盛岡の地質・地盤

 平成5年10月4日、当事岩手日報夕刊で連載していた「学芸さろん」に次のような記事が掲載されました。

6千年前の崩壊では〜略〜さらになだれとなって北上川を下った土砂は盛岡市街まで達している。盛岡市上田の岩手大学が立つ平たんな面はこの土砂がつくる堆積面である。崩壊土砂の中からは石の彫刻が発見されている。おそらく当事の縄文人がこの噴火で被災したものであろう。」(土井宣夫)

 盛岡市上田は、盛岡の中心街よりやや標高が高く、上田面という段丘に区分されているのですが、この記事の内容から、上田面は完新世の堆積物で構成されていて、

段丘地形=洪積層(ついでに液状化検討必要なし。楽チン楽チン)

という私の頭の中の神話はもろくも崩れ去ったのでした。(というのは嘘。っていうか、当事は液状化の検討はあんましなかったしーみたいな)

 岩手山の火山性微動騒動で土井氏の研究が注目され、副産物として、滝沢村から「岩手山の地質」が発行されました。その「おまけ」である「岩手火山群地質図」により、盛岡市以北の、主に第四紀層の詳細な地質資料が非研究者である私達に公開される事となりました。(ボーリング屋としての興味は、「何メートル掘って、何が出る」なので、平面的な分布より、垂直的なデータが欲しいところですが)

 岩手火山の騒動が起きる前、会社にあった盛岡の地盤についての資料は、大上先生や村井先生らによってまとめられた「ボーリング資料に基づく北上低地帯の地下地質(その1)-盛岡市付近-」という論文でした。

 それによると、盛岡の地盤は、輝緑凝灰岩(苦鉄質火山岩類ってやつの事?)、粘板岩、チャートなどの古生層と、それに貫入した花崗岩が基盤となり、その上に盛岡夾炭層、古北上川雫石川堆積物、青山町火山泥流堆積物の順に堆積し、地表付近に段丘堆積物とそれを覆う火山灰層、沖積層などが分布するというものでした。

 盛岡夾炭層は、地元ボーリング屋により以前からその存在は知られていた層でしたが、村井先生は盛岡の地盤は砂礫層と、その下の岩盤からなると考えていたようで、ボーリング屋の言う亜炭を含む層の存在をなかなか信用しなかったそうです。(うちの社長の昔話より)

 土井氏らの研究により岩手火山周辺には複数の岩屑なだれ堆積物が存在する事が示され、青山町火山泥流堆積物も岩手山の山体崩壊により生じた岩屑なだれ堆積物であると評価されるようになりました。盛岡市街地周辺に分布する岩屑なだれ堆積物は、「青山町岩屑なだれ堆積物」、それを覆う「大石渡岩屑なだれ堆積物」、上田付近に分布する「平笠岩屑なだれ堆積物」の3層のようです。平笠岩屑なだれ堆積物は、6千年前、岩手山北東部の山体崩壊で発生した土砂が北上川沿いに流下したもので、盛岡市では上田面という段丘状の地形を形成しています。ここでボーリングをすると、高い確率で岩屑なだれ堆積物の下に砂礫層を確認できます。この砂礫層は6千年前に北上川河岸(あるいは河床)に分布していた沖積礫層です。
 岩屑なだれの例として米国のセントへレンズ火山の噴火と山体崩壊が知られており、私も中学の頃、テレビのニュース映像で噴火の様子を見た記憶があります。崩壊は一瞬の出来事で、あのような事が、盛岡では15万年前の某月某日、12万年前の某月某日、6千年前の某月某日におきたと思うとゾッとします(盛岡の表層地盤の骨格はたった三日で出来た!?)

私の「地下に潜む〜」というホームページを立ち上げるきっかけは、PC98-DOS時代にQuickBASICでつくりはじめ、WindowsになりVB2、VB4、VB6と移植し、インターネットを始めるようになった頃、未完成のまま放棄してしまったボーリングデータベースシステム(モドキ)で作成した盛岡の断面(単に帯状の柱状図を並べただけのものですが)や平面的なN値の分布図などを紹介する事でした。そのシステムは、ノートパソコンにより「こたつの上で盛岡を輪切り」というコンセプトで作り始め、最終的には簡易地図上でマウスで指定した範囲の柱状図を横に並べて表示させる事ができました。
 このソフトにより盛岡市内の概略的な土質分布を把握できるようになりました。その後、INS(産学官の飲み会)関連の講習会で盛岡の地質構成についての研究成果や盛岡北高敷地内で研究目的に行われたボーリング調査の分析結果(柱状図)を見る機会があり、私が把握していた盛岡市内の土質分布と、大学の研究により解明された地質構成との大まかな対比が可能となりました。


 INSで見せられたスライドや資料、岩手大学の越谷先生からお聞きした内容等を私の記憶の範囲でまとめ、盛岡の地盤構成をまとめると、次のようになります。




四紀層を層序表にまとめるとこんなかんじ? (上図にはない地層名もあります)


以下、説明になっていないが。。。。。



 この他、盛岡西部では、盛岡夾炭層の下に中新世の層が分布しているようです。
参考・引用文献
岩手山の地質 -火山灰が語る噴火史-(岩手県滝沢村教育委員会
ボーリング資料に基づく北上低地帯の地下地質(その1)-盛岡市付近-(村井ほか)
いつだったか忘れたけど、INS関連で頂いた資料。講習会のメモ。その他。

 私の途中放棄システムで過去に作成した断面図にお絵かきソフトで層区分を書き加えた図を紹介します。 
 (これらの図はこのホームページで以前紹介した事もありますが、わけのわからない表現を採用していました。当事理解できた人はいないと思います。)