月夜のMelody
戻る

 (緑土なす二次創作ぷらいべったログ 9 )
『水明のこと』


 狼からの報告は、すべて長官室に集まる。
 〈水明〉は、今日も長官の横で様々な報告を聞いていた。

・長官、兄上さまがお目覚めになりました
・長官、兄上さまが朝御飯を完食されました
・長官、兄上さまが畑に向かわれました
・長官、陛下が長引きそうな案件に大変ご不快です
・長官、兄上さまが指先に棘を刺されました
・長官、陛下の聴政が荒れております
・長官、兄上さまが昼食も完食されました
・長官、陛下が宰相を叱責されてます
・長官、兄上さまが侍従をお茶にお誘いくださいました
・長官、陛下が聴政を打ち切って兄上さまの元に駆けております
・長官、陛下が兄上さまに、昨夜のお可愛らしさが忘れられず集中できない責任を取ってほしいと詰め寄ってます
・長官、兄上さまが、腰の痛みがまだ治まってない責任をとれ、と反論しています
・長官、兄上さまが、陛下に押しきられました!
…………

 〈水明〉は、報告される全ての事柄を、秘書官よりも細かく自分の記録帳に記していく。
 その手記は、自分だけのもの……
 自分だけの王族……

「〈水明〉、口元が弛んでいますよ」
「!失礼いたしました」
 長官は、〈水明〉をとがめる。
(以前は、〈水明〉ほど表情を隠すのに長けている者はいないと思ったのだが…)
 無意識に痣に手を当て、にやける癖をやめさせなければいけないな、と長官はため息をついた。