一口メモ

 PCT出願はよいことばかりのように思われている方が多いようですが、必ずしもそうではありません。

 PCT出願のメリットは、外国出願に掛かる費用の多くの部分の支出を先延ばしできることでしょう(通常のパリ条約のルートで優先権を主張して外国出願するとなると、日本出願から1年以内に出願しなければならないのに対し、PCT出願ならば、通常、日本出願から30箇月以内に国内段階に入ればよい)。

 しかし、今のところ世界で統一された特許制度というものはなく、各国の特許制度はそれぞれ異なっています。PCT制度は、特許出願過程の手続面のみを共通化したものに過ぎません。

 PCT出願に基づいて各国に出願すると、現実的には、日本出願を直訳(ミラー翻訳)して、日本とは法制もプラクティスも違う各国に出願することになりますので、不利なことが生じる虞があります。特に、米国は、日本とは非常に違った法制・プラクティスの特許制度になっていますので、不利なことが生じる虞があります。

 また、PCT出願に基づき、最終的に国内段階まで入ると、出願国数が少ない場合は、通常のパリ条約ルートで出願するより、総費用が高くなってしまいます。さらに、PCT出願は手続が複雑なため、出願が無効になってしまうという事故の確率が通常の出願の場合より高くなっているようです(最も大事な日本出願が実質的に消滅してしまったという事故も起きているようです)。

 このようなことから、例えば、PCT出願で、結局国内段階に入るのは米国1国だけというようなことは、どうかと思われます。外国出願する場合は、通常のパリ条約ルートによるか、PCT出願にするかを、それらのメリットとデメリットを天秤に掛けた上、決定すべきです。

PCT出願…よいことばかりではありません。

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