一口メモ

 プロパテント時代という勇ましい言葉がをよく見掛けるようになりましたが、本当にそうなのかと首をかしげざるを得ない面もあります。少なくとも、次の2つの点は、この10年前後の間に出願人にとって非常に不利になった点です。

1.補正の制限が非常に厳しくなった。

 平成5年までは、発明の要旨を変更しない限り、出願後、明細書および図面をかなり自由に補正することができました。しかし、平成6年以後の特許出願においては、大雑把に言えば、発明の要旨を変更していなくても、出願当初に明記されていない事項(「新規事項」と言われています)を出願後に加入する補正は許されなくなりました。多分、現在の日本の特許法は、補正に対する制限が世界で一番厳しいのではないでしょうか。

 このような厳しい補正の制限に対する対策としては、出願時になるべく発明を詳しく説明し、図面も沢山出しておく必要があります(出願のコストは当然、従来より高くならざるを得ません)。ただし、出願時には思いもよらなかった補正が必要になってくることは珍しくなく、前述のような対策をしておけば万全という訳ではありません。

2.進歩性判断が非常に厳しくなった。

 少し前なら特許されていたようなものが、従来技術から容易に発明することができたという拒絶理由(進歩性がないという拒絶理由)で拒絶されてしまう特許出願が急激に増加しました。最終的に拒絶にならないまでも、泣く泣く権利範囲を非常に狭く減縮せざるを得ないケースが増えました。

 このような状況になったのは、裁判所が進歩性判断について非常に厳しい態度を取るようになり、特許庁がそれに合わせたからであると言われています。

 身も蓋もない言い方になりますが、このような状況に対する直接的に有効な対策はないでしょう。ただし、そのような現状であるということは、出願人の方も十分認識しておく必要があると思われます。
 

特許制度の現状
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