月夜のMelody
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 (緑土なす二次創作ぷらいべったログ 3)
『恋と嘘と兄上さま』



 足弱は、定期検診に訪れた〈巻雲〉にすがり付いた。
「〈巻雲〉さん!レシェが一日一回口づけしないと死んでしまう病にかかったって!オマエ草でも治らないって!」
(陛下…………)
 〈巻雲〉は、今世王の思惑にすぐに気づいた。
 しかしながら、心を痛めて青ざめている足弱を見て心が揺らぐ。
 医者としても、嘘をつきたくはない。
「その件は、陛下のお許しがなければ申せません」
  内心上手い答えだと〈巻雲〉は思ったが、足弱はこの世の終わりのような顔をした。
「あ、兄上さま。あまりお悩みいたしませんよう。陛下は……」
「余がどうした?」
 いつのまにか来ていた今世王が、〈巻雲〉の言葉を遮った。
(陛下!いつのまに!)
 〈巻雲〉は膝をついた。
「兄上、大丈夫ですよ。毎日兄上から口づけしてくだされば、レシェはずっと元気ですからね」
「……え?さっきはおれからなんて、言ってなかった」
「ああ、言い忘れてしまったのですね」
 にこにこと上機嫌で話す今世王を、誰も止められない。
「……無理だ」
 涙をためて、足弱は王を見つめる。
「え!どうしてですか!ちょっとしてくださるだけでいいんですよ?」
「一日一回だけなんて……とめられなくなってしまうじゃないか…」
「…………」
 予想外のお可愛らしい発言に、今世王は固まる。
「あ、兄上?…何回もしてくださってもかまいませんよ?」
「レシェが苦しんでいるっていうのに、おれが我慢しなくてどうするんだよ!」
 もう、よくわからない展開になってきた。
「兄上は、毎日でもわたしと、その、口づけしたかったりします?」
「あたりまえじゃないか」
 今世王は、足弱を抱き締めた。
「ごめんなさい。実は死にません。毎日会わないと、胸が苦しくなる病です」
「え?レシェもおれと同じ……」
「……え?」

 〈巻雲〉はそっと下がった。

 恋の病は、医者では治せないのだから。