国立東京博物館・平成館
〜空海と密教美術展〜

 東京国立博物館・平成館で7月20日から9月25日まで、「空海と密教美術」展が開催されています。空海に関しては2004年にも入唐1200年記念行事として「空海と高野山」展が同館で開催されました。それほど日本では空海(弘法大師)の人気は高いものがあります。
 空海について素人の小生がここで記すのは誠におこがましいのですが、展覧会の展示物に関連づけて文献を繰りながら簡単に記してみます。(赤字 展示品)

 空海は774年讃岐国に生まれ、789年には母方の伯父を頼って京に上り大学に入り学問を学んだものの大学の学問には不満で、出家をして山野をさまよっていたようです。展示されている国宝 「聾瞽指帰(ろうこしいき)」は、延暦16年(797)、23歳で著述した「三教指帰(さんごうしいき)」の自筆草稿本と考えられており、ここには結局仏教に最高の教えがあるということが書かれています。書体は行書が主で、処々に草書が記されています。ちなみに、これは前回の「空海と高野山」展のときも出展されました。

 そして、どういう経緯かは不明となっていますが、804年に突然20年間の遣唐留学生の命が下され、真言密教を不空三蔵の弟子の恵果から学びます。かの最澄も同年、唐に渡りますがたった一年の還学生(短期留学生)だったことを思えばいかに特別待遇であったことが窺えます。
 が、空海は806年には早々と僅か2年で帰国してしまいます。帰国後は宮廷の命に背いたということで太宰府に留め置かれましたが、弁明を自分が短期間に最も優れた仏教である密教の深義を学んできたかを書き綴った国宝「御請来目録 空海筆」を宮廷に提出し、この文章が見事であったことや、持ち帰った経典法具に対して評価が高かったことなどから、特におとがめはなかったようです。
 以降、嵯峨天皇が書の日本三筆の一人であり、また空海自身も国宝「性霊集 空海筆」という漢詩文集を著すほど中国文化に造詣が深かったことから、二人の親交が始まります。この性霊集には空海が中国で学んできた技術によって狸の毛で4本の筆を作って天皇に送って天皇の心をしっかり掴んだ、という内容の空海の手紙も載っています。(国宝 狸毛筆奉献表 ・・空海筆)
 812年、高雄山寺(後の神護寺)において空海は和気清麻呂の子、真綱、仲世らと共に最澄に灌頂を受けさせています。仏教では空海の先輩にあたる最澄ですが、密教に関しては一目置かざるを得なかったのでしょうが、後に絶交するまでの間、空海の弟子ということになります。このときに灌頂を受けた人達の名が国宝「灌頂歴名 空海筆」に記録されています。このように空海と神護寺は密接な関係があったことで、今回の展覧会では同寺の国宝「両界曼陀羅図」が展示されています。

 そして、空海は816年に高野山を、そして823年には都の中の根拠地として東寺を賜り、真言密教を確かなものにしています。東寺には密教独自の曼陀羅思想の立体的表現である如来、菩薩、明王、守護天の4種21躯の像が並ぶ講堂を造っています。展覧会では21躯中8躯を東寺から借りて展示しています。8躯は展示場に間隔を開けて安置され、それぞれの仏像の周囲からじっくりと拝観することができ、東寺講堂での荘厳な雰囲気には及ばないものの一つ一つをじっくり拝観することができます。
 前回の「空海と高野山」展での目玉のひとつは高野山・金剛峰寺所蔵の八大童子立像全8躯(内5躯が運慶作、いづれも国宝)でした。

 以上、簡単に展覧会の展示品に関連づけて空海について記してみました。密教は小生のような凡人には理解をすることは難しい、とあらためて思うのですが、仏教に精通している五木寛之氏でさえも著書「百寺巡礼」の中で、「正直言うと、曼陀羅の世界はむずかしい。ただ、真理とか世界というものの持つ多様性、多面性を示しているのだろうということは、わかるような気がする。」と述べているように矢張りむずかしいようです。
  2011. 8.27



東京国立博物館・平成館 空海と密教美術展 H23. 8.27
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美術館・博物館ガイドブック
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成美堂出版の美術館・博物館ガイド、目的別に編集されており見やすい案内書。
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制作 : N.Sugai