科幻情報 Vol.11


 ごらんの通りレイアウトを横書きに変えてみました。別に10号を越えたことを機に一念発起して――というわけではないので、要するにワープロで打ったあとプリントアウトする際、この方が手間がかからないという、甚だ実用的な動機に過ぎないのであります。
 今年は仕事が多忙で、夏に入るまで出せないのではないかと思っていた『科幻情報』ですが、急を要するニュースもあり、会員の出入りや住所変更もありますので、このへんで一度発行しなくてはと思い立った次第。従って今回はほとんど最近のニュースだけという内容です。


第二回中国SFコンテスト“銀河奨”作品募集はじまる

 中国SF創作の繁栄をはかり、青少年の想像力と科学への情熱を啓発するため、《科学文藝》雑誌社では、第二回中国SF銀河賞コンテストを開催することになりました。
  1. 各界の諸氏、香港・台湾の同胞をはじめ、海外華僑の諸氏によるさまざまな作風の、中国らしい特色に富む、大胆なSF短編を歓迎します。字数は原則として一万字を越えないこと。連載のための中編SFも歓迎。
  2. 募集期間は1988年3月から1989年3月まで。入選作品は《科学文藝》誌上に発表します。授賞作品は1989年7月に公表するとともに、成都において授賞大会を開催します。
  3. すでに発表された作品の中から次の通り授賞いたします;特賞(賞金1000元)一編:一等賞(賞金500元)一編:二等賞(賞金300元)二編:三等賞(賞金100元)5編。このほか、本コンクール参加作品に関する評論1編に対し、評論賞として賞金200元。
 ……と、以上のような広告が《科学文藝》88年1期号に載っていました。前回、第一回のときも若い世代による意欲作が多数入選したものです。今回の成果にも大いに期待しようと思います。


日本SFの専門家を志す青年作家、来日中

 《科学文藝》雑誌社から、彭懿という若手児童文学者が日本へ留学するという連絡があったのが、今年のはじめ。その後まもなく本人から連絡があり、東京都稲城市のアパートに落着いたとのこと。パキスタンや中国からの私費留学生が餓死したとか自殺したとかいうニュースが相次いだこともあり、心配なので三月になって深見弾氏とともに会いに行ってみました。4.5 畳+勝手・トイレという古アパートに7人が同居という苛酷な居住条件の上、日本語学校・アルバイト先とも山手線沿いにあるため、電車による通勤通学は片道二時間近くにおよぶという。訪ねたときカゼを引いていたのも無理はありません。さいわい現在は、さる児童文学者の世話により阿佐ヶ谷のアパートに入り、一人住まいの身ということですが、それにしても円高ニッポンへの留学生の実態はまことに厳しいものです。
 彭懿氏は1958年遼寧省瀋陽の生れ。82年、上海の復旦大学生物学部昆虫学科卒業。86年まで上海科学教育電影制片厰にて演出を担当。その後88年まで上海の『童話報』の編集と『少年報』の記者を兼ねる。中国作家協会上海分会会員。発表作品はSFっぽい童話が多く、何度か賞をとっている。彼の原作によるアニメもある由。葉永烈氏とも面識がある。
 で、日本留学の動機はというと、日本SFを本格的に研究し、中国への紹介を積極的に行いたいとのこと。中国における日本SFの紹介はまだ系統立ったものになっていない。日本語のできる連中(学生も含む)が、適当な長さで自分の語学力で翻訳できそうなものをみつけては雑誌に売込む程度である。だから古いものも新しいものも、その作家の代表作と言えるものかどうかということも、全くおかまいなしである。自分は日本SF界と直接接触し、つぶさに現状を見て様々な作品に接した上で、ある程度の見識を身に付けて帰りたい、と極めて熱っぽく語ってくれました。
 しかし肝腎の日本語については、留学前に少し特訓を受けた程度で、今なお学習中というわけなので推して知るべし。まずは気軽に参加できるようなファングループの例会やイベントに参加して雰囲気を知ってもらうのが一番かと思われます。そのようなグループなり催しなりを御存知の方、どうか誘ってあげて下さい。
 お互いに会話の勉強にもなることですので、都合のつく方、どうか付き添って行って下さるようお願いいたします。


深見弾氏、早稲田大学の講師に

 今年の四月から、深見弾氏は母校である早稲田大学で、共産圏SFについて講ずることになりました。話の都合上、中国SFについても触れるわけで、これで中国SFの知名度もグッとあがる……といいのですが。そういうわけで、いま中国SFに関する日本語の資料――小説の翻訳をはじめ新聞・雑誌の記事、評論などを整理している所です。


その他

●今年のSF大会、中国SF研究会としての参加はどうするんだ、という問合わせが2,3ありました。あいにく当方、昨年夏の大会で精力財力とも使い果たしておりますので、今年は特に何も考えてはおりません。ただ、今年の大会に参加される会員のかたで、《減去十歳》の売り子を(一日中なんて言いませんから、ときおり)引受けて下さると有難い。いつも『東海SFの会』の売場に“寄生”してばかりいますので……。
●また、同じ理由から今年は『中国SF資料之三』はちょっと発行できそうにありません。しかし中国SF短編の翻訳ぐらいは、何らかの形で発表しなくてはと思っています。いまの所、東海SFの会の『ルナティック』13号に、姜亦辛『空塚』(20枚)を載せる予定。なお、《資料:三》および《情報》12号の発行に向けて原稿を募集いたします。我はと思う方も思わない方も、どうか奮ってご応募下さい。翻訳・評論・あるいは単なる感想・おたよりなど、内容は問いません。会員以外の諸兄諸姉からの投稿もお待ちしています。
●中国SF研究会も発足してはや8年。往時の会員も社会人となって音信の絶えた人も出ています。忙しいのはどなたも同じことでしょう。いま、時間に余裕があればやってみたいと思っていることを挙げてみると、
  1. 今はなき《科幻海洋》をはじめ80年前後に発刊されていた中国SF専門誌の目録作り。《科学文藝》は毎年最終号に目録がついています。
  2. 欧米作家・作品名の日中対照表。かつて作ったことはありますが、ミスが多かったので、改訂版を作りたい。
  3. SF用語の日中対照表。Aと同様、翻訳のとき便利なものです。
    どなたか、やって御覧になる方、ありませんか?

(このあと、PMに載せた《科学文藝》記事の紹介および『中国SF関係資料一覧』を付し、計6ページにて発行)