APG MAJOR CLADES (グループ名)の解 説

 APGは、Angiosperm Phylogeny Group の略です。
 Aは被子植物、Pは系統発生、Gはグループ の意味を表します。
APGとは、被子植物系統発生グループのことです。
 現在、日本で広く採用されている分類法は、エングラーによるものです。
 エングラーは、花の構造がかんたんなものから複雑なものへ進化したと考え分類しました。
 それに対して、クロンキストは、複雑なものからかんたんなものへ進化したと考えたようです。
 ダールグレンは、大きくなった科を細分化しました。
これらの分類法は、どれも、花のつくりを観察によって似たものとちがうものに分ける方法です。
APGは、これらとはまったく異なる観点である、ゲノムの姉妹関係を調べて血統を決めていく、新しい方法です。
 したがって、厳密にいうと分類ではありません。進化の枝分か
れを表したものだといえましょう。
ようするに、われわれ人間社会の家系図のようなものです。
 1998年にAPGが発表されてから、2003年に大幅な改訂が行われ、APGU 2003 として知られています。
 APGは、新しい手法です。現在、たくさんの植物のゲノムの系統に関する部分を比較して姉妹関係を調べているところです。
 この作業は現在進行中で、まだ完了したものではありませんから、今後も新しい発見が出てくることが予想されます。
 これにより、現在発表されている系統にも修正が加えられることでしょう。
 資料は、主に2004 The Linnean Society of London,
Botanical Journal of the Linnnean Society, 2004, 146, 385-398 を使用しています。

被子植物について   angiosperms  アンジオスパームス
 花では、種子になる部分を胚珠といいますが、胚珠を包んでいるのが子房です。
 裸子植物には子房がなく、被子植物には子房があります。
 子房は胚珠を守るものだから、被子植物が、裸子植物から進化しただろうということは、だれにでも理解できます。
 被子植物とは、子房をもっている植物のことなのです。 

原始的被子植物について   basal angiosperms  ベイサル アンジオスパームス     (Neither Monocot nor Dicot)
 被子植物のルーツを調べるために、DNAを調べることが盛んになってきました。
 遺伝子の共通部分を調べることによって、植物の兄弟関係を追求しているのです。
 ニューカレドニアの高山でアムボレラという植物が注目され、DNA解析によって、今のところ被子植物では世界最古であることがわかりました。
 しかし、すでに絶滅してしまった植物もあるはずです。そういう植物は、化石で調べるしかありません。
 大昔の植物の化石は、動物と異なり、残りにくいものです。
 最近、岩石をとかして、中の化石をとりだす方法が開発されて、続々と植物の化石が発見されています。
 アムボレラより古い被子植物が見つかるかも知れません。
Basal Angiosperms
 双子葉植物と単子葉植物の共通の祖先を原始的被子植物と呼ぶことにします。
Not Assigned to Order
 原始的被子植物のうち、目(もく)に割り当てることのできないもので、主なものに、アムボレラ科、スイレン科、マツブサ科、シキミ科があります。
 目に割り当てることができるものを、まとめてモクレン類と呼ぶことにしています。
 これらは、原始的単子葉植物との姉妹関係が強いものです。 

モクレン類について   magnoliids  マグノリイヅ
 APG2001年では、magnoliidTとして扱われていましたが、最近では単に magnoliid と呼ばれるようになりつつあります。
 原始的にはちがいありませんが、アムボレアなどと比較すると、後述の真双子葉植物により近いからです。
しかし、それでもまだシュートの形態を強く残しています。
 すなわち、茎にあたる花軸上に葉にあたる花被、おしべ、めしべが、下から上に向かってらせん状についていることです。
 主なものにコショウ目、クスノキ目、カネラ目、モクレン目があります。
 センリョウ目もこのなかまに近いのですが、不明な点があって、現在モクレン類に属さない方向で考えています。
 モクレン類は、原始的単子葉植物とは兄弟の関係になります。
 原始的被子植物とモクレン類をあわせても、被子植物全体の、わずか3%しかありません。

