8式40o軽迫撃砲操作要領

第1章 戦術上の用法

1 40o八式迫撃砲(以下「本砲」と言う。)は,人力運搬が容易で,車両が入れない地点にも進入できる軽便な支援火器であり,地面に据え付けて使用する。掩体に隠れて頑強に抵抗する敵を上方からの落下弾により掃討するのに適する。高角発射できることから,前方にいる友軍の頭上越しに撃つ超越射撃が可能である。また,電動ではないため,雨天でも故障の危険は少ない。

2 本砲は次の場合は,無効であるか,効果が薄い。

@ 素早く機動する目標
A 上方が掩護された掩体
B 平射でなければ射撃できない目標
C 葉の茂った樹木の下の目標
D 横風が強い状況
E 砲付近の射撃方向に高い樹木が茂っている状況
F 極端に気温が低い状況

第2章 本砲の構成

1 本砲は,砲身部,照準器,脚部に容易に分解可能である。
射撃姿勢は、高射撃姿勢、低射撃姿勢をとることができるが、例外的に平射姿勢ことも可能である。

2 分解
作戦行動時の移動は,砲身部に照準器を付けたまま,脚部から砲身部を外して運搬する。

4 操作に重要な脚部の名称は下記図のとおり

第3章 砲員

1 本砲は1名でも射撃は可能であるが,迅速な射撃のために3名を基本とする。各砲員は,砲部分等を運搬しなければならないため,個人携行火器は,軽量小型で、でき得れば片手で射撃できるものが望ましい。各内訳はと任務は次のとおり。

@ 観測手 観測手は迫撃砲班の班長が兼ねるのを基本とする。
@ 測距儀を携行し,移動時に脚部を運搬し,
A 測距儀で射程距離を計測し,
B 射表に従って,射角を決定して照準手に伝え,
C 砲身軸線照準時の方位角照準を補助し,
D 高低修正に従って,修正角を決定して,照準手に伝え,
E 射手の発射準備よしの合図を確認して,発射を指令し,
F 弾着を確認して,次弾諸元を照準手に伝える。
A 照準手
@ 移動時に砲身部を運搬し,
A 観測手の指令に従い,方位角と射角を照準し,
B 照準器射撃不能と判断したときは,砲身軸線照準を指令し,
C 照準器射撃時に高低修正を観測手に伝え,
D 観測手の修正角指令に従って,修正角に合わせて砲を操作し,
E 照準完了を指令する。
B 射手
@ 弾薬箱を運搬し,
A 射撃時に弾薬箱から弾薬を取り,
B 発射準備ができたら,発射準備よしの合図を観測手に伝え,
C 観測手の発射の号令に合わせて,弾薬を装填して発射し,
D 射撃後に発射済みの弾体を砲尾から取り出して弾薬箱に戻し,
E 観測手の弾着確認後,残弾数を伝える。

第3章 弾薬の準備

1 弾薬は,射撃前に信管をセットし,ガスを注入し,弾丸を装填しなければならない。

2 弾薬の準備はには,安全のためゴーグルをすることが望ましい。

3 弾薬箱に弾薬を入れるには,装填済み弾薬は弾頭を下向きにし,発射済み弾薬は弾頭を上向きにする。装填済み弾薬を弾頭を下向きにいれると,弾体から弾丸がこぼれやすいが,取り出し時の安全性と,弾薬の取り出しやすさを考慮すると,弾頭を下向きにすべきである。

4 弾薬の装填要領は次のとおり

@ 弾底の信管をリロードツールの太いほうで1回押し込む。信管がバネで戻ってきたときに斜めにならず弾底の穴に収まっていることを確認する。
A 弾体を垂直に立て,弾頭のバルブからガスを2秒ほど注入する。ガスが漏れる場合は,@の作業に戻る。
B 蓋を開けた弾丸箱の上でを片手に弾丸を一握り手の平を上にして取り,もう一方の手で弾体を弾頭を上にした状態で持ち,弾体を回しながら,弾丸を弾頭の穴いっぱいまで流し込む。
C 弾頭を上に向けたまま,リロードツールの細いほうで,弾丸を押し込む。
D 弾頭を下に向け,余分な弾丸を弾丸箱に戻す。
E 弾薬を弾頭を下向きにして弾薬箱に入れる。

