「今、なんと……?」
王は侍従から告げられた言葉に狼狽えた。
「今夜、兄上さまがお渡りになるそうです」
つまり、足弱から王の住居を訪ねるということ。
「よろしいでしょうか?と」
「もちろんだ!お待ちしているとお伝えしろ」
すぐに返事を送り出して、傍らの〈一進〉に聞いた。
「ど、どうしたらいいのだ?」
「は?」
「余はどのようにお迎えしたらいいのだ!」
「いつもと同じでよろしいかと」
「いつも?いつも余はどのようにしていた?」
王は頭を抱えた。
「兄上がお好きな香をもて。着替えたほうがいいだろうか、<一進>!早くいたせ!」
「はい。すぐにご準備いたします」
皆は兄上さまお可愛らしいと言うが、陛下も十分にお可愛らしいと思う〈一進〉だった。