インゲンマメの就眠運動

 

T.目的

 植物の中には昼に葉を上げ、夜に葉を下げるという、時刻により葉の位置が変化する“就眠運動”を行っているものがある。インゲンマメの初生葉もこのような運動を行うことが知られている。ここでは、インゲンマメの初生葉の就眠運動の様子と、昼夜のような光条件の変化をなくしたときの就眠運動の様子を調べる。

 

U.準備

・インゲンマメの種子 ・バット ・綿 ・園芸用土 ・鉢 ・糸 ・重り ・収縮測定器

・スタンド ・理科実験用インターフェイス ・パソコン ・計測用ソフト ・表集計ソフト

・遮光用ダンボール ・蛍光燈

V.方法

 バットの中に綿を敷き、水を含ませ、インゲンマメ(ツルアリインゲン)の種子をまいた。芽が出てきたら、一つずつ園芸用土を入れた鉢に移し替えた。初生葉が出て、就眠運動がよく観察されたものを材料に使用した(初生葉より上の茎は切除した)。初生葉の中肋の基部より2/3程度のところに、中肋を傷つけないように糸を通して葉の裏で結び、その先に糸ハンダによる重りを付けた。収縮測定器のプーリーに糸をかけ、反対側の先には葉が引っ張られない程度の重りを付けた。

 収縮測定器のケーブルを、インターフェイスの入力端子(AD1)に接続し、インターフェイスとパソコンを通信ケーブルで接続して、パソコンにより葉の上下動の連続計測を行った。

 実験は、日の当たる窓辺の自然条件下で数日行った後に、試料を測定装置ごと遮光用のダンボール箱で覆い、内部の60W蛍光燈を連続点燈させて恒明条件下で数日行った。

 実験データは、表集計ソフトを使用してグラフ化などの処理を行った。

W.結果

1.自然光条件下での実験


 窓辺の自然条件下での葉の上下動は次のグラフのようになった。天候などによると思われる多少の差は見られたが、昼間に葉を上げ、夜間に葉を下げる24時間周期の就眠運動が観察された。

 


2.恒明条件下での実験


 恒明条件としてからの葉の上下動は、次のグラフのようになった。外部からの光条件の変化がなく、常に明期の状態であるにも関わらず、葉の上下動を行う就眠運動を続けた。この場合の運動は、自然条件下での24時間より長い、約1日のリズム(サーカディアンリズム)を示した。しかし、恒明条件としてからの日数に伴い、上下動は小さくなっていった。また、およそ2時間周期の上下動のリズムも観察されるようになった。

 


D.考察

 インゲンマメの初生葉の就眠運動は、自然の光条件下では、照度の周期的な変化に同調した24時間周期の運動となった。光条件の変化のない恒明条件下でもこの運動は観察されたことより、就眠運動はインゲンマメ自体に内在する時計により生じたことが考えられる。おそらく、通常は、外部からの照度の変化により体内の時計を補正し、外部環境の24時間周期に同調させており、外部からの情報(光条件の変化)がない場合には、内部の時計にそのまましたがって運動が発現しているものと思われる。しかし、恒明条件では、日数の経過に伴って就眠運動が消失していったことから、就眠運動の継続には、外部からの明暗の変化も必要な条件となっていることが示唆される。