まず、放送ドラマ作りの最初の作業は、録音ドラマにせよ生ドラマにせよ台本作りからはじまります。台本となる脚本を作る方法は、
1)完成された戯曲又は放送劇作品の中から作品を選び使用する。
2)オリジナルの脚本を自分で書く。
3)既存の小説、漫画等に脚色する。
以上の3つの方法があります。
1)の方法は、”脚本を書く”作業が無く、既出の作品の中から気に入った作品を選ぶだけでよい。ただし、気に入った作品が見つからない場合も多い。作品に対する入れ込みが、いまいちになってしまう事が往々にしてあります。
2)の方法は、”脚本を書く”作業に非常に時間を要します。しかし、完成した作品に対する入れ込みが、並々ならないものになります。
3)の方法は、既存の小説、漫画等の放送ドラマ化です。
ぼくはいつも3)の方法を用い、漫画をベースにその内容を大幅に変える手法で台本を作成しました。一見漫画の脚本は、簡単そうに見えますが、なかなかどうして脚色作業も非常に時間を要します。”吹き出し”の他に”絵”として描かれている情報を文字に変換しなければならないからです。ちなみにコミックス1頁を脚色すると原稿用紙3枚程度になります。
さらに、台本の書き方の手法として、 放送生ドラマ用の台本には、基本的にナレーションパートを設けない。
なぜ放送生ドラマ用の台本には、ナレーションパートを設けないのか?放送生ドラマの上演は”ライブ”で行うため、ドラマの流れ、テンポが重要な要素となります。しかし、ドラマの中にナレーションが入ると、そこで演技の流れがとぎれてしまい、間延びしたように聴衆に”観えて”しまうと考えるからです。
主たる登場人物は、6人程度とする。 これは、ドラマの中の登場人物をあまり多くすると、聞く側が登場人物を把握しきれなくなる可能性があるためです。
さらに、完成した台本を製本する場合は、 台本の印刷は、柔らかい紙に印刷する。
台本をPPC用紙に印刷(コピー)すると、めくるときにガサガサと紙からノイズが発生する。このノイズがドラマ録音時、又は、生本番中にマイクへ侵入するのを防ぐ為である。素材としては、藁半紙が良いようです。
さて、台本が完成すると次は、キャスティングの決定です。ぼくが、大学サークルで放送ドラマを制作していたときには、なかなか、制作側のイメージにあったキャスティングを設定できないのが常でした。なぜなら部員は15名前後、しかもメンツは、すべて男ばかりだったからです。(女性はいつも交流校から応援してもらっていました。)そんなわけでキャスティング設定するときは、
でした。実際、放送ドラマ制作で苦労するところは、ここかもしれません。
キャスティングと同時進行して、制作するのがSE(効果音)です。SEは、放送ドラマに不可欠、(否、放送ドラマだけではなく演劇全体に不可欠)放送ドラマの場面場面の雰囲気を作り出す重要な要素の一つです。
SEの制作に当たっては、出来合いを使用する場合
1)CD等に収録されしはんされているものを利用する。
自分達で作る場合
2)生録音する。
3)シンセサイザー等で合成する。
3)のシンセサイザー等で擬音合成する場合は、主にSFドラマ等に使用する非日常的SEを必要とする場合でした。
自分達のイメージに合致したSEを制作するには、やはり、自主で制作するのがおススメです。市販の効果音は、”音”の種類が少ない上に、求める効果音が無い場合が多く、求める効果音が有ってもその”音”が(わざとらしいとは言わないまでも)強調されすぎて自分のイメージに合致しない場合が多かったからです。
また、SEを工夫しながら制作する過程も楽しいものです。以外な工夫で以外なSEが得られます。
SEと並び放送ドラマの雰囲気を作る重要な要素としてBGMがあります。放送ドラマのヤマ場等のバックに流し、雰囲気を盛り上げるのに使用します。時にはBGMにドラマのセリフの”行間を読ませる”的意味を持たせることもあります。
しかし、BGMを選択しどの場面に挿入するのかを決定するのは困難な作業です。なぜなら、BGMをどこに入れるか、そこにどんな曲を流すかによってその場の雰囲気が大きく変わる可能性があるからです。従ってBGMの選択は、その放送ドラマ作品の演出と大きくかかわっているので、制作者の感性に拠るところが非常に多いと思います。
そんな訳でBGMを選ぶ”難易度”の目安として
1)インストルメンタル
2)洋楽
3)邦楽
最後に演出について。
ぼくがいつも心がけた演出はただ一つ、
自分が正しいと思ったことは総て正義! です。
ぼくは、サークル活動の中で放送ドラマに固執しました。そのなかでもとりわけ放送生ドラマに固執しました。放送生ドラマを上演するのは、大学祭期間中3日の間にせいぜい2回程でした。放送生ドラマは、大学祭の数ある放送研究会のイベントの中の一つに過ぎなかったのです。では何故ぼくが放送生ドラマに固執したのか?
