月夜のMelody
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 (緑土なす二次創作ぷらいべったログ 5)
『絵姿』


「兄上さま、こちらは?」
 処分する紙の束の中に、今世王の絵姿が混ざっていた。
「間違えました。これはいいです」
 足弱は赤面して、絵姿を取り上げた。
「兄上さまがお描きになられたのですか?」
「勝手に手が動いただけです」
「陛下にお見せになられてはいかがでしょう?」
「いえ、これは……。絵姿を抱いて寝ると、その夢を見られると聞いたので…本当かなって」
 足弱の言葉を遮るように、隣の部屋でガタンという音がした。
「何でしょう?」
「無作法失礼いたしました。お気になさいませんよう。…楽しい夢をごらんくださいませ」
 〈命〉はにっこりと微笑み、寝室を後にして隣室に入る。
 そこには、〈温もり〉が床に這いつくばって〈命〉を待っていた。
「申し訳ありません。あまりに兄上さまがお可愛らしくて、つい手が滑りました」
「あれくらいで動揺していては、とても兄上さまをお任せできませんよ」
 〈命〉は、〈温もり〉を厳しく叱りながら仕方ないことだとも思っていた。
(兄上さまのお可愛らしさには、狼ごときではとても敵わない……)
 絵姿を折り畳んで胸に忍ばせる足弱を思い描き、〈命〉は作り物ではない笑みを口元に浮かべた。