支払い義務者に扶養家族が増えた場合の養育費減額請求
弁護士(ホーム) > 法律事務所 > 離婚/婚約破棄 > 支払い義務者に扶養家族が増えた場合の養育費減額請求
2015.6.20mf更新
相談:養育費の減額
私の夫は、バツ1です。元妻との間に子供(9歳)がいて、元妻が養育しています。夫と私の間に子供が生まれ、私も仕事を辞めました。
夫には、扶養家族が2人増えました。今、夫は元妻に月額12万円を送っています。この金額を減らすことはできますか。その場合、養育費はいくらになりますか。
夫(給与生活者)の年収は、1200万円です。
相談者は、弁護士会の相談所を訪れました。
回答
収入の減少、養育費支払い義務者に(稼動能力がない)扶養家族が増えた場合など、予期せぬ状況が発生した場合は、事情変更の原則により養育費の減額を請求できます(民法877条3項)。
配偶者の稼働能力
再婚し、子供が幼いため、配偶者が働けない場合は、配偶者(妻)は扶養家族にあたります。その期間を育児休業期間(10か月)とした審判があります。通常は、子どもが小学校高学年になるまで、稼働能力なしとされます。
養育費の計算
養育費算定表の金額は、支払い義務者に扶養家族がいない場合です。支払い義務者に扶養家族が2人いる場合の計算式は、この養育費の計算式になります。
元妻の年収を200万円として具体的な養育費の額を調べてみましょう。
権利者の年収200万円、義務者1200万円、義務者に扶養家族がいない場合、養育費算定表では、養育費は10万円〜12万円です。養育費計算機では、11万2000円と計算されます。
あなたの夫の扶養家族は、あなたと子供の2人です。そこで、養育費計算機で、義務者の0-14歳/他の欄に、「2」と入れて計算してみると、養育費は6万5000円と計算されます。現在の適正な養育費は6万5000円です。
家庭裁判所に対し、養育費減額を求める調停を申立ててください。6万5000円にはなりませんが、若干の減額は認められます。急激な減額は子の福祉に反する
裁判所は、子どもの福祉を考慮し、養育費の急激な変更は認めないでしょう。
平成4年の山口
家裁の審判では、3人で、8万2000円と計算したが、3人で9万円と審判しています。
下の表をご覧ください。
平成18年の東京家裁の審判例では、減額は認められましたが、算定表の金額の1.6倍です。
平成18年6月29日東京家裁の審判例
| 従前/平16年 | 今回/平17年 |
手続き | 公正証書 | 審判 |
養育費 | 14万円(2人) | 9万円(2人) |
義務者年収 | 492万3620円 | 563万8856円 |
権利者年収 | 132万円 | 260万6000円 |
手続
減額は、まず、家庭裁判所に養育費減額を求める調停を申立てます。調停が成立しない場合は、審判に移行します。
審判に不服がある場合は、高等裁判所に対して即時抗告をします(書類は家庭裁判所に提出する)。
即時抗告は、書面審理です。だいたい、申立てをして4か月位で決定が出ます。
審判例
- 東京家庭裁判所平成2年3月6日審判
当該合意がなされた当時予測ないし前
提とされ得なかった事情の変更が生じた場合にこれを変更し得ることも,事情変更の原則ないし民法880条に基づき肯定されるべきである。
これを本件でみるに,前記(1)ウで認定したような申立人及び相手方双方の再婚,未成年者らと有田との各養子縁組等の事実は,本件合意事項が交わされた当時,
現実問題として当事者双方共予想しあるいは前提とし得なかったと解されるのである。しかして,このような事情に伴い,申立人及び相手方双方の側の収支を含む生活状
況は,本件合意事項を交わした当時と比較して相当変化しているものと考えられるので,本件公正証書で成立した本件合意事項に基づく養育費の支払ないし負担義務を現
在もそのまま申立人に負わせることは,これが今後も相当長期間にわたる継続的給付を内容とするものであることにも照らした場合,客観的に相当性を失した状況になっ
ていることは否定し得ないものと解される。
したがって,この点において事情の変更を来したものと考え,当該変更の程度に応じて,以下,本件合意事項の修正を図るこ
ととする。
- 山口家庭裁判所平成4年12月16日審判(出典:家庭裁判月報46巻4号60頁
)
以上認定の事実によれば,本件申立時においては調停の成立した昭和63年当時とは申立人の収入が著しく変化したばかりでな
く,新たな家庭が出来,そのための生活費を確保せねばならない等,生活状況が大きく変化したことは明らかであるから,そのよ
うな事情変更を考慮し,事件本人らの養育費の額を相当額減ずることは己むを得ないというべきである。
このケースでは、義務者の減収、再婚して子供が2人生まれたなどを理由に、元妻に送っていた子供3人分の養育費10万5千円を9万円に減額しています。
-
東京家庭裁判所平成18年6月29日審判
父が,協議離婚の際に公正証書によって合意した養育費の減額を求めた
事案において,上記養育費は,いわゆる標準的算定表により算定される養育費の2倍以上の額であり,父の収入額からみて,これを支払い続けることが相当に困難な額であったこと,公正証書作成の経緯等の諸事情を考慮すると,双方の生活を公平に維持していくためにも,養育費の月額を減額変更することが必要とされるだけの事情の変更があると認められ,また,上記公正証書において,定められた月額養育費の支払いを2か月分以上遅滞したときは,その遅滞額及び将来にわたる未払月額養育費の合計額を一括して支払う旨の期限の利益喪失約定が定められているが,養育費は,その定期金としての本質上,毎月ごとに具体的な養育費支払請求権が発生するものであって,上記期限の利益喪失約定に親しまない性質のものであるとともに,養育費の定期金としての本質から生じる事情変更による減額変更が,上記期限の利益喪失約定により許されなくなる理由もないとして,
申立てを認容した
- 福島家庭裁判所会津若松支部平成19年11月9日審判(出典:家庭裁判月報60巻6号62頁)
(2)ところで,子の養育費については,養育費の支払義務者(本件では減額申立人)と子が同居していると仮定した場合に捻出することができる生活費を基準に算出すべきものであり,そこでは,成人の生活費の指数を100,15歳未満の子のそれを55とするのが相当である。
すると,現時点において,申立人と事件本人が同居していると仮定した場合の事件本人の生活費の割合は,D(再婚相手である妻)及びE(再婚相手との間の子供)の存
在を考慮しなければ55/(100+55)となるのに対し,D及びEの存在を考慮すれば55/(100×2+55×2)となり,後者は前者の2分の1の割合となっている。これによれば,本件養育費条項は,現時点において,その額を2分の1に変更するのが相当ということになる。
(3)他方,以上の検討は,D(申立人の再婚相手)に収入がなく,E(申立人とD間の子)の養育費全額を申立人が負担することを前提としたものである。
前記認定のとおり,Dの育児休業期間は平成20年4月×日まであり,その後はDもEの養育費を負担できるようになることが予想されるから,本件で本
件養育費条項の減額(注*月3万円)を認める期間(注*約10か月間)は,同月までとし,その後(注*月6万円に戻る)必要があれば申立人において再度減額等の申立てをするのが相当である
。
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301 弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161