基礎(原始的)単子葉植物について   basal monocots  ベイサル モノコッツ
 原始的被子植物のモクレン類であるコショウ目、クスノキ目、カネラ目、モクレン目が肩を並べて出現したときに、とんでもないことが起こりました。
 これらのなかまは、胚珠の中に子葉を2枚もっていたのですが、1枚の子葉でサヤのように胚を包んでしまったものが現れたのです。
 単子葉植物の誕生です。ずいぶんと変わった兄弟です。
 モクレン類の中にまじった「みにくいアヒルの子」というより、やはりミュータント(突然変異体)なのです。
 進化は、多かれ少なかれ突然変異が原因になるわけですが、これは極端な変異ということになりましょうか。
 この単子葉植物は、モクレン類とは姉妹関係になります。やたらにたての葉脈が目だつのです。これが平行脈に進化していきます。
 幼根が退化し、不定根という、ヒゲ根になってしまいました。双子葉植物でもさし木のときに出てくる根と同じものです。
 花被・おしべ・めしべ(心皮)が3の倍数になるものが出てきました。
 しかし、まだ進化した単子葉植物の特徴をすべてもっているわけではありません。
 これらを原始的単子葉植物(basal monocots)とと呼ぶことにします。
 さらに進化した中核単子葉植物と合わせても、被子植物全体の22%しかありません。
 主なものは、ショウブ目とヘラオモダカ目です。 
 ヘラオモダカ目の中には、身近なサトイモ科がふくまれています。有名なミズバショウもこのなかまです。

中核単子葉植物について   core monocots  コア モノコッツ   non commelinoids monocots    ノン コムメリノイヅ モノコッツ
 中核単子葉植物は、それ以前の原始的単子葉植物とは、単子葉植物といっても、どことなく異なります。
 ショウブやサトイモなどに比べると、だいぶ花らしくなってきました。
 原始的単子葉植物であるサトイモ科のミズバショウは、4枚の花被と4本のおしべをもっています。
  花被やおしべの数が少なくなってきたけれど、まだはっきり数が決まっていたというわけでもないのです。
  ところが、しだいに花被・おしべ・めしべ(心皮)の数が3の倍数になってくるのです。
 これを3数性といって、単子葉植物の大きな特徴となっていきます。
 中核単子葉植物は、この3数性が確立したものなのです。
 主なものは、次の通りです。
 ヤマノイモ目、タコノキ目、ユリ目、アスパラガス目(クサスギカズラ目)、つぎのツユクサ類もふくみます。

ツユクサ類について   commelinoids  コムメリノイヅ
 白亜紀が終わりに近づいたころ、アスパラガス目から突然変異によって新しい単子葉植物が誕生しました。
 それは、見かけは変わらないけれど、種子に大きな変化があったのです。
 今までの中核単子葉植物の胚乳はタンパク質や脂肪でした。
 しかし、新しい中核単子葉植物の胚乳は、デンプンだったのです。
 このことが、どうして重要なのでしょうか。
 種子は、子孫を残すための子供になるもとです。
 動物でいえば、卵のようなものです。
 卵には、こどもがよく育つために養分がつけられていますが、魚の卵とニワトリの卵を比べると、明らかに大きさがちがいます。
 しかし、からだになる胚の大きさには、大したちがいはありません。
 大きさのちがいは、養分の量によります。
 種子の胚乳は、子供がすくすく育つための養分です。
 植物の場合は、養分の量より質にちがいを生じました。
 動物のからだがタンパク質系なのに対して、植物のからだは炭水化物が多いのです。
 だから、胚乳がデンプンでできていることは、植物にとっては画期的なことだったのです。
 というわけで、ツユクサ類は単子葉植物を大きく二分する存在になるのです。
 したがって、ツユクサ類より前の単子葉植物を、とくに
Non Commelinoid monocots (ツユクサ類以外の単子葉植物)と呼ぶこともあります。

真双子葉植物について   eudicots   ユーディコッツ
 真正(真性)双子葉植物とも呼ばれています。
 被子植物は、アムボレラ科から始まったとされています。ついで、スイレン科などの原始的被子植物に進化していくのですが、それらは、子葉が二枚あり、いちおう双子葉植物であるといえます。
 その後、原始的被子植物の中に原始的な単子葉植物が生まれ、双子葉植物も、さらに進化して、今までとは異なった双子葉植物を生んでいます。
 それが真双子葉植物なのです。
 古い双子葉植物と真双子葉植物はどこがちがうのでしょうか。
 古い双子葉植物は、シュート(茎に葉がついた単位)のなごりをもっています。
 おしべやめしべは、茎に葉がつくような感じでついています。
 花被の数やつきかたに規則性がありません。
 受粉についても、古い双子葉植物の時代は、ハチやチョウなどがいなかったので、甲虫などに頼るようなしくみでした。
 真双子葉植物は、花托の上に花被やおしべ・めしべがのる形になり、数やつきかたは、より少なく規則性があるように整理されてきました。

