| 考古学データの“裏”を読む 〜「ある・ない」論の陥とし穴〜 公正徹也 KIMIMASA Tetsuya |
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【Case 5・縄紋人は、江戸時代人よりも栄養状態がよかった!?】 事実 人間の成長の過程で、栄養状態が悪いと、その影響が骨に及ぶ場合がある。 例えば、歯のエナメル質に小孔があいたり、横方向の小溝が何本もできたりする「エナメル質減形成」、眼窩(眼球がおさまっている窪み)の上壁に篩のような小孔がたくさんあいてしまう「眼窩篩」などである。 縄紋時代人と江戸時代人(東京都千代田区内の遺跡から出土)の人骨を対象として調べたところ、この「エナメル質減形成」「眼窩篩」のいずれにおいても、江戸時代人の方が著しく悪化している状況が認められた。 解釈1 上記の事実は、江戸時代人よりも、縄紋人の方が栄養状態がよかったことを示している。縄紋人の食生活は我々が想像する以上に豊かだった反面、江戸時代人は肉食の忌避や都市の過密化に伴う衛生状態の悪化などで、慢性的な栄養不良に陥っていた。 解釈2 「エナメル質減形成」「眼窩篩」が現れるというのはかなり深刻な状態であり、縄紋人は、 そこまで悪化する前に死んでしまった(だから骨に残っていない)。一方、江戸時代には、これらの症状が見られるほど栄養状態の悪い人でも生き続けることができた。そういうシステムが出来上がっていた社会だったのである。 類例 縄紋時代の遺跡からも、弥生時代の遺跡からも「イノシシ」の骨が出土する。縄紋人も、弥生人も、「イノシシ」を蛋白質の補給源としていたらしい。 ところが、弥生時代の「イノシシ」には 「歯槽膿漏」にかかったものが認められた。一方縄紋時代の「イノシシ」では歯槽膿漏は皆無である。野生の状態では、ひどい歯槽膿漏にかかっていたのでは餌を普通に食べられず死んでしまうだろう。しかるに、弥生時代の「イノシシ」は歯槽膿漏にかかってもなお生き延びている。 これら弥生時代の「イノシシ」について、西本豊弘氏(動物考古学者)は、野生ではなく「飼育」されていた、すなわち「イノシシ」ではなく 「ブタ」であると鑑定した。 |