一つには、ぼくが映画、演劇を大好きだったことがあります。”Live”における緊張感、聴衆のリアルタイムの反応等々・・。そして、放送生ドラマを上演し終えた時の満足感は言葉に言い表せないものがありました。それらは、ぼくを狂わすに十分なものがあったのです。
ここでは、『放送生ドラマとは?』とゆうことで、ぼくたちの放送生ドラマの上演方法についてお話ししてみたいと思います。
放送生ドラマとは、音声のみの演技、芝居です。そして、放送生ドラマとは、いわるゆる録音ドラマに対して、放送生ドラマです。録音ドラマとは、磁気テープなどに放送ドラマを録音したもので、聴覚的要素のみです。対して放送生ドラマとは、放送ドラマを”Live”で行うものであり、100%の聴覚的要素のみのものに、視覚的要素を少し加味したものです。より具体的に説明すると、マイクを並べたステージの上に出演者が立ち、聴衆を前にして放送生ドラマを演ずるのです。(堂々と台本を読むのです!)ちょうど芝居の立ち稽古のようですが、それとも違い、一つのパフォーマンスとして完成しているものです。
声のみの演技ですから、特別の衣装を必要とせず、せいぜい揃いのトレーナーを着て服装を統一ぐらいでよいのです。舞台装置は、スタンドマイクが数本と人数分の椅子と回りに暗幕を張る程度。照明も出演者各人を照らし出すスポットライトがあれば良い位で、至って簡単なものです。そうゆうわけで、舞台出演や演技スタイルは比較的自由です。
放送生ドラマの上演スタイルは、
舞台は、ステージ上にスタンドマイクを数本並べ、その後方に椅子を出演者の数だけ並べます。
出演者は、その椅子に座っています。(ここで注意しなければならないのは、出演者は、ステージの上での待ちの間、キチンと座っていること。足など組んで座っていると舞台がだらしないものに見えてしまいます。)そうして出演者は、自分の番になるとマイクの前へ立ちセリフを言う。出番が終わるとまた椅子へ戻ります。
ディレクター(出演者である場合が多い)は、出演者のセリフをしゃべるタイミングを指示(いわゆるQUE出し)します。ディレクターは、他にSEとBGMの音出しのタイミングをミキサーに指示します。
ミキサーは、放送ドラマの機械全般を操作します。オープンデッキ等を操作しSEやBGMを流すのです。
その他にメンバーの余裕が有れば照明担当を設け、スポット照明を出演者に当てる。
とまあ、こんな感じで放送ドラマを上演してきました。簡単に、かい摘んだ話でしがた、理解して頂けたでしょうか?
ちょっと最後は、取り留めのない話になってしまいましたが、これでぼくの放送ドラマの話はおしまいです。最後にこれまでの話は、ぼくのやり方、ぼくの見解であった事をお忘れ無く。
梅九郎