早期真双子葉植物について   early-diverging eudicots  アーリィ ディヴァージング ユーディコッツ
 原始的被子植物は、シュートの名残(なごり)が花に現れていました。
 花被やおしべの数が多く、不規則についていおり、めしべの数も複数のものが多くありました。
 花のそれぞれの器官がじゅうぶん発達していなかったのです。
 ところが、原始的単子葉植物と同じように、双子葉植物も花被の数が整理されてきました。
 花被は、内花被5,外花被5と数が減少してきています。
 そして、がく片が花弁のようになっているものや、花弁とがくのちがいがはっきりしているもの、花弁が退化してないものなど、いろいろです。
 おしべは多数で数が決まっていません。
 おしべの葯も原始的で、側着葯かその一歩手前の形というところです。
 めしべは、数個から多数までいろいろです。
 ようするに、これから中核真双子葉植物へと進化していくわけですから、いろいろな要素をもっているのです。 
 主なものにキンポウゲ目があります。
 この目の中には、ケシ科やアケビ科がふくまれています。
 スイレンとそっくりなハス科も早期真双子葉植物です。

中核真双子葉植物について   core eudicots  コア ユーディコッツ
 アムボレラ科から始まった被子植物は、スイレンなどモクレン類U (magnoliidU) からセンリョウやドクダミなどのモクレン類T (magnoliidT) を経て、キンポウゲやアケビなどの早期真双子葉植物 (early-diverging eudicots) に進化してきました。
 早期真双子葉植物以降の真双子葉植物を中核真双子葉植物といいます。
 中核真双子葉植物までの花被は、がく片と花弁のはたらきが明確になっていませんでした。
 タデ科の中には、スイバのように、二重花被になってはいるものの、内花被と外花被の区別が、ほとんどないというものもあります。
 また、イヌタデ属のように、内花被が退化したものもあります。
 さらに進化が進むと、いよいよバラ類 (rosids)やキク類 (asterids) が登場します。
 中核真双子葉植物は、バラ類、キク類をふくめた名称です。
 バラ類やキク類に昇格できない初期の中核真双子葉植物には、グンネラ目、ビャクダン目、ユキノシタ目、ナデシコ目、ビワモドキ科、ブドウ科、などがあります。
 バラ類やキク類は、れっきとした分類名をもらっているから、中核真双子葉植物というと、ふつうこれらをさすようです。
 

バラ類 真バラ類TUについて   rosids ロズィッヅ   eurosids ユーロズィッヅ
 おしべのつきかたに着目します。
 おしべが外側から内側へとつくられていきます。むずかしくいうと、求心的に発生すると表現することができます。
  バラ類 rosids  ロズィッヅ
  クロッソソマ目、フウロソウ目、フトモモ目
進化を1本の木にたとえると、系統とは枝にあたります。
1本の(みき)から始まって、太い枝、細い枝と、だんだんに細かく分かれていきます。現在みられる植物は、先端(せんたん)の枝になるのです。 
 真バラ類の系統には、進化の大きな枝が2つと小さい枝がいくつかあります。
 2つの大きな枝をそれぞれTおよびUと呼ぶことにします。 
真バラ類T eurosids 1 ユーロズィッヅT
  ハマビシ目、ニシキギ目、キントラノオ目、カタバミ目、マメ目、  バラ目、ウリ目、ブナ目、
真バラ類U eurosids 2 ユーロズィッヅU
  アブラナ目、アオイ目、ムクロジ目

キク類 真キク類TUについて   asterid アステリッヅ   euasterids  ユーアステリッヅ
 おしべが遠心的に発生しています。内側から外側へ向かってつくられます。
キク類 asterids アステリッヅ
  ミズキ目、ツツジ目
 真キク類の系統には、バラ類と同じように大きい枝が2つと、小さい枝がいくつかあります。
 2つの大きな枝をそれぞれT類およびU類と呼ぶことにします。
 主なものは、次の通りです。
真キク類Teuasterids 1 ユーアステリッヅT
  ガリア目、リンドウ目、ナス目、シソ目
真キク類U euasterids 2 ユーアステリッヅU
  モチノキ目、キク目、セロリ目(セリ目)、マツムシソウ目