月夜のMelody
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 (緑土なす二次創作ぷらいべったログ 10)
『夢の欠片』



 黒髪の少年が、母を見つけて走ってきた。
「ねえ、ハラ母さま!ラフォスに弟ができるの?今度こそ父王さまはお願いきいてくださるかな?」
「まあ、まだあきらめていなかったのですか?」
「もうすぐラフォスも10さいです。父王さまは、おれに弟の面倒をみてもいいと言ってくださるかな?」
「ラフォスエヌ。おれ ではなく、わたし とおっしゃい。どうもお前は言葉がたまにおかしくなるわね」
 ハラは苦笑した。
「弟とたくさん遊びたいんだ。歩けるようになるまで、おれが背負っていろんなとこに連れてってやる。山でも川でも」
「それは大変ね」
「ぜんぜん大変じゃあないよ!」
 ハラは息子に微笑んだ。
「楽しみねラフォス。一番何がしたい?」
「かけっこ。あと馬に乗るんだ」
「そう」
 ハラは愛し子を抱きしめた。
「うんと大事にしてさしあげてね」
「もちろんだよ」

 あるべきはずだった過去を夢に見て、足弱は目を覚ました。
 目を開けると、心配そうな青い瞳と視線がぶつかった。
「……レシェ」
 今世王は手を伸ばして、足弱の目もとから涙の欠片を拭った。
 自分は泣いていたのかと、足弱は思った。
「悲しい夢でもご覧になりましたか?」
「いや。……ああ、でもそうなのかな?楽しい夢でもあったのだけど、あそこにはレシェイヌがまだいなかった。ならばやっぱり悲しい夢なのかな」
「では、次からは夢の中までご一緒いたします」
 足弱は笑った。
「レシェならできそうだ」
「もちろんです」
 足弱は、笑いを収めて弟の背に腕を回した。
「レシェイヌ、今度一緒に馬に乗らないか?」
「喜んで。すぐに手配いたします。馬は一頭でいいですね」
「……いや、別々にしてくれ」
「……兄上。レシェが何かしそうだと勘ぐっておられますか?」
 二人乗りなどして、この弟が何もしてこないはずないではないか、と足弱は思った。
「たまには、二人で野原を駆けよう」
「はい。遠出してもいいですね。狼たちを振り切って二人だけになったら……」
 今世王は、足弱の耳に吸い付きながら囁いた。
『外で、楽しく遊びましょう』
 足弱は、くすぐったさに身をよじって笑った。
 たとえ過去が変わっていたとしても、きっと今この時に続いていたことだろう。

「そうだな。一緒に、遊びに行こう」