月夜のMelody
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 (緑土なす二次創作ぷらいべったログ 2)
『鳥』



 飛ぶことができない黒い鳥を、鳥かごの中に閉じ込めた。
 本当ならばもっと自由に、大地で遊ぶこともできたのに
 飛べないことをいいことに、無理矢理自由を奪ってしまった。
 誰にも渡したくなくて、自分だけのものにしたくて。
 幾重にも、柵を巡らせあきらめさせた。

『ここにいてください』
『どこにも行かないで』

 不自由な足を喜んでいた。
 歩けなくなることを望んでいた。
 何度も泣かせた。傷つけた。
 わたしなしでは生きていけないよう
 わたしの印を刻みつけた。

「……何を考えてたんだ?」
 寝ているものと思っていた伴侶に見つめられ、 今世王はぎくりと身を強ばらせた。
 足弱は、今世王の頬を手で撫でる。
「辛そうな、顔をしてた」
 足弱の手に、今世王は自分の手を重ねる。
「何もありません」
「嘘つきだな。レシェは」
 出会った頃とはまるで違う、優しい瞳が今世王を写していた。
 けれども、自分を拒絶したあの兄も、本当の兄であったから。
「ごめんなさい」
 子どものようにしがみついて、足弱に謝る。

 腕の中に収まる今世王を抱きながら、足弱は、いいよと言った。
 それから、しばらくの沈黙の後、足弱はごめんなさいと謝った。
「え?なんです?」
 今世王は、顔を上げた。
「…もし、他に王族の方がいらしたら、レシェイヌを一人占めできなかったかな、と思ってしまった」
「……そんな……こと…ない」
「でも、おれには……立派な衣装も冠も、この部屋も似合わないと思うんだ」
 今世紀王は、黙って頭を振った。
「おれは、他には何もいらないから。レシェイヌだけが欲しいんだ」
 今世王はじっと足弱を見つめて微笑んだ。
「わたしは、あなたのレシェイヌです」

 金の鳥が、肩にとまった。
 ずっと動かず寄り添ってくれる。
 楽しいときも、苦しいときも、いつも一緒にいてくれる。
 時に囀ずりで、時に羽ばたきで、真っ暗だった世界に光がさした。
 世界に、色があることを教えてくれた。
 群れからはぐれた金の鳥は、いつまで一緒にいてくれるだろうか。
 飽きて離れてしまいはしないか。
 たくさんの同族を失って、一人になってしまったあなたは、おれを求めることしかできない。
 おれのことだけしか愛せない。
 笑みを刻んでしまいそうな、口元を強く引き締める。
 おれだけの金の鳥。

『ここにいてください』
『どこにも行かないで』

 最後の王。黄金の王。

 孤独な鳥たちは、比翼の鳥となり遊ぶ。
 決して離れることがないように。