

あなたの弁護士費用をめぐる問題は、純粋の民事の問題で、弁護士会の紛議調停あるいは裁判所で解決すべき問題で、弁護士会の懲戒手続きで解決すべき問題ではないですね。しかし、あなたの場合、事実を曲げて述べる(虚偽を述べる)のではなく、「報酬が高くて不当である」と、評価の主張をするのですから、懲戒請求が不法行為にはならないでしょう。

懲戒請求、懲戒処分統計
最近の統計(日弁連新聞より)では、懲戒処分を請求された弁護士のうち、懲戒処分を受けたのは、3.6%(2015年)、3.3%(2016年)です。多くの懲戒処分請求は、濫訴ですが、悪質な弁護士がいることも事実です。

全国の弁護士会の懲戒処分統計
懲戒請求総数除名退会命令業務停止戒 告
1997488312311
1998715222019
1999719352717
20001030171617
2001884042434
2002840333228
20031127433228
20041268232324
20051192232235
20061367323331
20079585112840
20081596121442
20091402153040
20101849172943
20111885523438
20123898022354
20133347262961
20142348633755
20152681353059
20163480434760

日弁連のページに 懲戒処分統計 があります。


弁護士会の力にも限界あり
最も重い懲戒処分は、除名です。除名の懲戒処分を受けた者は弁護士資格を失います。しかし、刑罰と比べると除名処分も軽いです。処分を受ける弁護士にとっても、最悪、弁護士の資格がなくなるだけで済むのです。懲戒処分に効果がない場合があります。その場合は、横領罪などで弁護士を刑事告訴をする必要があります。

判例
東京都港区虎ノ門3-18-12-301 河原崎法律事務所 03-3431-7161
2008.12.1