誰でもできる
  印刷のためのカラー設定(データ入稿に必須!)
     −−−−−−−−−フォトショップを中心に−−−−−−−−−−−−−−


あなたがお持ちのプリンターで「よし!色合いは完璧だ!」と思って、いざ印刷所で印刷してもらうと「なんだ!この色は!」ということになったことがあるかと思います。
PICOのお客さんでもそういう方はいます。
印刷所はその印刷所の「カラー管理方式」(カラーマネジメントシステム/CMS)に基づいて印刷します。
それによって持ち込まれたデータを忠実に再現するのです。
でもお客さんが適当な考えでデータを創っていたら、結果は適当なものです。
そこで、お客さんも自分のソフトとモニターの発色をきちんと合わせることが要求されます

本当のところ、それぞれのお客さんの「想い」にあわせて印刷できれば良いのですがそれは無理です。
なぜならお客さんの想いと我々の想いは必ずしも一致していないのですから・・・・。
PICO側ではデータ入稿の4色フルカラーの原則は「お客のデータをいじらない」ということです。
なぜかというと、お客の考えで創ったものですからそれをいじるということは「ねじ曲げる」危険もあるからです。
例えばの話ですが、
  ・画像のゴミを取ってあげたら「ほくろ」を取ってしまった。
  ・青いあざ(殴られたあと!)が顔面にあったのだが、肌をきれいにということで取ってしまった。
  ・色の飛び出しを消してあげたら、実はお客さんは飛び出しを「効果」として考えていた。
  ・塗りむら効果を消してしまった。
こういうことは、「色合い」についてもおなじ事で、お客さんとPICOとの色彩感覚は必ずしも同じではありません。
ましてや同人誌は新しさへの「冒険の作品」「挑戦の作品」が多いですからね。

4色フルカラーでは原則的に「色校正」はありません(最近、PICOでは「簡易色校」制度を作りました/後述)
ここが一般商業印刷とは異なるところです。
ということは、同人誌の場合、お客さんにとっても「ぶっつけ本番」入稿です。
お客さん側でも最終チェックは慎重にしなければなりません。

そこで、色に関して「お客さんにしてもらわなければならないこと」と「印刷所のすること」について考えてみたいと思います。
ここではフォトショップなどのアドビ製品についてその設定を考えます。
残念ながらプロも使用するアドビ製品ではない多くのソフトでは、あまり「色管理」についてのフォローができていません。
また、Windows ではまだまだフォロー出来ないところがあります。


(1)色の再現がうまくいかない、その原因

データを作成する時に、「色」にかかわるソフトやハードは以下のものがあります。

お客さんのソフト     (ソース)
お客さんのモニター  (出力デバイス)
お客さんのプリンター (出力デバイス)

印刷所のソフト     (ソース)
印刷所のモニター   (出力デバイス)
印刷所のプリンター  (出力デバイス)
印刷所のCTPまたはフィルムセッターなどの製版設備(出力デバイス)
印刷所の印刷機/使用インク

これらの色表現はそれぞれ原理的に異なるもので、それぞれが統一した色の管理ができていないと「あなたの求める色」は実現できません。
それでも、どうしても色がずれてしまうのはこの印刷世界の一番重大な課題なのです。
このため印刷業界ではこの種(カラーマネージメント)の研究会が一番多いくらいです。

でも、そんな面倒くさいことやってられないわ・・・と思われたらもう終わりです。適当に行くしかありませんね。
「適当に行く」場合は、自分のモニターやプリンターとPICO印刷物の比較をして、「PICOの傾向」を把握します。
「赤が強い」とか「暗く印刷される」とかです。
それに合わせて明るめの画像を作るとか、赤を弱く作るとか考えられます。
その場合自分のカラー設定やモニター調整を適当にいじってはいけません。

でも、よくインターネット掲示板なんかで「××印刷所は赤が強いです」なんて話し合ってますがこれは役に立たない情報です。
というのはそれを語る人は「自分のハード、ソフトの設定」との関係で言ってるのであって、他人のハード、ソフトでは必ずしもそう言えないからです。

「適当に行く」ということでなしに、すこしでも自分のイメージを表現したいと思われる方はこれからの文章を良く読んでください。
できればあなたのパソコンを目の前にして「設定しながら」お読みになったほうが良いかと思います。


