812A・811A Single Ended Amprifier
(「A&Vフェスタ2009自作オーディオ自慢大会」にてベスト審査員賞を受賞)
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8012からVT−25(10)、809と寄り道をしたが、いよいよ本命の812Aに到達。これは有名な811Aのμを29まで下げたもので、それ以外は811Aと全く同規格。811Aはμが150もあるので、プラス領域だけで最大出力までドライブできるのでしばしばダイナミックカップリングで使われる。811Aに比べるとμが5分の一しかない812Aはプラス領域とマイナス領域の両方を使わないとフルドライブできないので、カソードチョーク方式に最適な球と言うことになる。

811A・812Aに共通する厄介な問題はフィラメントが6.3V・4Aと大食らいなので使える電源トランスが限定される。偶然オークションでMX−175が安価に手に入りヒーター回路が6.3V・5.2Aが2回路もあるので、別のシャーシにこれを載せてが外部から給電、809のほかの回路定数はそのままでとりあえず繋いでみたら、いきなり8Wの出力が得られた。このページのものはA&Vフェスタ出展用にシャーシを一つにまとめたもの。

ラジオ少年の200H・10mAのチョークが安いのでとりあえず使ってみたがDCRが2.75KΩもあって、6EW7の電位を20V以下に合わせるとB電圧が100Vを切ってしまう。それで手持ちのチョークの中でタンゴのイントラNC−18が80H・10mA(最大15mA)・DCRが0.6KΩと丁度良いので、これに乗せ変えて若干6EW7のB電圧とNC−18の後につける抵抗を調整したところ、B電圧152V、カソード抵抗1KΩ(カソードの合成抵抗1.6KΩ)で約10Wの最大出力が得られた。

以前に計算した結果では、出力管のグリッドに最大30mAくらい流れるので、カソードチョークにはその半分くらいは流す必要があったと思う。80H8mAでやっていたら、過電流で断線してしまった。

カソードチョークはその後ノグチトランスで新発売の30H・30mAが@1500円で手に入ったのでこれに交換した。カソードチョークはある程度コアの大きなものを選ぶこと。表示が30H・20mAと有っても、実際に20mAの電流を流すと数ヘンリーしかないものもある。

カソードチョークは直流では500Ωとか1000Ωだが交流的には数十キロΩになる。ここに音楽の信号が通るわけじゃないので、音に関しては安価な普及品でも高価な高級品でも全く変わらない。

カソードチョーク方式は、本来はWEかALTECの1940年代の技術じゃないかと思う。国内では那須好男、新井晃、佐藤進らが無線と実験とラジオ技術誌に発表しているが、2A3@、6V6A、45B、211C、300BDなどオーディオ管としても定評のあるものに限定される。

電源トランスのMX−175は348Vを整流子の直後に小容量のコンデンサー:4.7μFを入れるて擬似チョークインプットで通常の5H250mAのチョークが使えることを確認した。これでトランスの出力電圧とほぼ同電圧の直流電圧が得られる。

Valves’ Worldの811AダイナミックカップルがB電圧370Vで12.5Wなので、それよりは若干低電圧で同じ最大出力を達成している。

外側の白い枠はフィンランドバーチの合板(9mm)で、本来はハンドル兼引っくり返して調整する時の台だったが、812/811の背が高すぎてハンドルの役しかしていない。

オシロでざっと見たところでは10Hz〜105KHz+0dB、高低の両端で−3dB。音は809に比べて力強いく低音が浪々とでる。

配線の殆どが米軍用の銀メッキテフロン被覆線とテフロンチューブで絶縁。右下に大きな銀色のものが4個並んでいるのがビンテージSPRAGUEの1500V・0.22μF(この下に複合管4本分のゴチャゴチャした配線がある)。真中に配線の束があるが、OPTのインピーダンスとNFBの切り替え用。出力管の給電はフィルムコン(32μFX2が2個)を使ったが、シャーシに乗り切らなくなって、左端にSolenのチューブラを一個(75μF、400V)追加した。ハムバランサーはVRで最小点を探して、同値の固定抵抗に置き換えた(39Ω:51Ω)。

以前に書いたものと重複になるが、カソードチョーク方式の特徴をもう一度記すと:

  1. マイナスの電源が不要なので、電源回路は極普通のシングルアンプと同じ。
  2. 宍戸式と異なり、インターステージトランスの1次と2次のDCバランスを取る必要が無い。
  3. 3.5〜5KΩクラスの極普通に使われている出力トランスが使える。
  4. ドライバー管の動作はカソードチョークにより安定しているので(出力管のグリッド電流で振り回されないので)、ダイナミックカップリングや宍戸式イントラ反転のようなデリケートさは無い。ドライバー管は30mA流せれば三極管でも5極管やビーム管の三極管接続でも何でも良い。
  5. チョーク(@1500円)はインターステージ・トランス(@2〜30000円)に比べて圧倒的に安価。
  6. カソードチョークは直流では600Ωとか800Ωだが、交流を流すと数十キロΩ以上の高抵抗になる。これにオーディオ信号を通すわけじゃないので、特性については特にこだわらない。
  7. 信号経路の途中にインターステージ・トランスが入らないのでNFBが安定してかけられる。
  8. 調整はドライバー管のプレート電圧とカソードの抵抗値だけで極簡単、テスターとオシレーターとオシロで1時間もあればできる。
  9. これで高出力と広帯域と低歪が達成できる。VT−25なんか通常のA1では2〜3W(これじゃ普通のスピーカーを鳴らすには出力不足)しか出ないものが、カソードチョーク式では6〜7Wでる。
  10. 812A・811Aはフィラメントが大喰らいなので無理だが、809、801A、8012(8025A)なら普通のシングルアンプの簡単な改造で、透明な澄んだトリタンの送信管の音が楽しめる。
  11. 809(20ドル)、812A(45ドル)と人気の無い(ほかの方法では使い道の無い)安い球が利用できる。
  12. 低電圧だが大電流なのでGZ34では3ヶ月と持たないので、シリコンダイオード整流をお勧めする。
  13. ダイナミックカップリングや宍戸式イントラ反転に比べて、Gがプラス領域でもマイナス領域でも三極管か5極管・ビーム管の三結ならどんな球にでも適用できる。入門用のシングルアンプにカソードフォロア回路と安価なカソードチョークを追加するだけで、たちまち出力が2倍になる。安価な809(私が手に入れたのはバーゲンで僅か20ドル)を買ってくればたちまちトリタンの輝きと透明で歯切れの良い音が楽しめる。
スターリングで最終のチューニングをやって、812A、811A共に:

・ダイオード整流を採用(GZ34(JJ)は3ヶ月と持たない)
・周波数帯域は公称10Hz〜105KHz+0dB、高低の両端で−3dB(実際にはもう一寸広い)。
・最大出力(歪率5%)は11〜12W
・1Wの歪率は0.2〜0.3%
・残留ノイズは1mV以下(0.75〜0.92mV)
・DF2.5(812A)、3.2(811A)

811Aは偶然中国球が手に入ったので、おまけでダイナミックカップリングをやろうと追加したもの。今のところ6EW7のカソードにチョーク+10KΩを入れているが、この方が純粋なダイナミックカップリングより動作が安定しているように思う。

カソードチョーク方式は、回路を見ているとカソフォロドライバーのカソードにチョークが入っているが、出力管から見ればグリッドチョーク方式。これが動作が安定している理由じゃないかと思う。

ミューティング回路:このアンプは、ドライバー管の6EW7が温まるまでゼロバイアスで出力管のプレート電流は流れない。これがミューティング回路の役割をしているので、別にミューティング回路は要らない。

812Aと言うオーディオ用途には殆ど誰も使わない球を採用したので、ピカピカの赤ベースのRCA純正の球が、811Aの半値以下で手に入った。勿論特性図を見てカソードチョークでドライブできると言う確信の上で注文したが、また何処にも回路例がないので、かなりの部分がトライアンドエラーで、結果的にオリジナルの回路になった。これが成功した理由で無いかと思う。

試聴に使われるスピーカーがタンノイのタンベリーと言うことが予め事務局からのお知らせで判っていたので、自宅で同じユニットを使ったスターリングでチューニング(OPTのインピーダンスとNFB量)をやった。月曜日に事務局から、私のセッティングと同じ条件(5KΩ、NFB5dB)が一番良かったと聞かされた。

+バイアス管は歪が多いとか音が悪いとかいう人も居るが、歪に関しては宍戸式イントラ反転の特に初期のものの5%とか10%という大歪アンプの影響じゃないかと思う。実測値が示すとおり歪率は−バイアスのオーディオ管に比べて勝るとも劣らない。音に関してはA&Vフェスタのプロの審査員の耳を満足させたのだから、良いと言い切っても構わないのではないか。
7Hz〜107KHzまで+0dB、高低の両端で−3dBと広帯域
OPT:5KΩ、NFB:5dB
100Hz 1KHz 10KHz

方形波は特に癖も無く綺麗なもの。

引用文献:

@那須好男、ラジオ技術 1998年9月

A新井晃、無線と実験 1998年9月

B那須好男、ラジオ技術 2000年10月

C那須好男、ラジオ技術 2000年3月

D佐藤進、無線と実験 1998年7月

後になって送信管をカソードチョークを使ったカソフォロドライブをしている例が無いか探してみたところ下記の2つが見つかったが、カソードチョークは念の為につけてみたと言う程度で、最大出力も帯域も狭い:

E838シングル9Wモノラールアンプ(坂田昇 無線と実験 2003年2月)

FClass A2 SE 812A Amp

最後に前世紀半ばの遺物と言われていた真空管オーディオの更なる発展を願って。