PionusLab. ドリトル先生の条件

 

  ドリトル先生の条件

☆☆ はじめに ☆☆

 
  "お役に立てませんで・・・"
  ロビンの入院先からの電話を受けた時、自分がロビンを失ったのだという強い悲しみと同時に、同じくらい強い、しかも正体の掴みようの無い漠然とした不安感が私を襲いました。そしてその感情の正体が"取返しの付かない過ちを犯してしまった"という気持ちだという事、そして一体どんな過ちだったのかということが分かったのは、もう少し後のことでした。
  結論から言ってしまえば、 ロビンは入院した次の日に目に見えて胸の肉を落としてしまったのですが、病院では十分な栄養的手当が行われずに入院室のインキュベーターの中で衰弱死したと考えられます。入院生活は20日近くに及びます。
   これが、鳥の診療に疎い病院であれば、私はロビンを失った悲しみだけに浸っていればよかった。 (勿論、鳥の診療に疎い病院ならば、そもそも入院などという事態には陥らなかったでしょうが。)
  でも、鳥の専門病院で、鳥の臨床に関する知識も、診療設備も手術の腕も日本の中では進んでいるとされた病院で、しかも院長先生は鳥が大好きで鳥への思いが人一倍強く・・・・、こんな病院でなぜこのような事が起こったのだろうか。 そのことを考え続けずにはいられませんでした。

  "訴訟"の2文字が頭の中をよぎる中、考えを進めていくうちに、これがある特定の医師の問題なのではなく、特に現代では多くの(若い)医師が陥りやすい罠なのではないかと考える様になってきました。
  私はかけがえのない息子を失いました。あまりにも大きすぎる犠牲です。でもこの事実から何か僅かでも光を見いだすとすれば、それは同じ悲劇を繰り返さないということなのではないかと思うようになりました。
  この項は、特にこれから獣医師を目指す方、獣医師の免許を取ったばかりの方、そして若い獣医師を指導する立場の方に読んでいただきたくて、そしてこのような悲劇が二度と起きない事を心から願って書いたものです。

   私の結論とは違った判断の可能性のために、まずはロビンの入院中の様子や治療内容は何だったのか、当時のメモを公開します。そして、なぜ上記のような結論に達したのか、新しい主治医様のカララへの診療行為を通じて考えた事、そして自分なりに考えた本物の獣医さんの条件というふうに書き進めて行きたいと思います。

  このドリトル先生の条件が備わっていなければ、どんなに鳥の臨床に詳しくても設備が整っていても手術の腕があっても鳥への思いが深くても、その人は獣医師ではないのだと思います。
  そしてこの条件の満たしているからこそ本物の獣医師は、検査技師とも看護士とも、研究者とも、或いは鳥臨床の知識が豊富なある種のマニアとも一線を画し、病院という世界のヒエラルキーの頂点に立つ資格があるのだと、いや頂点に立たなくてはならないのだと考えるのです。 

[ 1999年3月3日 中澤鳰 ]

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