(2)画面を印刷物に近づける ◎ガンマ調整とカラーチャートで調整します◎

 以下の説明は、MAC、WIN95、W98、WIN_ME、W2000、というOSの差、フォトショップのバージョンの差(特にVer4以前とVer5以降)を無視しています。
特にWINでは、マルチメディアを意識するあまり、これまではカラー管理、印刷を意識した仕様になっていませんでした。
それでいろいろ問題が生じます。つまり設定が出来ないことがあります。
これは徐々に解決していくでしょう。WINもそれだけの力を持ってきているようです。

◆「Adobe ガンマ」調整の手順

あなたのモニター画面を印刷物に近づけるには「Adobe ガンマ」というツールを使います(ガンマ調整と言います)
このユーティリティを利用してモニターの発色調整をするのです。
これは一回設定すれば良いものではありません。
季節、電力事情、室内照明の変化、モニターの老化などの事情で変わっていきます。
だからパソコンの環境変化があったら適宜設定をし直す必要があります。
また環境変化のない限り、一度ガンマ調整したら、もうモニター本体のカラー調整などはしないでください

このガンマ調整は簡単なことです。説明にそって設定してください。
そしてその設定に例えば「PICO基準」というように名前をつけたとして、これをモニタープロファイルといいます。

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一応の手順をご紹介します。
「Adobe ガンマ」というツールは、基本的に「コントロールパネル」の中にあります。
                (注)「Adobe ガンマ」が無い!(WIN)場合
                普通、「c:\program files\adobe\calibration」のなかに「Adobe Gamma.cpl」というファイル名であります。
                         (なければ「検索」でファイル名 Gamma.cpl をいれて検索してください)
                   このファイルを「c:\windows」の中の「system」フォルダーにコピーします。

「Adobe ガンマ」をダブルクリックして起動します。

アシスタントを選びます。
プロファイル名が出ますがとりあえずこのままで良いです。
モニター本体の調整機能で、コントラストを100%に、明るさを指示通りにまっ黒のちょっと手前に設定します。
 もうこれでモニター本体の設定はいじってはいけません。
◎「RGB色度座標」では、もしモニターを買ったときに支給されたプロファイルがあるならそれを取り込んでも良いです。
 なければ普通のモニターであるならば「ソニートリニトロン」または「トリニトロン」で良いです。
 液晶モニター等でしたら、マニュアルか、なければ製造元に聞くかしないとわかりません。
◎中間調の明るさ設定では、使用するガンマの選択はMACかWINを選びます。
 選ぶと、ガンマ値はMAC:1.8、WIN:2.2になると思います。
 そのあと中間調の濃度調整を左右にスライドさせながら指示通りにします。
 外側と真ん中を合うように調整せよとありますが、すこし薄目にして見るとなにげに合わせられます。
 それでも完全には合わせられませんが、あとでチャートでこの部分を再調整(後述)しますのでかまいません。
◎白色点の調整では、「測定」を押してください。あとは指示通りです。
調整後の白色点はそのままで良いのではと思います。
次の場面では調整前と後を比較できます。比較検討してください。(WINではこの場面が無いかも知れません)
 それによっては、もし全面の色合いが偏っているなら、その前に戻って白色点を再調整してもかまいません。
◎新しいプロファイル名(モニタープロファイル名)をつけます。
 たとえばあなたのお名前が真理子さんなら「真理子モニター」(笑)というぐあいです。
以上で終わりです。今度からは「真理子モニター」に基づいたモニターになりました。
くれぐれもご注意しますが、もうモニターの調整部分はいじってはいけません。
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  ◎ 以下はMACと関係ありません。WINでの問題です。
       これ以降の説明で「真理子モニター」というガンマでのプロファイル名を使いますが、WINによっては出てきません。
       どこかWINがおかしい(バグ?)のですが、画面が調整されているならばとりあえず「良し」とするしかありませんね。
Win98、W2000 では、コントロールパネルで「画面のプロパティ」を開きます。そこに「設定」→「詳細」という流れで選ぶと、「色の管理」というタグがあります。(Win95にはありません)
そこに「真理子モニター」があるでしょうか? もし無ければ、「プロファイル関連づけを追加」を押し「真理子モニター」を追加します。複数が入っていたらそれらは無視して「真理子モニター」と関連づけすればいいのです。
それで、あなたのモニターは電源を切っても、しっかりと「真理子モニター」になりました。
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◆「カラーチャート」で調整する

