宮が瀬湖へ走った秋の一日 

 (2014/10/18、神奈川県厚木市、相模原市、愛甲郡)


(土山峠を越えてランドナーでゆっくりと宮が瀬湖までやってきた。
普段車で走る抜けるだけの風景も、何か新鮮だった)

週末の午後少し時間がとれたので近場の宮ヶ瀬湖を目指した。厚木町外れに駐車して土山峠から宮ヶ瀬湖にでて厚木に戻るという時計回り周回コース。

車のカーゴルームにランドナーを載せて東名を厚木へ。通っていた学校の教養課程キャンパスがこの町にあったので自分には懐かしい場所ではあるが、もう30年以上も昔の話になってしまった。とは言え北部の田園風景は今も昔もあまりかわらないようにも思える。

飯山観音のあたりに駐車するべく考えていたがコインパーキングも見当たらない。やや進むと運動公園の標識があった。広大な駐車スペースしかも無料ということない。ランドナーを組み立てて走り始める。飯山観音前から白山丘陵地帯の裾を回り込んで飯山温泉を目指す。白山は2百メートルにも満たない丘だが、家族でここにハイキングに来たのも15年ほど前だろうか。思ったよりも山深い道をじゃれつくようにかけ上っていた幼かった二人の姉妹ももう一人は成人してしまい、ハイキングなどには興味も示さなくなった。とはいえ自分は昔と変わらずにこうして野山で遊んでいる。年月の経過に自分の成長だけはおいてけぼりだ。

昼下がりの秋の木漏れ日が淡く路面に陰影をつけているそのなかをゆっくりと走っていると目の前の風景が自転車の速度にあわせてゆっくりと展開して行く。それはまるで風景を自転車ですこしづつ切り取っていくような気がする。後ろから轟音でやって来たダンプカーが現実の世界にもどしてくれた。車が去るとシーンとして静かな道を漕ぐ。側溝を流れる水音が大きくなってきたきた。道の傾斜が深くなってきたのだろう。清川村役場を過ぎると人家もまばらになってくる。

フロントインナー、24T。リアは15くらいで頑張って漕ぐ。この先に土山峠をいう峠を越えるがそれに備えて傾斜がにわかにきつくなってきた。ゆっくりと進むしかない。ハイキングでの登り道はさほど苦にならないが自転車の登り道は自分には結構辛い。ややフーフーでヘアピンを越えると小さなバス停の立つ土山峠だった。宮が瀬湖の水面がここからやや進むと木々の間から輝くように見えてきた。今日の登りは基本的にはここまでで、飯山観音の標高が50m、土山峠は300m、と僅かに250mの標高し稼いでいないのだが、いささか疲れた。

ここからはゆっくりとした下り坂。時折すれ違うサイクリストが手で挨拶をしてくれる。おぉ、この習慣が日本のサイクルツーリストの間でもあるのか。皆さんやはり街乗りではなくツーリング気分なのだろう。自分が未だ20歳代だった頃、モーターサイクルでの旅で行きかうバイク乗り同士で交わす挨拶はツーリングの風景のひとつだった。それはモーターサイクルから自転車になっても、今も変わらないのか、と嬉しくなってしまう。

鳥屋方面からの道を合わせるとこの先は「休日夕刻の中央道下りの混雑の際の抜け道」でお馴染みの道となる。宮が瀬湖は自分にとっては普段はそんな通過点にしかすぎないのだが今回はそこを目的地にして自転車の速度で走っていると、それはまるで初めて見るような風景に思える。

やや鳥屋方面に戻ると観光センターのような一群がある。ここも今までは通過するのみだったが、お土産屋の並ぶ一角へつけてみる。ここで軽く腹ごなしをする。あとは宮が瀬湖畔の道を通り半原に出て国道412号で厚木に戻るだけだ。トンネルの続く道を進んで行く。とダムに至る側道がある。普段は気にもしないのだが、自転車の速度で旅をしていると思わず立ち寄ってしまおうか、と思ってしまうのは不思議でもある。この道はこれまで数えられないほど通ったのだがダムに寄るの初めてだった。ダムは実に巨大で、なんと宮が瀬湖には遊覧船もここから発着していることを初めて知った。このあたり一帯は20年以上も昔は中津川渓谷で景勝地でもあった。それが県内最大の巨大ダム湖に変わってしまった。まだ渓谷だった頃、家内と河原でバーベキューをしたこともある。そんな地も今はこの水面の下に没してしまった。もうこの底にそんな場所があったとは自分も今となっては滅多に思い出すこともない。

昔から知っている土地、昔遊んだ土地、そしてその昔と今では随分と風景の変わってしまった土地。ゆっくりと走るサイクルツーリングだからこそ、風景の背景にある、時の空間に改めて思いをはせることが出来たような気がする。またいつか改めて自転車で走って、更に時の経過を意識することもあるのかもしれない。

トンネルの連続する湖畔の道を抜けると急な下りで国道412号線まではあっという間だった。秋の日は早くも傾きかけて、昼間はやや汗ばむほどだったのにTシャツ一枚では寒く感じるようになった。路肩に停まってウィンドブレーカを羽織る。あとは勝手知ったる道を走って車を駐車した荻野の運動公園に戻るだけだった。

(走行距離 36km。 自転車 : 東叡ランドナー)

(運動公園に駐車) (宮が瀬湖は巨大なダム湖だ。初めて
立ち寄ってみた)
(田代・勝楽寺。
立派な構えだった)
(GPSによるルート図。カシミール3Dにて
付属の20万分の1図にデータを展開)

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