ストラーニク98 レポート

アンドレイ・ラザルチューク(右写真)
訳:大野典宏

 経済的な危機によって開催が数回延期された末、サンクト・ペテルブルグにて、プロによる幻想文学賞「遍歴者賞」の授賞式が開催された。ただ、今回、「幻想作家会議」の開催が一度も話題に上らなかったことは残念だった。たとえ、これまで「会議」などとはとても呼べない簡潔で質素なものだったにしてもだ。まぁ、それはそれで非常に今日的なのだが。
 それにしても、伝統が中断されることなく祭典は行われ、未来を楽観することが許されたのだった。
 だが、審査委員の集まりは悪かった。ワシーリ・ズヴャギンツェフは休みを取られず、ウラヂーミル・ミハイロフは病気のため外出できなかった。そのため、彼らは電話で投票することになった。他の審査員は規則に則り、周りの者に箝口令を敷き、時間を目一杯使って会議を行った。
 ノミネートされた作品は次の通り。

長編

  1. アンドレイ・ラザルチュク、ミハイル・ウスペンスキイ 「怪物の目を見ろ」
  2. セルゲイ・ルキヤネンコ 「秋の訪れ」
  3. ボリス・シテルン 「エチオピア人」(右写真)
中編
  1. エヴゲニイ・ルーキン 「圧倒的な才能」
  2. ウラヂーミル・ポクロフスキイ 「ゲオルゲス」
  3. エレナ・ハエツカヤ 「反啓蒙主義者」
短編
  1. アレクセイ・ザルビン 「繋がれた虎の子」
  2. セルゲイ・ルキヤネンコ 「現状からの案内人」
  3. ウラヂーミル・ポクロフスキイ 「夢の人々」
評論
  1. エドゥアルド・ゲヴォルキャン 「番人は疲れていた」
  2. キリル・コロレフ 「幻獣百科」(右写真)
  3. セルゲイ・ペレスレギン 「『ストルガツキイ兄弟の世界』1-5巻の前書きと後書き集」
 A・ラザルチュク、M・ウスペンスキイ、S・ルキヤネンコが、「大賞」に投票する際には、今回だけ特別に、最近他界した共通の友人であるB・シテルン(左写真)に入れようと持ちかけた。ここでお断りしておくが、このような話は今回が初めてのことで、これまでは正常に行われていた。
 次の日、A・ストリャロフの講演に続いて記者会見があり、そして作曲家会館に移動した。ここで授賞式が行われることが恒例になっているのだ。ホールは満員だった。経済的な理由により、式典は質素になったが、こちらのほうがずっと良い。
 まず、本の制作に関わる側、つまり出版社、編集者、アーチスト、翻訳者に対して賞が授けられた。媒体は「イェースリ」、アーチストはACT社の仕事をしているA・ヅボヴィク、出版社はACT、翻訳者はK・コロリョフ(面白いことにACTの仕事をしている)という具合だった。おかげで、ACTの編集長N・ナウメンコは、自分の席に戻ることができなかった。
 休憩の後は、文学の創出に直接携わる人々への賞になる。非芸術的作品(評論)賞はK・コロリョフ、短編はV・ポクロフスキイで、彼はテーマをより先鋭化させた「新しいファンタスティカ」の研究をしている。そして中編は、E・ルーキン。
 B・ビッレヴィチによる大統領のランチキ騒ぎに関するジョークに続き、自嘲賞の発表。毎回、「ストラーニク」では、恒例としてファンタスティカにかかわる自分たちのことを笑い飛ばしているのだ。今年の自嘲賞はA・ラザルチュクとM・ウスペンスキイ(右写真)による短編「黄色い潜水艦『モルドヴァのコムソモール員号』」となった。
 最後には、長編賞の発表。全員が立ち上がり、ボリス・シテルンの名前を呼んだ。そしてボリスの早すぎる死の記憶に対し、一分間黙祷した。
 その後は再び報道関係者との受け答えの時間。とはいっても、昨年のロバート・シェクリイのような目玉は無いので、記者が押し掛けるというようなことはなかった。
 A・シドロヴィチが現れ、インタープレスコンが今年もまた開催されると言った。そしてN・ユータノフが、次の「ストラーニク」はいつもの時期にいつものやり方で、多数のゲストを呼び、面白い企画を盛りだくさんにすると約束した。
 まあ、そういうことだ。