初夏の三浦半島を半周ラン 

 (20011/5/6、神奈川県横須賀市、三浦市、三浦郡)


5月5日に今シーズンの山スキーの締めくくりとして尾瀬の至仏山に行く計画を立てたのだが前日からの雨で遭えなく撃沈。これは冴えない連休の締めだな、と腐っていれば一転して今日はすばらしい好天。寝坊した自分を悔いてサイクリングがてら山ランポイント稼ぎにと急遽三浦半島へ出かることにした。三浦半島の先端には2.5万分の1図にその名を載せる岩堂山・82mというピークがあり、立派な山ランポイントになるのだ。

自転車を分解、輪行袋に入れて京浜急行線。出発が遅くなったので三浦海岸まで一気に電車にお世話になる。YRP野比駅でおりて、軒先で自転車を組み立てる。今回の旅の相棒はフランス駐在の土産とも言えるプジョーのロード車。パリ市民の「売ります・買います」掲示板で手に入れた500mmサイズのこのロードバイクは調べたところ1985年前後のモデルのようだ。シートチューブにはサントル地方はモンリュソンのとある自転車店のシールが貼られているが、これが販売店だろう。25年の歳月を経ていきなり祖国を10000km離れ遥か日本まで連れてこられたこのバイク、これからはしっかり日本を楽しんでもらおう。

駅を出るとすぐに海岸の道となった。すばらしい好天で、しかもTシャツ一枚でちょうど良い気候。潮の香りが鼻をくすぐる。5月連休とはいえ風はもう初夏そのもので、半袖で走ると風にくすぐられるようでなんだかくすぐったい。

三浦半島の先端に近づくにつれてアップダウンが出てくる。短いながらも急な登りに差し掛かる。

(三浦半島の先端で、横浜からいくらも離れていないのに
ちょとした旅情を味わうことが出来た)

日本に帰国してから馴染みの近所の自転車店にこのプジョー君を持ち込んで、最初に行ったのがリアボスフリーの交換だった。12-24の6枚フリーが付いていたのだがこれではフロントのチェンリング49-28と組合すにせよ足弱な自分にはややきつく、13-28のフリーへ交換し、ローローで1:1を実現したかったのだ。ただ、よくある話でこのプジョー君も立派なフレンチバイクだけあってフランス独自規格を随所に採用しているのが頭痛のタネだった。もっとも困ったのがリアハブで、これがマイヨールのヘリコマチックというカセット方式の元祖のようなスプロケ取り付け方式を使っている。もちろんフランスの独自モノ規格でもう死滅しているのだが、これのおかげでなかなか一般的なスプロケットの交換が出来ない。すでにヘリコマチックへ別れを告げることは決めていたので、帰国間際にパリでこの自転車の面倒を見てもらっていたバスティーユの自転車店で13-28の未使用品の通常のフリーをひとつ購入していた。今回近所の馴染みの自転車屋で事の顛末を説明し、リアのハブごと交換してもらうことに相成った。店長氏もヘリコマチックは珍しいようで、物珍しそうにしている。古いランドナーやロードなどを置いているこの店なので126mm幅のハブを店内の棚から探すことは容易だったようで、数日後にこのプジョー君の足元にはピカピカに光る三信の当事モノのハブと13-28のボスフリーが目にまぶしかった。これで登りも楽になる、だろう。。

上り坂を目の前にしてギアを落とすと、なるほど1:1なら問題ない。店長さん、ありがとう、とつぶやきながら坂道を登る。上りきると今度はすぐに下りが待っている。三浦半島の先端はちょっとした断崖があり、狭まった地形に集落がある。ちょっとしたリアス地形と言えなくもないだろう。スケールはうんと小さいが。

登りで掻いた汗が下りで心地よく飛んでいく。風を切る音に包まれるがそこにフリーホイールのラチェット音が伴奏の通奏低音のように耳に届く。マイヨールのそれとは違う、やや大きめの音だが安心感がある。小さな漁港があり、横浜からいくらも離れていないのでちょっとした旅情を味わえる。

さて岩堂山へはどう走ろうか。持参したロードマップのコピーが15年以上も前のもののため道なりに走ると地図にない新道に導かれてしまう。岩堂山へのアクセスはどこだろう。とすぐそばに地形図を手にしたハイカーが歩いている。これ幸いと少し見せてもらおう。軌道修正して、岩堂山へ。前方に見えている小さな盛り上がりが山頂のようだ。山懐をぐるりとまわりこんで山頂へのラフロードの登り坂は自転車を手で押していく。

山頂は前面に広大なキャベツ畑。その先には2基の風力発電機。後ろには携帯電話の基地局と思しき設備がありその裏は密藪だ。踏み込んでみるが踏み跡はすぐに途絶えてとても進入不可。ここがこのピークの最高点だろう、と思うことにする。430のハンディ機で、丹沢三峰の本間の頭への移動局がいたのでコール。当局も移動したピークなので懐かしいものがある。

さぁここからは走行モード。左右にはキャベツや大根などの畑が広がっている。風力発電機の羽根が遠めにゆったりと回っている。ゆるく上り下りを経て浜風を浴びると非常に心地良いサイクリングだ。

国道に走り出てあとは逗子までこれを北上するのみ。天気も良いこともあり、サイクリストも沢山走っている。皆さん気合の入った走りで、のんびりペースの自分は追い越されるばかり。鮮やかなレーサージャージの皆さん、強い脚と軽い車体で風のようだ。鉄フレームにWレバーの古典的な車に跨ったロートルな自分はゆっくり行くしかない。自分はポタリングなのだ、と慰める。およそロードバイクとは名乗れないのんびり走行で葉山まで。マイペースながらとても快適だ。葉山マリーナで一服。葉山漁港から揚がった魚をつかっているのだろうか、小洒落たレストランも何軒かあるようだ。いつか行ってみるのも良いだろうな、と思う。

京浜急行の新逗子駅で自転車を分解。輪行袋に入れて駅そばのコンビニで350ccを仕入れてから、酩酊して京浜急行の客になる。京浜急行の車両は両端車両に車椅子スペースがありそこに輪行袋を置く事が出来る。今日の走行45km。午後から走り始めた割にはそれなりに走ったのではないか。初夏のような5月の三浦半島を満喫してなによりだった。

サイクリングと低山めぐりをマッチさせた分野に遊びのフィールドを広げられないかと思案中。山にせよサイクリングにせよその魅力に惹かれつつある。次はどこへ行こうか、と考えるのも楽しいものだ。


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