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慰謝料を支払ったのに、男性の妻から、再度、慰藉料を請求された
弁護士河原崎弘
相談:再度の不倫発覚
31歳の女性です。
以前、不倫をしていて、不倫相手の奥さんに見つかり、相手の奥さんに慰謝料70万円を支払いました。
その後、この相手と関係を続けた(不貞の継続
)ため、
浮気相手の奥さんに興信所で調べられ、訴えを提起されました。近い内に裁判所から通知がくるそうです。前に慰謝料を払って、この件は済んだはずなのに、また、払わなけばならないんでしょうか。
不貞関係を持ったというだけで300万円は請求されると聞きました。どのような発言に注意すれば、この件
は終わりますか。
男には多額な金(180万円)を貸したのに、返してくれそうにもありません。もう、お金は払
えそうにないんです。
相談者は、弁護士の意見を求めました。
回答:再度の不倫について責任あり
過去の不倫(不貞行為に加担する行為)につき慰謝料を支払えば、過去分の損害についての賠償は完了します。しかし、その後の行為(不法行為)についての慰謝料は、支払っていないのです。
その際、交際相手の家庭が(離婚していなくとも)破綻していれば(この場合、慰謝料は高額です。100万円〜200万円)、 和解すれば(婚姻関係が破綻した場合の和解 )、その後、関係を続けても、再度、慰謝料を支払う義務はありません。相手の婚姻関係は既に破綻していて、新たに損害は生じていないからです。
しかし、相手が奥さんと同居を続ける場合など、相手の家庭が破綻していなければ(この場合、慰謝料は少額です。50万円〜200万円前後)、この場合和解しても(破綻に至らなかった場合の和解)、その後、不貞関係を続けると、さらに、慰謝料を支払う義務が生じます。新たな損害が生じているからです。
下記東京地裁のケースでは、初めの判決では、100万円の支払いを命じられたが、不貞関係を継続したため、次の判決では、165万円の支払いを命じられています。
あなたのケースは、後者(相手の家庭は破綻していなかった)だったのでしょう。その場合は、不倫関係を継続すれば、慰藉料を支払う義務があります。
判例
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広島高等裁判所平成19年4月17日判決(出典:家庭裁判月報59巻11号162頁)
妻から夫及び夫の不貞行為の相手方に対する慰謝料請求事件(前訴)の確定判決がある場合,前訴は,不貞行為及びその結果婚姻関係が破綻したことによる精神的苦痛に対する慰謝料を請求するものであり,離婚によって妻が被る精神的苦痛については賠償の対象とされていないから,前訴の訴訟物と妻からの離婚請求に伴う夫及び夫の不貞行為の相手方に対する慰謝料請求(後訴)の訴訟物とは異なり,前訴の既判力は後訴に及ばない。
したがって,一審原告が本訴において請求することができるのは,完全に形骸化した婚姻関係を法的に解消したことによって被る新たな精神的損害のみであるところ,上記の事情からすると,一審原告に新たな精神的損害が生じたと認めることはできない。
- 東京地方裁判所平成18年11月28日判決(出典:判例秘書)
本訴は,平成17年10月17日に口頭弁論を終結し同年12月21日に言い渡された前訴判決において,被告は,Aに妻子がいることを認識し
ながら,平成16年2月27日から,少なくとも同年11月13日ころまで,Aと男女関係を継続したとして,合計110万円と遅延損害金の支払を命じられたにもかか
わらず,その後も,少なくとも平成18年1月8日から10日において,被告宅において,被告は,Aと男女関係をもったことが不法行為に当たると主張して,不法行為
に基づく損害賠償請求をするものであり,前訴判決で,不法行為と認定され,損害賠償を命じられたにもかかわらず,その後も,なお,不貞行為を継続し,原告の妻とし
ての権利を侵害したものとして損害賠償請求権を行使しているものであるから,被告とAとが男女関係を持つに至った経緯は,本件の不法行為に基づく損害賠償請求権と
直接関係しないし,原告がAを訴えていないことは,原告の被告への請求を妨げるものではないから,原告の本件請求は,何ら権利の濫用に当たるものではない。
(2)また,被告は,本訴は,前訴と全く同一の不貞行為を理由とするものであり,一事不再理の大原則に反するものであるなどと主張し,不貞行為は,単に肉体関係
を持ったことのみではなく,多分に精神的な要素も多く加味されるものであるから,一連の不貞行為が単に判決によって遮断されるとみるのは余りにも機械的であり,本
訴での原告の主張は,前訴で主張している事実とほとんど同じであり,まさに,同じ事実について二度審理することとなり,違法であるなどと主張する。
被告のこれらの主張は,やや理解し難い面があるが,いずれにせよ,前記のとおり,本訴は,前訴判決の口頭弁論終結後に発生した事実に係るものであり,前訴
と訴訟物を異にするものであるから,同一の事実についての審理を求めるものではない。また,前訴判決後も同様の不貞行為を継続しているとしても,それは,新たな不
法行為というべきものであって,実質的に前訴で審理されたものと同一であるとはいえないから,被告の主張は失当である。
仮に,被告が真に本訴の訴えの却下を求めるものであるとすれば,かかる申立ては,却下を免れないものというべきである。
5 争点(4)(損害)について
被告は,前訴判決で,Aとの不貞行為を認定され,慰謝料として100万円の支払を命じられたにもかかわらず,その判決直後も,かかる行為を継続していたもの
であり,その原告に与えた精神的衝撃,その他本件に顕れた事情を考慮すると,本件不法行為によって原告に与えた精神的苦痛を慰謝するには,150万円をもって相当
と判断する。そして,これと相当因果関係を有する弁護士費用は,15万円をもって相当と判断する。
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