第4章 砲の布陣

1 砲の布陣にあったっては,状況を見て,砲戦の可否,要否を判断して陣地を決定すること。

2 布陣作業中は無防備になりやすく,周囲に対する警戒を怠らないことが必要である。可能であれば友軍歩兵の援護を受けることが望ましい。

3 陣地の選定は,なるべく,射撃目標が捕捉しやすく,周囲に射撃の妨げになるものがなく,かつ平坦な場所を選ぶ。さらに適宜な掩体によって防護されうる場所が望ましい。

4 射撃姿勢の選択は,状況に応じて適宜変更することができる。

@ 高射撃姿勢
脚部を1段延ばし,上部砲身クランプを使用する。操作がしやすく,照準器による照準範囲が広くなるが,砲員が被弾しやすいため,掩体で充分に掩護された状況に向く。
A 低射撃姿勢
脚部を全部縮め,下部砲身クランプを使用する。操作は窮屈になり,照準器による照準できる範囲も狭くなるが,砲員が被弾しにくい。
B 平射姿勢
脚部を全部縮め,上部砲身クランプを使用する。低角発射が可能になるが,射程は短く敵歩兵に対する効果は低い。

5 射撃姿勢を取る手順は次のとおり

@ 脚部のステーロックリングを緩め,脚を開く。
A クランクハンドルがある側を射撃方向に向けて地面に脚を据え付ける。
B ステーロックリングを締める。
C 脚ロックレバーを外し,脚部の水準器を見ながら,脚をスライドさせて,脚部を水平を取る。
D 脚部が水平になったら,脚ロックレバーをかける。
E パンハンドルを緩め雲台をおよそ水平する。水平にしたらパンハンドルを締めて雲台を固定する。
F シュー固定レバーを動かして,砲身部を雲台に固定する。
G 照準器傾斜儀の中心ネジを緩める。
H パンハンドルを緩め,照準器を水平にする。
I 照準器が水平になったら,パンハンドルを締めて固定する。
I エレベータ締め付けナットを緩める。
J パンストッパーを緩める。
K 砲身傾斜儀の中心ネジを緩める。
L 照準器のスイッチを入れる。

第4章 砲員の配置

1 照準手は,砲の左側に位置する。

2 射手は,砲の右側に位置する。

3 観測手は,砲からあまり離れすぎないようにしながら,目標を捕捉しやすい適宜な位置を取る。離れすぎると,誤差が大きくなる。概ね,砲の後ろが適当である。

第6章 照準方法

照準器射撃は,砲身軸線射撃と比較すると手間がかかるが,精密な射撃が可能である。砲身軸腺射撃は,照準器射撃が不可能であるか照準器による照準をする暇がない場合にも使うことができる。

第7章 照準器射撃

1 観測手は,目標までの距離を測定し,射表に従い射角を決定し,目標,距離,射角を指令する。
例「目標10時方向塔,距離30,射角40」
「目標1時方向赤いドラム缶,距離47,射角45」

2 照準手は,照準器を見ながらパンハンドルを操作して方向角を合わせる。方向角が合わせにくい場合は,観測手が砲身に手を添えて補助する。

3 方向角を合わせた後,パンストッパーを仮締めする。

4 照準手は,照準器は水平のまま,砲身傾斜儀を見ながらクランクハンドルを操作して,砲身を指令された射角に合わせ,エレベータ締め付けナットを仮締めする。

5 照準手は,パンストッパーを緩め,照準器を見ながら方向角を修正し,修正が終わったら,パンストッパーを締める。

6 照準手は,パンハンドルを緩め,照準器を上下させて,照準する。

7 照準が終わったら,照準手は,パンハンドルを締める。

8 照準手は,照準器傾斜儀を読み,高低修正を伝達する。高低修正は傾斜儀の指針の値である。
例「高低修正70」「高低修正97」

9 観測手は,照準手からの高低修正を受け,修正角を決定して指令する。
修正角=射角+(90−高低修正)
例「修正角42」
このとき,修正角が,砲の最大射角のと最小射角の間に入らない場合は,目標は射程外である。
例「射程外,撃ち方止め」

