スタンドマイクの製作にトライ!


(完成したスタンドマイク。こんな物でも
あると便利。音の保証は??だが)

1・スタンドマイク :

ピコ6に430のハンディ機という簡単な設備で開局した私であるが、この移動用トランシーバ達でいつまでも固定から運用するのには無理があった。ほどなく私はFT690mkII,そして更に経ってFT655のオーナーとなった。

さて両機ともマイクはハンドマイクが付属していた。通称「お握りマイク」である。Eスポ局や遠方の局を呼ぶ時など「お握りマイク」は都合が良かった。なにせ力いっぱいマイクを握り締めて大声で呼べばよい。握りやすさは大声の出しやすさにつながる。

しかしローカル局と雑談するには不向きである。夜遅くいい加減眠くなったころなど、マイクを握る手がゆるみがちで、しばし一瞬受信状態になってしまう。何分間も連続してマイクを握りしめるのは結構苦痛だ。いいスタンドマイクが欲しいものである。

憧れのアスタティックのシルバーイーグルから純正のマイク、アドニス社のマイク・・、財布の中身さえ寂しくなければ買うのは簡単だったが、これぞ自作に向いているアイテムではないだろうか・・。手持ちの自作関連の本によればエレクトレット・コンデンサ・マイク(ECM)を使えば簡単に出来そうだった。

ECMを使うのは初めてではない。ピコ6用のマイクとしてすでに使った実績はあった。極性を間違えずに接続すれば間違えなく動作する。それにECMは200円もしない。「押せばON,離せばOFF」のスイッチと「一度押せばずっとON,次に押せばOFF」になるスイッチ(オルタネート・スイッチ)を並列にしてPTTとすれば短い交信にも長話にも使える。便利そうだ。

でもどうせ作るならもう少し複雑に。そう、マイクアンプを組み込んでみよう。ぐっと深い変調もかけられそうだ。マイクアンプ自身はFCZ研究所から数百円でキットが出ているのでそのまま組み込める。また、手持ちの本(「つくるハム実用アクセサリー」高山繁一著CQ出版社)にも作り方がのっている。私は後者を選んだ。

2・部品と製作 :

製作方法は同著の通りにやる。基盤をおこすのは同著では感光基盤を使ってパターンを焼き付けるようにしていたが、簡単そうなパターンなので私は油性のマジックペンでパターンを書きエッチングした。ただのなまけものである。アースのパターンは出来るだけ広く取ったほうが良い、という聞きかじりの情報通りにする。

同著ではECMとTR1(2SC945)の間に高周波成分カットのフェライト・ビーズ(FB)を通していたがFBの型番が載っていなかった。適当に小さなFB101を選んだ。いい加減である。トランジスタ2個と若干の抵抗、コンデンサ。ゲイン調整用の可変ボリューム。肝心のマイクのスタンド部は5Dの同軸ケーブルを使うように、との事。これならばジャンク箱の片隅に切れ端が残っている。5D2Vよりも中に発泡材の入っている5DFBのほうがコシがあってふさわしいようだ。5Dにこだわる理由はケーブルとケースとの接続に用いるRCAプラグの座金のサイズと5Dがぴったりあうから。私は多少(数十円)奮発して金メッキのRCAジャックを選んだ。マイクの先端のスポンジはジャンク屋で10円だった。一番高価なものはケースだろうか、800円前後もする。部品代は全部で1500円もしない。

組みあげは特に難しくない。パターンが大きいのでハンダミスも起きにくい。私の場合はケースの加工が最も嫌だ。奇麗に仕上げるのが苦手なのだ。

オリジナルの回路から多少味をつけてみた。といっても出力を2系統にしただけ。トグルスイッチ一つ追加して出力を切り替えられるようにしただけだ。2台の無線機につなげスイッチひとつで切り替えよう、という訳だ。後はこちらの出力を無線機本体のマイクジャックのマイク、PTT、グランドの信号ピンと結ぶだけだ。各々のピンは無線機の取説に付随の回路図があればすぐに探せる。

3・使用感 :

試運転はいつも緊張する。FT655につないでみる。「ヒューッヒューッ、ハァーロ・ワントゥ」としゃべるとALCの針が振れ、パワー計も振れるので、何らかの音は出ているようだ。早速ローカル局にモニタして貰う。特に問題無く良い音、との事でほっとする。ゲイン調整VRを上げてみるとバックノイズでもALCの針が振れてしまう。音も割れて過変調気味ということで、VRは絞り切る。余りマイクアンプは必要無かったようだった。

使い始めてすぐにオルタネートスイッチの便利さがわかった。ラグチュー向きで便利だ。こんなに良いのならもっと早く作るべきだった。遠くの局を呼ぶのにも使ってみる。せっかくつけたのだからマイクゲインを少し上げたり、下げたり・・。問題無く実用に耐えているようだった。

ただ、しばらく使っていると「ハム音」が出ている、との指摘があった。なにかノイズを拾っているのか・・・。バイパスコンデンサ(100pF)を入力のRCAジャック部に、フェライト(FB101)を出力のコネクタ部に追加してみる。ついでにマイクコード(2芯のシールド線)の無線機側にパソコン用のパッチンノイズフィルタを巻き付けてみる。功を奏したのかどうか分からないがその後は余り「ハム音」のレポートをうけることはなかった。

 * * * *

さてこのマイク、制作費も安くすみ、それなりに動作しているようなので私が作ったガラクタの中では成功している例のひとつではなかろうか。夏場など幾多のパイルアップにも参加してきたので今ではある種の戦友でもある。もしかしたらあまりきれいな変調ではないのかもしれないがいかんせん自分ではモニタ出来ない。まぁクレームも今のところ特にないから「いいか」と割り切っている。これからも週末、素性の分からない変調をまきちらしている局がいればそれはきっと私であろう・・。各局、つとにご勘弁を・・・。

(私の実際の製作は「つくるハム実用アクセサリー」高山繁一著、CQ出版社」を参考にしました。)

(おしまい)

Copyright : 7M3LKF,1997/10/17