地球環境節目の年

(注)末尾異変を参照のこと!

草刈秀紀

2020年は、スーパーイヤーと言われています。そのポイントを解説します。

@ ポスト愛知目標の合意と2030年までのロードマップ

生物多様性関係では、今年は、10年前に世界が合意した、愛知目標の達成年となるからです。愛知目標は、地球規模で劣化が進んでいる生物多様性の損失に歯止めをかけるために、生物多様性条約第10回締約国会議が名古屋で開催され、この時に世界が合意した20項目の目標の達成年となります。また、この愛知目標に代わるポスト愛知目標が今年の第15回締約国会議で合意されます。

A 国連生物多様性の10年の最終年

20109月から12月に開催された第65次国連総会で、2011年から2020年を、「生物多様性の10年」と位置付け、国際社会が協力して生態系保全に取り組むとの国際年に関する国連決議です。生物多様性条約を締結していないアメリカ合衆国を含め、他の条約や、国連の活動、関連機関を巻き込んで、企業・NGOなど世界中のあらゆるセクターが力を合わせて、10年という期間を見据え、生物多様性を日々の中で主流化することに取り組むことを目的としています。この決議は、日本の自然保全関連のNGOネットワークである「生物多様性条約市民ネットワーク(CBD市民ネット)」および「国際自然保護連合(IUCN) 日本委員会」の提案を日本政府が受け取り、日本政府から生物多様性条約 第10回締約国会議(COP10)を通じて提案されました。今年は、国連生物多様性の10年の最終年であり、この動きに関連して、国連では、生物多様性サミットが開かれます。

B SDGs(持続可能な開発目標)の目標1415の達成年

ご存じの方も多いと思いますが、「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、20159月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標です。このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいるのです。そのSDGsの目標14(海の豊かさを守ろう)、目標15(陸の豊かさを守ろう)の達成年が今年になります。この二つの目標は、前記した愛知目標に合わせた達成年となっています。

C 第7回世界自然保護会議の開催

IUCN(国際自然保護連合)は、1948年に世界的な協力関係のもと設立された、国家、政府機関、非政府機関で構成される国際的な自然保護ネットワークです。約1,200の組織(200を超える政府・機関、900を超える非政府機関)が会員となり、世界160カ国から約11,000人の科学者・専門家が、6つの専門家委員会に所属し、生物多様性保全のための協力関係を築いています。IUCNは、4年に1度、世界自然保護会議を開催しています。前回の第6回は、20169月にハワイのオアフ島で、開かれました。今年の第7回世界自然保護会議は、フランスのマルセイユで開かれテーマが「海の環境の多様性」となっています。

D 化学物質2020年目標(SAICM)の達成年

化学物質について少し解説します。1992年「国際環境開発会議」(リオデジャネイロ)のリオ宣言(開発と環境に関する宣言)で採択された行動綱領「アジェンダ21」の第19章で、国際的な化学物質管理の推進について取り上げられています。2002年「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」(ヨハネスブルグ)で、「2020年までに化学物質が、ヒトと環境にもたらす悪影響を最小化する方法で使用、生産されること」を目標に掲げたWSSD2020年目標が採択されました。そして、2006年「第1回国際化学物質管理会議(ICCM-1)」(ドバイ)で、「国際的化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)」が採択されました。SAICMとは、2020年までに化学物質が、ヒトと環境にもたらす悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを達成するための国際的な戦略や取り組みとなっています。

E 持続可能な開発のための国連海洋科学の10

201712月、国連総会において2021年から2030年までを「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」(以下、「国連海洋科学の10年」)とすることが決議されました。国連海洋科学の10年は、海洋に関する各分野の深い理解を生かし、学際的な対話を強化し、課題解決型の研究を推進して、国や社会的アクターによる持続可能な開発の実現に資する新しい知識や革新的な技術を創生することをめざしています。国連海洋科学の10年が2021年から始まります。

F パリ協定が動き出します

気候変動関係では、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたパリにて採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(合意)です。産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑える。加えて、平均気温上昇「1.5度未満」を目指すものです。

G ボン条約の第13回締約国会議が開催

日本は、批准していませんが重要な条約として「移動性野生動物種の保全に関する条約」(ボン条約)があります。ボン条約は、陸生動物類、海洋動物類、鳥類の移動性の種を、それらの生息地にわたって保護することを目的としています。これは、地球規模で野生動物やその生息地の保護を扱っている数少ない政府間の条約の一つです。これの第13回締約国会議も今年開かれます。

このように地球環境に重要な様々な国際会議が世界各地で開かれる地球環境にとって大きな節目となる年が2020年なのです。

(抜粋:連絡誌、ツキノワの会、162号、4-62020.3.28

【異変】

@  ワールド・オーシャン・サミット2020を東京で開催が中止に!

東京にて39日(月)〜10日(火)に開催を予定していた『ワールド・オーシャン・サミット2020』は、現在世界中での拡散が懸念されている新型コロナウイルスの感染拡大に向けて様々な対策が講じられていることを十分に考慮し、また、参加者・関係者の安全を最優先するとの判断のもと、中止となりました。

A  第7回世界自然保護会議の開催が延期されました。202117日から15日開催という新しい日付で延期されることが正式に発表されています。様々なQ&Aが下記から見られます。

https://www.iucncongress2020.org/newsroom/coronavirus-disease-covid-19-update

B  生物多様性条約第15回締約国会議に向けた、5月予定のSBSTTA/SBI8月の延期で、これに伴う、ポスト2020作業部会やCOP15の延期が公表されています。

https://www.cbd.int/article/SBSTTA-24-SBI-3-New-Venue-Date 

C  この他に、奄美沖縄徳之島世界自然遺産の可否を決める世界遺産委員会が、福建省福州市で2020629日より開かれることになっていましたが、延期されるものと思われます。

https://whc.unesco.org/en/sessions/44com/