10 照準手は,エレベータ締め付けナットを緩め,砲身傾斜儀を見ながらクランクハンドルを操作し,修正角に砲身を合わる。

11 照準手は,エレベータ締め付けナットを締め,照準完了を伝達する。
例「照準よし」

12 1の後,射手は指令された弾薬を取って待機する。なお周囲に対する警戒も併せて行う。

13 観測手は,射撃用意が調ったことを確認したら,安全を確認の上,発射を指令する。
例「撃て」

14 射手は,観測手の発射の指令と同時に,砲口から弾薬を信管を下に弾頭を上にして落とし込む。このとき,落とし込んだら,直ちに砲口から手を離す。決して砲口をのぞき込んではいけない。

15 観測手は,弾着を確認し,照準手に指令する。弾着の確認は,前線の誘導員からの連絡によった方が正確である。
例「弾着近し」「弾着遠し」「弾着右」「弾着左」「弾着右近し」「弾着近し右」「命中,撃ち方止め」「至近,効力射」「射程外,撃ち方止め」

16 射手は,射撃後,砲尾の排夾口を開け,発射済み弾体を取り出す。取り出した後は,排夾口を閉じ,発射済み弾体を弾頭を上向きにして弾薬箱に入れる。

17 射手は,残弾数を伝達する。
例「残弾8」

18 射手は,別の指令があるまで,弾薬を手に取り,次弾発射に備える。

19 照準手は,観測手の指令に従って,照準を微調整する。「弾着近し」のときは砲身を下げ,「弾着遠し」のときは砲身を上げ,「弾着右」のときは砲身を左に向け,「弾着左」のときは砲身を右に向ける。

20 照準手は,照準の微調整を終えたら,「照準よし」と指令する。

21 同一目標に射撃を継続する時は13〜20の手順を繰り返す。

22 別目標を射撃するときは,1の手順に戻る。

第8章 砲身軸腺射撃

1 観測手は,目標までの距離を測定し,射表に従い射角を決定し,目標,距離,射角を指令する。
例「目標10時方向トーチカ,距離30,射角40」
「目標1時方向赤いドラム缶,距離47,射角45」

2 照準手は,目見当でパンハンドルを操作して方向角を合わせる。観測手は砲身に手を添えて補助し,砲身軸腺の延長上に目標が来たら,「方向角よし」と伝達する。

3 照準手は,方向角を合わせた後,パンストッパーを締める。

4 照準手は,照準器は水平のまま,砲身傾斜儀を見ながらクランクハンドルを操作して,砲身を指令された射角に合わせ,エレベータ締め付けナットを締め,照準完了を伝達する。
例「照準よし」

5 1の後,射手は弾薬を取って待機する。なお周囲に対する警戒も併せて行う。

6 観測手は,射撃用意が調ったことを確認したら,安全を確認の上,発射を指令する。
例「撃て」

7 射手は,観測手の発射の指令と同時に,砲口から弾薬を信管を下に弾頭を上にして落とし込む。このとき,落とし込んだら,直ちに砲口から手を離す。決して砲口をのぞき込んではいけない。

8 観測手は,弾着を確認し,照準手に指令する。弾着の確認は,前線の誘導員からの連絡によった方が正確である。
例「弾着近し」「弾着遠し」「弾着右」「弾着左」「弾着右近し」「弾着近し右」「命中,撃ち方止め」「至近,効力射」「射程外,撃ち方止め」

9 射手は,射撃後,砲尾の排夾口を開け,発射済み弾体を取り出す。取り出した後は,排夾口を閉じ,発射済み弾体を弾頭を上向きにして弾薬箱に入れる。

10 射手は,残弾数を伝達する。
例「残弾,1」

11 射手は,別の指令があるまで,弾薬を手に取り,次弾発射に備える。

12 照準手は,観測手の指令に従って,照準を微調整する。「弾着近し」のときは砲身を下げ,「弾着遠し」のときは砲身を上げ,「弾着右」のときは砲身を左に向け,「弾着左」のときは砲身を右に向ける。

13 照準手は,照準の微調整を終えたら,「照準よし」と指令する。

14 同一目標に射撃を継続する時は6〜13の手順を繰り返す。

15 別目標を射撃するときは,1の手順に戻る。