通巻第3号(1995年12月09日発行)

日本SF大会『はまなこん』に二名のロシア・ターボ・リアリストを招待!

 既に旧聞に属する話題ではあるが、今年の夏、静岡県浜松市内で開
催された日本SF大会『はまなこん』にペテルブルク在住の作家、ア
ンドレイ・ストリャーロフ及びヴャチェスラフ・ルィバコフの両名が
来日、中国SF関係者と共に『非英語圏SFシンポジウム』に参加し
た。

 なお、ストリャーロフ氏と井桁教授との対談はNHK教育テレビ朝
のロシア語講座で先月放映され、今月はルィバコフ氏の出番である。
乞う御期待。その他の詳細については、年末発売のSFマガジン二月
号掲載予定の大野レポートを参照のこと。

深見蔵書整理作業、いよいよ書斎の部終了迫る!?

 早稲田大学図書館にロシア語図書一千冊を寄贈後も月一回のペー
スで進められてきた蔵書整理作業。今年最後の十二月集会で書斎の部
がほぼ完了しそうな気配である。十一月の集会では、若き日の深見弾
さんがモスクワの演台上で気勢をあげる勇姿の写真が発見されるほ
か、ポーランドのレム・インタビュー等の貴重な録音テープも発掘さ
れた。


ロシア・ソビエト映画情報

大山博

ユーリ・ノルシュテイン監督来日

 今年の一〇月、『話の話』や『霧につつまれたはりねずみ』で有名
なロシアのアニメーション作家ノルシュテインが来日し、東京では約
三〇名の聴講生を対象にアニメーション講座を行ったほか、神戸の映
画祭で高畑勲監督と対談を行う等の活動を行った。講義録については、
あと一四ヶ月!を要すると言われる『外套』の完成にあわせた出版が
期待されている。また、早稲田の井桁教授との対談は例によって例の
如く、NHK教育テレビ朝のロシア語講座で放映される見込みである。

 『外套』の制作中断が長引くノルシュテイン監督だが、ロシアの製
糖会社のテレビ・コマーシャルのため、ライオンのキャラクターを用
いた三〇秒ものを四本制作している。うち、三本はエイゼンシュテイ
ン・シネクラブの例会等で上映されているが、なかなかの傑作である。

 なお、『外套』については、離日直前に監督が話したことによると、
連邦解体前後のどさくさにまぎれて、連邦動画スタジオの誰かがノル
シュテイン作品の権利をアメリカの業者に売り払ってしまったらし
いとの未確認情報あり、今後の進展が心配される。

アレクサンドル・ソクーロフ監督、またまた来日中

 ノルシュテイン監督帰国後、すれ違うようにストルガツキイの『世
界終末一〇億年前』を題材に傑作『日陽はしづかに醗酵し...』を作
ったソクーロフ監督が来日、現在なお滞在中。十二月十六日から東京
の銀座テアトル西友で始まる連続上映初日には監督の舞台挨拶が予
定されている。

ロシア・ソビエト映画祭速報

メイン・イベント(東京地区)

*メイン・イベントのあと上映は全国巡回、順次開催予
定。

上映予定作品

  1. ステンカ・ラージン』(ロマシコフ監督、1908)
  2. 『セヴァストーポリの防衛』(ゴンチャロフ監督、1911)
  3. 『カメラマンの復讐』(スタレーヴィチ監督、1912)
  4. 『人生のための人生』(バウエル監督、1916)
  5. 『ミス・メンド』(オツェップ監督、バルネット助監督、1926)
  6. 『メアリー・ピックフォードの接吻』(コマローフ監督、1927)
  7. 『ベッドとソファ』(原題『第3メシチャンスカヤ通り』、ロー
    ム監督、1927)
  8. 『上海ドキュメント』(ブリオフ監督、1928)
  9. 『センチメンタル・ロマンス』(エイゼンシュテイン&アレクサ
    ンドロフ監督、1931)
  10. 『アコーディオン』(サフチェンコ監督、1934)
  11. 『うぐいす』(エック監督、1936)
  12. 『バザール』(ツェハノフスキイ監督、1936)
  13. 『サーカス』(アレクサドロフ監督、1936)
  14. 『未来への迷宮』(原題『きびしい青年』、ローム監督、1936)
  15. 『ヴォルガ・ヴォルガ』(アレクサンドロフ監督、1938)

 これらの作品の多くは日本初公開で、ロシアの国立フィルムライブ
ラリーであるゴスフィルモフォンドに保管されていたフィルムです。
今回の上映のため、新たにプリントしなおしたものもあります。まだ
まだ、埋もれた傑作がたくさんありますので今回の企画を成功させて、
次回への道をつなぎたいものです。

 上映作品1)は、ロシア初の劇映画。ただし、今観るとおじさんたち
が舟遊びしているみたいです。2)はロシア初の歴史スペクタクル長編、
試写を観てきましたが、古典であることを考えればなかなか面白い作
品です。3)は帝政時代の人形アニメーションで爆笑の昆虫不倫物語! 
アニメーション研究家おかだえみこさんの話によると同じ監督によ
るひたすらシュールな『蟻ときりぎりす』もあるそうなのですが、今
回の上映には含まれていません。4)は初期ロシア映画の大スター、ヴ
ェーラ・ホーロドナヤ主演のメロドラマ。5)は若きボリス・バルネッ
トが助監督並びに主役の新聞記者バーネットを演じる三部ものサイ
レント冒険活劇。原作は、シャギニャンの革命冒険SF小説『メス・
メンド』だけれど、ほとんど別の物語に翻案してあります。6)はアメ
リカの大スター、メアリー・ピックフォードが訪ソした際の大騒ぎを
題材にしたコメディ、7)はアブラム・ローム監督の《論争映画》、8)
は二十年代の上海を舞台としたドキュメンタリー。9)はエイゼンシュ
テイン等の詩的なトーキー実験映画、10)はスターリン時代のミュー
ジカル・コメディで、やくざな音楽で若者を誘惑するならず者に健全
な音楽で立ち向かう共産主義者!言うところがすごい作品(^_^;。で
も、面白いです。11)はソ連最初のカラー映画で、監督は『人生案内』
などのニコライ・エック。12)はショスタコーヴィチの音楽を採用し
た未完の実験的アニメの断片。製作途中で検閲に引っ掛かり、わずか
数分しか残っていない貴重な作品です。13)もミュージカル。興行の
ため訪ソしたアメリカのサーカス団のヒロインと、ソ連のサーカス団
の青年とのロマンス。くさいと言ってしまえばそれまでですが、なか
なか感動的なラストです(エンディングのメーデー?行進は興ざめで
したが)。14)はユーリ・オレーシャ原作の問題作で、これまた上映
禁止作。ちょっと評価に困る作品でもあります。15)は大爆笑のミュ
ージカル・コメディ。

 この他、『戦艦ポチョムキン』、『母』、『大地』の特別上映、エ
イゼンシュテインの誕生日に当たる1月23日(異説もあるようです
が)には記念イベント(予定)、キネカ大森会場でのバルネット監督
作品『帽子箱を持った少女』、『青い青い海』、エイゼンシュテイン
監督の『イワン雷帝』、その他『鶴は翔んで行く』、『戦争と平和』
(全編一挙上映)、『ざくろの色』及び『ウルガ』特別上映もあり、
ロシア・ソビエト映画ファン必見の企画となっています。前売券の発
売も今月には始まるはずです。乞御期待!