パリ西郊のポタリング2題 

 (2010年2月27日、3月20日、フランス、イル・ド・フランス地域圏


2月 - Morainvillersの丘を巡る

(緑豊かな谷を行く)

昨年4月から何とかここまで続けていた「毎月サイクリング」をなんとかあと2ヶ月続けたい。そうすると一年間、毎月走ったことになる。寒いヨーロッパの冬だが気合を入れる。

IGN発行のイルドフランスサイクリング地図から、自宅から近く楽そうなコースを選ぶ。Morainvillersはパリからノルマンディに向かう高速道路A13がA14と合するあたりの南側に位置する村でその背後には大きな丘陵がある。 ノルマンディへ向かう道すがらいつも気になっていた丘でもある。これをめぐる20km程度の短いコース。

Ecquevillyの村に車を止めてガイドのコースを走り出す。緩く上っていくと森になる。左手に直角に曲がると林が途切れて向かい風が強い。Les Alluets-le-Roiと村で進路転換。ここからは先月走ったマウルドレ川の谷に向けダウンヒルとなる。2月も終わり。風景はもう明るく冬が終わりかけていることが感じられる。今年で5年目のヨーロッパの冬だったが、5回のこれまでの経験では一番冬らしくて陰鬱なのは11月末から1月の初めにかけてではないだろうか。ただ12月はクリスマスがあり街は綺麗にライトアップされそれなりの華やかさがある。となると11月末それに1月いっぱい、このあたりがもっとも重い気がする。2月も後半になると、日もだいぶ明るくなり春近しを感じることができる。そういえば2回の冬をすごしたドイツでも2月半ばの「ローゼンモンタ-ク」を境に急速に春めいていったと覚えている。 こうして今、風を切る山道の下り坂も身を切る痛みはなく角が取れて柔らかなものだ。春近し。

Hervevileという村から直角に左手に折れてCrespieresという村に出た。ここは先月のサイクリングのアプローチで車で通った道で、道の村はずれにぽつんとあった中華料理屋を思い出した。その中華料理屋の角からこんどは再び降りてきた谷を上っていく。後ろからロードの二人組みが軽々と追い越していく。ガイドマップに乗っているコースのせいかこのルートでサイクリストに会うのは5,6組目だろうか。

緩く登り丘の上。小さな村の池に鴨が数匹泳いでいる。のどかなフランスの田舎村。といってもここはパリから車でせいぜい20分程度のエリアなのだ。ここからガイドマップのルートをなぞって再びダウンヒルとなる。下りきった山すそをトラバース気味に起点に向けて北西に走っていく。途中の村で里道に迷い地図を見ていると通りかかったフランス人が「どこへ行くの?」 と聞いてくる。こちらがフランス語ができないとわかると英語で聞きなおしてくれる。おかげで道を正しく辿る事ができた。

Morainvillersの村を抜け、緑豊かな谷をトラバースして基点のEcquevillyの村に戻った。  

(走行26km)


3月 - サンジェルマン・アン・レー西方の森と谷へ

(森にも春の気配)

さあ3月だ。今月末で5年間一緒にヨーロッパで暮らした家族が子供の学校のこともあり日本に帰ってしまう。そんなことで引越し準備や行き残した観光などで多忙きわまる3月だったがなんとか「毎月サイクリング」のために週末をあけることができた。といっても相変わらず20km程度のコースでお茶を濁す。

先月に引き続きIGNのイルドフランスのサイクリング地図のお世話になる。今日は自宅からより近い、サンジェルマン・アン・レーの南側の森と谷を走るコースを選ぶ。Noisy-Le-Roiの集落に車を停める。運動公園のまん前でグランドでサッカーの試合をしており歓声が届く。まだ冬の名残を感じさせていた先月に比べもうすっかり春だ。街はパリ郊外のベッドタウンの様子で、田舎のサイクリング、というわけには行かなさそうだ。ガイドのルートに従ってゆっくりと谷へ向かって降りていく。マウルドレ川の支流が作った規模の大きな、おおらかな谷である。

谷底まで降りる。プラタナスの並木が心地よい風景だ。やや交通量が多いので注意して走る。Chavenayという小さな村を通り過ぎると行方に大きな上り坂が横断している。今度はあれを上って起点に戻るのだ。フロントのギアをミドルに落として取り掛かる。標高差はせいぜい100mだろう。Feucherollesという街まで上ってくると上りきったことになる。振り返り走ってきた谷を遠望する。あとはこの先の森の中に進みいるだけだ。ほぼ東に向けて森の中を走り起点のNoisy-Le-Roiの集落に戻った。

今から家に戻って、また家族の引越し荷物作りをしないといけない。4月から単身住まいになるのだがそんな実感はまだわかない。が、走りながら今日はやたらと家族と過ごした5年間のヨーロッパ生活の風景が頭によぎったことを、感じていた。長いようで短かった5年間だった。  

(走行25km)


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