PICOサイトから「ピコカラーチャート」をダウンロードすると同時に、PICOに連絡してチャートの「印刷物」を手に入れてください。
無料でお送りしています。
それで、「モニターに表示されたチャート」と「PICOチャート印刷物」とを比べて違いを把握し、先ほどのガンマ調整の「中間調」の色補正をします。
この場合は、最初の画面での「アシスタント」選択ではなく「コントロールパネル」場面で補正できます。
ここではRGBとグレーでの調整です。
最後に「終了」すると「保存するか」と聞いてきますので、必ずモニタープロファイル「真理子モニター」を保存しなおします

以上でモニター調整は終わりました。
それでもモニターの色は現実の印刷とは完全一致とはいきませんが、でも「最低の設定」としてかなり近づいたのではと思います。
特に「明るさ」はなるべくあわせた方が良いです。
「暗めの印刷」「明るめの印刷」ぐらいのことはモニターでわかるようにしたほうが良いですね。


(3)フォトショップの設定 ◎作業での色設定(プロファイル設定)をPICO設定に合わせます◎


◎CMYK設定 (プルダウンでカラー設定を開き CMYK設定「内蔵」 を選びます)

  ・印刷インキ設定では   「東洋インキ(コート)」にしてください。このときドットゲインは「8%」になります。
                      (Ver.4.0以前では17%になりますがかまいません/換算方法が異なるだけ)
          *ドットゲインとは:例えばフォトショップで10%のアミを指定した場合、そのままで後工程(フィルム出力、刷版作成、実際の印刷等)を踏むと、
            結果的には10%の指定よりアミ濃度が上がってしまうのが現実です。 その程度差がドットゲインです。
            その太り具合をあらかじめ 「%」 として把握して、減算しておけば、結果的に10%のアミが印刷することができるという理屈です。

  ・色分解オプションでは
                    色分解の種類     GCR
                    黒版生成       軟調
                    黒インクの制限   100%
                    インキの総使用量  360%
                    UCA          0%

  ・この設定は念のため「PICO_CMYK」などというファイル名にして保存しておくと、再インストールなどの時に良いです。

◎以上の設定は、同時にRGB画像をCMYKに変換する設定でもあります。
この「内蔵」を設定して、次に「変換テーブル」を開くと「東洋インク 8%」になっているはずです。
これでOKです。
このように既製の「ICC」プロファイルを利用しないで「内蔵」で設定するので、「ICC」の項はいじる必要がありません。

RGB画像からCMYKに変換すると「表現できる色の範囲」が狭くなるので全体に色の変化能力が落ちます。
そもそもモニターは「光の3原色・RGB」で色が発色しますが、印刷は「色の3原色と黒・CMYK」で色が創られます。
それらはそれぞれ表現できる色の範囲(ガモット)が違うのです。
これは宿命的なのですが、彩度をできるだけ維持して変換する手法が必要です。
「PICO_CMYK」設定では、変換での彩度の低下をかなり抑えた画像になります。


(注)この設定作業で、試しにフォトショップにCMYK画像を出しながら「印刷インク設定」をいろいろ変えてみてください。
もちろんプレビューにチェックしてです。
そうすると面白いほどがらりと画像濃度が変わってしまいます。(主にドットゲインの%変化)
そうです、CMYK設定でこんなにモニター自身の色が変わってしまうのです。
フォトショップでは、すでにモニター上でもドットゲインを考慮しているからです。
これを上の設定にするとPICOのモニター、PICOの印刷色に一歩近づきます。

(注)この設定は「フォトショップですべての作業を行う」ことで想定されています。
どういう意味かというと、例えば「黒インクの制限」を100%としていますが本当は強すぎるのかも知れません。特に写真なんかでは濃すぎます。
でも、もしそのままフォトショップで「タイトルなどの文字」をシャープに打ち込むには100%黒も必要です。
ですから、フォトショップだけですべての作業を行って入稿する場合は「黒インクの制限」を100%にした方が良いのではと思ってます。
(注)もし、「フォトショップ画像をイラストレーター等に画像を配置」して、タイトル等の文字打ちはイラストレーターにて打ち込むならば、フォトショップでの画像自身は「黒インク 90〜95%」位に抑えても良いと思います。
(注)上の設定はPICO特有の設定ですのでほとんど他の印刷所に完全には通用しません。

◎グレースケール設定

画像の印刷には「黒インキ」を選択します。
これによって先ほどのCMYK設定の東洋インクを選択したドットゲイン値(8%)も生きてきます。

◎RGB設定

RGBは「モニター RGB」で良いと思います。(結構、適当です)
ガンマ調整などは「真理子monitor」をつくった時の数値(アドビガンマ設定値など)が出ているのではと思います。
そのまま無視して良いです。
「モニター補正を行って表示」ではモニターは「真理子monitor」になっていると思います。
WINではなってない場合がありますが、どちらにしても、チェックを入れておいてください。

