ニッケル水素電池用放電器の作成


(2.5x3cmの切手サイズの基板に組み
込んだ放電器の回路)
(放電器回路は両面テープでケースの
側面にはりつけた)

ニッケル水素(ニッカドも同様との由)電池のメモリ効果による容量低下を防ぎかつ長く使えるようにするには正しい電圧まで放電した後に正しく充電することが必要。安全な充電は安全な放電の上に成り立つ。充電器を作ってしまうとやはり放電器を作りたくなった。

充電器と同様に、使用目的はディジタルカメラに使っている単三型ニッケル水素電池2本の放電。ニッケル水素電池の望ましい放電電圧は電池1本あたり1Vまでとのことなので、そこまで安全・確実に放電出来るようにしたい。

充電器と同じく放電器も秋月電子からキットが出ている。が、参考書として使っている「秋月の電子キットを作ろう」(吉田功・高木誠利著、CQ出版社)に「無電源放電器」と題して面白そうな放電器の回路が載っていた。部品点数の少なさや放電させる電池そのものを放電器の電源として使い指定電圧まで放電したら電源が落ちる、というアイデアに大きく惹かれた。

1・回路:

回路は上述参考書をそのまま使う。残念ながら各部品の使い方、乗数の決定方法、役割などは良く分からないので何も考えないでのデッドコピーとなってしまう。が、その概念は以下のようであるだろうと理解した。

-単三型ニッケル水素電池2本の放電。1本1V、計2Vで放電を終了させる。
-そのために電圧監視用のIC(セイコー電子S8051-ANR)を使い、2Vを確実に検出させるようにする。
-DC2Vで動作するリレーを用いて、上記の電圧監視用ICが2Vを検知した時点でそのリレーを切断するようにする。この場合の電源は放電させる電池そのもので、電池の電圧降下が計2Vに達した時点でリレーが自動的に切断されるということになる。

2・製作:

(ケースに組み込んで決定)

まずは部品集め。初心者とってありがたいことにこの回路は部品点数が少ない。そんな中見つけづらい部品といえばセイコー電子の電圧監視ICS8051-ANRだろうか。何軒かパーツ屋を当たったが見つからない。ようやく秋葉原の若松通商で見つけたが、どうやら製造中止のようだ。WEBでセイコー電子のホームページを検索するとS808シリーズがリストされている。このあたりが同等品として使えるのだろう。

次にリレーだが、参考書にはDC2Vで動作するリレーは見つけづらくオムロンの3Vリレーをつかったと書かれている。自分も3Vリレーを入手する。後で調べるとこのリレーは1.6V辺りまで電圧を下げても動作した。2Vでは問題なく動作する。

他は一般的な部品ばかりだ。なお回路図上に一つPNP型トランジスタが書かれている。2SC1015と記されているが2SCはNPN型トランジスタの型番であり念のため「トランジスタ規格表」(CQ出版社刊)で調べるが2SC1065というトランジスタは載っていない。回路図からしてこれはPNP型の2SA1015の事だろうと解釈しそれを選んだ。

基板は何を使うか・・・。蛇の目基板か、生基盤をけがくか。自分の場合生基盤をけがくほうが回路図をそのまま基盤上に展開しやすいように思う。蛇の目基板の場合は板の裏面をリードで結線するのだが、部品を回路図を裏返しにして実装していくようなイメージがありやりづらい様に思う(単なる慣れの問題?)。生基盤を使おう。

回路図を見ていてわからない箇所が一つあった。この回路のキーとなる3Vリレーの使い方だ。リレーによる回路の電源ONOFFとプッシュONの押しボタンスイッチはパラレルに連動している。リレーによる電源ONOFFをどう行うのか?無い頭を使ってを色々と考える。リレーの足は電源が2本、コモン端子が2本、NO(ノーマルオープン)、NC(ノーマルクローズ)が各1本の計6本。電源端子をプッシュONの押しボタンスイッチとパラレルにつなげばいいのだろうか?いや、違う。プッシュONの押しボタンスイッチを押して回路に電源が入るのと同時にリレーのコモン端子とNCがつながるのだから、2Vを検出してオープンになるのもこの端子だ。つまりコモン端子とNCをプッシュONの押しボタンスイッチとパラレルに配線すればいいわけだ。

ここまでわかると後は基板をけがいて部品を半田付けするだけだ。既に作ってある充電器のケースの空きスペースにこの回路を入れようと思っているので2.5x3cmに生基板をカットしそこに部品を実装させる。(充電器の製作記事はこちら)

一点S8051-ANRの足の極性が不明だが上述のS808シリーズの仕様書から、同様と判断してシルク面を上に左から1番2番3番ピンと想定した。

3・動作確認・調整:

部品点数が少ないので半田付け完了まではさして時間がかからない。動作確認・調整には可変電圧電源があるとやりやすい。基板をDC2.5V付近にセットした電源につなげ押しボタンスイッチを押すとカチッとリレーが働きLEDが点滅する。後は可変電圧電源の電圧をワッチしながら電圧を下げていく。1本1V、2本で2Vが設定したい放電電圧だ。2Vまで可変電圧電源の電圧を下げたら、今度は予め中間抵抗値にセットしておいた1KΩの放電器回路の可変抵抗をどちらかに少しづつまわす。すると再びカチッと音が鳴り今度はリレーが切断される箇所があるはずだ。これにて調整終了。あとはケースに組み込んでおしまいだ。尚動作させて感じたことはLEDの輝度が低いことだった。LEDとグランドの間の抵抗値を100Ωから56Ωに変更して満足を得た。

充電器・放電器の切り替えスイッチと、放電器の電源ONのプッシュスイッチ、それにLEDを組み込んで完成。充電器・放電器の切り替えスイッチは2回路3接点のトグルスイッチを使い乾電池ホルダからの+/-線2本をそのまま同時に充電器か放電器かに切り替える様にする。写真の完成したケースでは右側のスイッチが上から「放電器・充電器切り替えスイッチ」、「充電器の電源スイッチ」、赤い押しボタンが「放電器の電源スイッチ」となっている。

使い方は簡単だ。充電したい電池をホルダに入れまずは放電器がわにトグルスイッチを入れ押しボタンを押すと放電器回路につながったLEDが光り放電が始まる。設定値の2Vまで放電したら自動的に電源は落ちるので今度は充電器側にトグルスイッチをつなげる。充電器の電源スイッチを入れると電源オンと急速充電のLEDの両方点灯する。充電器の仕様から無事マイナスデルタVを検知したら急速充電のLEDは消灯しトリクル充電に移行する。これで放・充電ともに完了となる。至って便利だと思う。

(放電器回路2001/3/24作成)

回路図

Copyright : 7M3LKF Y.Zushi 2001/03/25


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