相談
私(日本国籍、日本に居住)は、
外国人との離婚手続きについて悩んでいます。
ペルー人男性と結婚していましたが、2002年12月、日本で協議離婚しました。しかし、まだ、ペルーでの離婚手続きはしていません。
ペルーでは協議離婚制度はなく、裁判離婚しかないからです。
ペルーでの離婚手続きを進めるには、ペルーで日本語のわかる弁護士に依頼し、裁判を起こす必要があるそうです。
日本語が理解でき、信頼できるペルー人弁護士を見つけるのも困難ですが、さらに裁判には何年もかかるそうで、とても気が重いです。
国際結婚が増えており、他方で、国際離婚も増えている中で、日本での離婚手続きだけでなく、配偶者の母国での離婚手続きも必要だそうですね。しかし、外国での離婚情報は少ないのが現状です。
何らかのヒントでも結構ですので、アドバイスがいただければ幸いです。
回答
誤解があるようです。
あなた方の場合、次の、いずれかの条件があるので、日本法が適用され、日本で協議離婚ができたのです( 法の適用に関する通則法 27条)。- 夫婦の一方である配偶者が日本に常居所を有する日本人である。
- 夫婦が日本に常居所を有する。
現在、あなた方は、日本では離婚が成立していますが、ペルーでは結婚していることになります。いわゆる跛行婚(limping marriage )という状態になっています。
現在の状態で、将来、あなたは、例えば、日本では再婚できます。
他方、彼は、再婚する場合、ペルー国では結婚していることになりますから、独身証明書が取れないので、再婚できないでしょう。
彼は、ペルーで有効な離婚手続きをする必要がありますが、あなたには、(ペルーで再婚するのでない限り)、その必要はありません。
他国での離婚裁判をする場合、通訳の助けを借りればよいのであって、それほど難しいことではありません。
一般論ですが、現地にある日本大使館、領事館、現地の弁護士会、現地の法律扶助協会(Legal aid)に弁護士の紹介を頼べばよいでしょう。
協議離婚を認めない(裁判離婚のみ認める)国の配偶者との離婚は、日本で、調停離婚ないし審判離婚をするとよいとの意見が多いです。これは、裁判離婚と同じ効力があるからです。
下記判決は、ペルー人の夫との日本人妻との離婚につき、ペルー法を調査し、家事審判法24条(現在は、家事事件手続法284条、調停に代わる審判)により離婚審判をしました。
判例-
東京家庭裁判所昭和63年2月23日審判
3 以上を前提に本件申立の当否を検討する。
(1)まず,相手方は我が国に住所を有するので,我が国に国際裁判管轄権が認められる。また,我が国における管轄権については,
相手方が合意しているため当庁にそれを認めることができる。
(2)本件離婚に関する準拠法は,法例16条に基づき夫の本国法であるペルー法となる。また,子の親権者を定めること及び子に
対する面接交渉を定めるについての準拠法は,法例20条により父の本国法であるぺルー法となると解される。
(3)ところで,ぺルー国法によると調停離婚は認められておらず,裁判離婚のみが認められている。したがつて,本件調停を成立
させることはできないが,我が国家事審判法24条に基づく審判は,資格を有する裁判官が事実審理をしたうえで法律を適用して行
なうものであり,ペルー国法による判決と同視しうると考えられるので,本件において,ぺルー法に基づき裁判離婚が成立する事情
が存するならば,家事審判法24条に基づく審判を行なうことが可能と考えられる。
(4)そこで,ぺルー法に基づく裁判離婚の成否について検討するに,申立人と相手方は結婚後2年以上を経過しているが,相互
の意見の不一致のため,結婚生活を維持することは困難な状況にある。したがつて,ぺルー国民法典247条10号,270条2号
に定める離婚事由が存する。また,同国法255条,393条に基づき,長女さゆみの親権者は母である申立人と定めることができ
る。さらに,同国法289条は「裁判官は判決中に,子女の監護に関し,親との音信が絶えることなきよう注意して規約を設けるも
のとする。」と定めているところ,同条は子との面接交渉に関する規約を裁判官が判決中で示すことを認めた条文と考えられる。そ
して,当事者間の面接交渉に関する合意は相当なものと認めることができるため,この合意を,裁判所が離婚判決中に設ける規約と
して認めることが相当と思われる。
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(東京メトロ神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 3431-7161
登録 2003. 1. 19