◎その他

上記の設定が出来たら、「プロファイル設定」などはいじらなくてOKです。


(4)プリンターと印刷品質の確認(色校正)

◆一概にはいえませんが、あなたがお持ちのプリンターではなかなか印刷物の色参考にはなりません。
というのは市販のプリンターの多くはそれ自身で「きれいに出力する」のが目的です。
そのために多くのプリンターは印刷のインクとは全く違う色のトナーを使ってます。だいたいは彩度をあげた感じです。
だから、CMYKに対応したプロファイルを持っていませんのでキャリブレーション自身が無理です。

とはいっても、機種によってはかなりの「色管理」などのオプションがある場合があります。
PICOはエプソンの「カラリオPM−900C」を持っています。
それで結構プリントアウト仕上がりを調整し、イメージを近づける事ができます。
基本的にはいつも同じ色合いでプリントアウトできるような設定ができるならそうした方が良いです。
違いを知っておくには先ほどのピコカラーチャートを出力して印刷物と比較してみると良いでしょう。

◆さらに、印刷の仕上がりを予測する手段として、時間と金銭に余裕があるなら「印刷所から色校正を取る」必要があります。

簡易色校としては、PICOから校正用カラープルーフを入手します
実際のオフセット印刷にあわせたポストスクリプト「色校正用プリンター」(カラープルーファー)です。
それはフィルム出力と同じプリンター言語(ポストスクリプト)を持ち、同じ変換(ラスタライズ)設定で出力するプリンターです。
これで印刷イメージくらいは把握できます。
でも安くて数百万円の製品ですから個々人が入手するのは無理があります。
PICOにはこの校正用のカラープルーファーが設備されています。
PICOはこの手段での確認を今後推奨します。(2000円+送料500円)。

もうちょっと上のグレードとしては「色校正機での試刷り」があります。
オフセットで実際に印刷するのですが、本当に印刷する印刷機と違い数枚を印刷する機械です。
でもしょせん印刷機が違いますので完全な意味での色校正にはなりません。
PICOではクリエイティブカラーでこの方式を採用しています。(10000円)
商業印刷物はほとんどこれで色校正します。

そして「本機校正」があります。実際に印刷する機械で実際に印刷してみるのです。
これは高すぎて現実的ではありません。(40000円)でも美術印刷のようなグレードの高い印刷物には必要です。


◎安定した印刷環境のためのPICOの課題(カラーマネージメント)

これは印刷会社が行うことです。
印刷する版を作成するときには印刷する機械のドットゲインや濃度計で画像濃度を管理します。
ブレの多い印刷所はこの管理がきちんとしていないからでしょう。
印刷所の質が問われる場面です。


(5)入稿時、最後のチェック(補足)

◎「情報」パレットの活用

フォトショップには色の各色濃度がわかる「情報パレット」がありますよね。
その情報の値と市販されている印刷のCMYKカラーチャート(PICOでも売ってます)と比べてください。
モニターを見て微妙な色を判断するのは危険です。
但し理由はともあれ、10%程度の誤差は許容範囲です。


◎「ブラック」(黒)に注意!

 ・K100%だけのブラック
 ・デフォルトのブラック
 ・C100%、M100%、Y100%、K100%のブラック
 ・C100%、M100%、Y100%、のブラック

これらのブラックの種類はモニター上でも判別は困難で、「情報パレット」でしかわかりません。
プリンターでも見分けるのが大変です。
必ずチェックしてください。
これらのブラックは実際に印刷すると微妙に違い、ベタ塗りなどできちんと使い分けて一定にしないとムラになります。
これをPICOの責任にされても困ります。

3番目のCMYKそれぞれ100%を重ね合わせたブラックはトンボにのみ有効(必要)です。
それ以外での用途はありません。
3、4番目は印刷では100%インクをを何重にも乗せることになり、印刷上支障が出ます。
これは印刷をお受けできません。

フォトショップなどでのデフォルトのブラックとはこういう印刷障害を考慮したCMYKの濃度設定になっています。
このブラックは使えます。

◎「ブラウン」(茶)に注意!

茶色という色あいは非常に微妙な変化をします。
CMYとKのバランスがあまりに微妙ではっきり言って再現は至難の業です。
色校正なしではうっかりするとダークグリーンに変化したりします。
多少の許容範囲を持たせた色合いにしてください。といっても難しいですね。まあ、ご注意ということで・・・。



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