愛機ピコ6、ほんの少し使い勝手をよくしてみました


山歩き、ハイキングの時にザックの中にしのばせていく無線機のうち、私の場合もっとも登場頻度が高いのがミズホのピコ6である。そのコンパクトさ、軽さは50MHz用の無線機の中では群を抜いており、乾電池も内蔵出来、ピコといえば50メガ山岳移動局の御用達、定番中の定番、といったところだろう。ましては私の場合はこれが開局時の無線機。愛着は多い。

さてこのピコ6、小型さの追求ゆえに犠牲になった点も多い。操作性がその最たるもので、後は周波数のカバー範囲が狭い、などであろうか。周波数のカバー範囲を広げる、などとなるとかなりの腕と知識が必要そうで素人無線家にはとうてい手が出せない。が、知識、腕がなくても簡単でスグに出来る事もある。改造というほど大げさなものではないが・・。

1・チューニングダイアル交換 :

(回転半径を大きく・・・)

ピコのチューニングダイアルは小さくて少々使いづらい。これは山岳移動局に限った事かもしれないが、冬場の山頂などで運用する際に手袋をしたままオペレートするにはダイアルが余りに小さすぎるのだ。

これは直径の大きなダイアルにすれば解決出来るだろう。出来ればバーニアメカを入れられればFBだが、ダイアルの交換のみでも操作性はかなり改善されると思う。

96年のハムフェアでミズホのコーナーで1個100円で売っていたつまみ。売っていた状態ではつまみの先端部が三角形に尖っており回しやすかったが、実際にこれを使ってみるとちょっとした拍子にダイヤルが回ってしまい使いずらかった。結局これを切り落とし丸くしてみた。親指一本で微妙なチューニングも実現出来、使い勝手はずいぶん良くなった、と思う。ジャンクのつまみと透明のプラスチック板で工作可能。


2・三端子レギュレータを使う :

(7809を直付け)

ピコは単三乾電池6本使用だが、これを12vの小型の鉛電池などに接続しようとすると9vへの変換アダプタが必要になる。これは三端子レギュレータ(7809)を使えば容易に実現出来る。小さいのでリグへの内蔵が可能だ。

三端子は十分な放熱対策が必要で、実際にはどこか金属部へ直付けする。私は蓋の裏側を選んだ。放熱効果を上げるためにシリコングリスを三端子の裏面に塗布し蓋へ直接ネジ止め。

コンデンサ(103セラミック)をINとOUTからグランドへそれぞれつけてやればおしまい。あとはもともとの電源端子からのリードをそれぞれ三端子のINとOUTにつなげる。

移動運用の際の12Vの鉛電池だろうが固定運用での13.8vの安定化電源だろうがこれで直結可能。総費用は100円程度。



3・減電圧表示装置 :

(電池のスペースを利用)

CQ誌1995年1月号の読者の製作記事コーナーにピコの減電圧表示装置の記事があった。(JA3HKR吉田OMの寄稿記事)

山頂などからピコを乾電池で運用していると余り呼ばれなくなったりして「あれ?」と首をかしげる事もある。「さては・・」と思い乾電池を交換すると又呼ばれだしたり・・。 電池のへたりを知らせてくれる回路があればFBだろう、と思いOMの作製記事にチャレンジしてみた。

TL822という8ピンのICを使用。あとは三端子一個と若干の抵抗、VR。回路図を参考にユニバーサル基盤に組み乾電池一本分のスペースに基盤を組み込んだ。ニッカド電池を使わないので乾電池一本分のスペースがあるのだ。

反固定抵抗を回し約7.5vで回路が動作するように設定(実際にはピコのパネル面にある変調を示すLEDが7.5v以下になると消えるようになる)。これで電池のへたりを事前に察知できるようになった。(私はTL822というICが入手出来ずに同等のLM358Nを使用した。)

尚、その後他の参考書にも使えそうな記事があった。「つくるハム、実用アクセサリー」(JA1XRQ高山繁一著、CQ出版社刊)に電圧監視装置の作製記事がある。これは電圧が降下しあらかじめ設定した電圧に至ればLEDが点灯する、というもの。汎用トランジスタ2個と数個の抵抗、VRで出来る。これは簡単に、いろいろなものに応用できるのではないだろうか・・。


4・CWセミブレイクイン外部ユニット :

(完成したユニットは
 C501とほぼ同じ大きさだ。)

ピコの電信運用は少々やりずらい。PTTを握り(押し)ながらキーイングするのだが、なにせサイドトーンが出ないので果たして自分の打っている電信符号が正確かどうか確認しずらいのだ。又キーイングの際にいちいちPTTを握るのも面倒だ。

これを一気に解決する素晴らしい製作記事が、これも「つくるハム、実用アクセサリー」(JA1XRQ高山繁一著、CQ出版社刊)に載っていた。電信のセミブレイクインユニットだ。勿論小さなブザーを用いサイドトーンも出せる。

9v電池を使った外部ユニット。基盤のパターンが少々複雑なので、基盤を起こす必要がありそうだ。油性サインペンでパターンを描きエッチング。基盤さえ完成すれば8割方完成したようなもので、あとは指定通りに部品を挿入してハンダづけしていく。10数個の抵抗、コンデンサ、数個の汎用トランジスタとダイオード、それに14ピンのIC(4001C-MOS、NORゲート)が一つ。ICが1個入るだけで随分複雑そうなものに見える。実際ICの足回りはパターンが狭いので注意深くハンダづけする。ICソケットを使うのでハンダづけの際の熱によるICの破壊には気を使わずにすむのはありがたい。

ユニットが完成すればピコ内部の配線をいじる。といってもキージャックとマイクジャックの間に1本ビニル線をつけるだけだ。

これで完成。ピコとユニットをつなげキーをセット。キーを押すだけでちゃんとCW電波が発信されキーを離せばすぐに受信状態へ。受信に戻るタイムラグは自由に調整可能だ。又キーを押せば電子ブザーのおもちゃのような音がプープー鳴り、とても可愛らしい。これでキーイングの際の煩わしいPTT操作からも、サイドトーンが聞こえない、という不安さからも開放される。

(中身。9Vの角電池で動く)

大きさは丁度430のハンディ機程度。荷物は増えるがピコでの電信運用には欠かせないものでは、と感じた。尚、オリジナルの製作例に加え、ここでも三端子(7809)を内蔵させ、12vの外部鉛電池にも直結出来るようにしてみた。

尚ローカルの7N2HXE局は基盤をおこさずにユニバーサル基盤で同回路を組んだところ良好に動作した、とのことで、このほうが簡単で良いかもしれない。

さて残念ながらユニットを作ったのはいいが、最近私は全く電信に出なくなってしまった。もはや電信符号も忘れかけてしまい、”これでいいのか”という危機感と、”忘れて楽になろう”という諦めの気持ちが錯綜している。そんな訳でこのユニットもしばらく埃をかぶってシャックの隅に追いやられてしまった。再び出動する事は果たしてあるのだろうか・・・。

 * * * *

いろいろやってみたが特にチューニングつまみの変更と三端子レギュレータの内蔵は安上がりだしすぐに出来、効果も大きい。多少手を加えてみただけでピコ6にはますます愛着が湧いてきたように思える。次回の山行のザックの中にもきっとピコ6が入っていることだろう・・・。

(終り)

Copyright:: 7M3LKF,1997/11/24