掲示板でのミステリ系ウダ話用として、古本屋でささやかな暴走の状況を書いたんですが、えらく長くなって正真正銘のウダ話になったため、こちらに格納。

ぐだぐだの長話ですが、古本屋でミステリ好きのオヤジがどのような心理で本を選び、どういった状況で暴走してしまうのかを少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

 

ウダ話の1

 なぜに39歳のオヤジは古本屋で暴走してしまったのか

 
 
2005年7月17日(日)
 
 家にて…………「なんや。ゲーム買いにいくんか。ほなお父さんが車で連れてったろ」

 ゲーム屋にて…「ゲーム買いに連れてきたったやろ。ほな、次は古本屋につきおうてな」

 古本屋にて……「ついたで。ほな、お父さんは本探しとくからしばらく時間つぶしといてな」

ということで、奥様のイヤミを聞くことなく古本屋に出向くことに何とか成功。

 
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あ〜。なんか古本屋も久しぶりやな。ちょっと嬉しいな。

せやけどまた積読たまりだしてるから、ほんまに欲しいもんだけ買うようにせな。

購入予定本のメモもちゃんと持ってきてるしな。文庫本のとこしか見ぃひんから時間もそないにかからんやろ。

 
まずは「あ」からやな。あ…あ…あ…。

青柳友子。『あなたの知らないあなたの部屋』て、やっぱり文庫ではないんかな。他の本はようけあるのに。

あちゃ。井口泰子はまた『三重波紋』だけや。

『怒りの道』『連続誘拐殺人事件』がおもろいかもしれんから欲しいねんけどなぁ。

『三重波紋』はもう持ってるちゅうねん。

う…え…お……と。今日はそんなええのないなぁ。

 
次はか……。

片岡義男もまたぎょうさんあるなぁ。

せやのに読もかな思てる『ミス・リグビーの幸福』『ムーヴィング・オン』は一つもあれへんがな。

『彼のオートバイ、彼女の島』なんて10冊以上もあんのに。ほんま腹のたつ。

でもほんますごい数やな。全国の古本屋にある赤川次郎・内田康夫・片岡義男・勝目梓・門田泰明・斎藤栄・笹沢左保・山村美砂・西村京太郎・森村誠一の本集めたら、たぶん世界征服ぐらいは出来るんちゃうか。そんだけすごいことやと思うわ。ようわからんけど。

き…く…け…こ。

小林泰三の本は見かけへんなぁ。『密室・殺人』おもろかったから他の本も読みたいんやけどなぁ。

 

さ…。

そうや。斎藤栄は『真夜中の意匠』『香港殺人旅行』『奥の細道殺人事件』を購入本としてピックアップしとったな。

こんだけあるんやから全部あるやろ。

…………………………………………………………………『奥の細道〜』しかあらへんがな。なんでや。

ひょっとして面白いからみんな手離さへんのやろか。しゃあないからこれ買うとこか。

でもちょと高いな。よそいったら200円で3作買えそうな気ぃする……。

でもよそで見つからんかったらイヤやからやっぱり買い≠ノしよ。ちょと被害妄想の気が強いんかしらワシ。

斎藤純『モナリザの微笑』。

斎藤純って確か最近のこのミスでチャリンコの話がランクインしてたなぁ。

確か文庫1冊積読やったな。冒険・ハードボイルド系作家やと思てるんやけど、これは美術ミステリか。

これは気になる。買い≠ノしよ。

 
し…す…せ…そ…た…。

あ。多島斗志之で持ってない本があるやん。しかも短編集や。見んの初めてや。何か得した気分や。

ほなこれは買い≠ニ…。

 
ち…つ…。

わ。よつやさんから勧められれてた津村秀介『保津峡殺人事件』がある〜。

まさか天山文庫で見つかるとは思えへんかった。これも買い=B

 
ち…つてとなに…目をひくもんがないなぁ…ぬねのは…。

そうや。畠中恵『しゃばけ』は文庫になってたな。ああ、でもあらへん残念。

ひ…ふ…。

福井晴敏で持ってない本は買おうっと。……1冊もおいてへん。くそ〜。やっぱり人気高いんかなぁ。

 
へ…ほ…ま…。

松本清張『状況曲線』もおもろいらしいけど上下巻かぁ。『点と線』とかどうも合えへんかったけど…。

あれ? 下巻の梗概に「一つ一つ難解なトリックが解明され…」とか書いてる。これは面白そうや。

傑作かもしれんから騙された思て買い≠ノしよ。

 
み…。

水上勉『飢餓海峡』があるなぁ。前から気にはなってるけどなぁ。

まぁ今んところ4冊だけやから買い≠ナいこか。

地味で重くてヒューマンな捜査モノも楽しめそうやし。でも地味目が続くとちょっとツライなぁ。

 
む…めもや…。

山崎洋子『薔薇の恋唄』。これ確かもってないなぁ。サスペンスもんやからこれは買い≠竄ヒ。

『恋も仕事もハードボイルド』はエッセイか。

ええわ、これも買い≠竅B山崎洋子やから期待は裏切られへん……と思っとこ。

矢崎存美『ぶたぶた』シリーズもないなぁ。

これ新刊で買うといたらよかったなぁ。迷てたんやけどなぁ。失敗したなぁ。

矢作俊彦があるなぁ。

う〜ん。気になる作家で6冊ほど文庫積んでるけど、まだ1作も読んだことないから、これ以上増やすのはためらってまうなぁ。

今回はちょっと見送ろか。気になるけどしゃぁない。

 
ゆ…。

あ。角川文庫の結城昌治がある! それも持ってない初期短編選集が2冊も!

うううん。これは迷うなぁ。このシリーズは読みたいけどこれから手に入りにくくなりそうやから買っておきたいし、んでも今日はもう結構買うてもうてるし……。

ああ。もうええわ。買い≠ノしたろ。

ほかに2冊ほど面白そうなんあるから、それも合わせて買い≠竅Aもう。

 
よ…らりるれろ…わ…。

ふうう。これで国産ものは終わりやな……と思たら、何でまたこんなとこに出版社別に集めた棚があんねん。

しゃあないなぁ。ちょっと見とこか。

あ。五十嵐貴久『リカ』があるがな。この作家は面白そうやから見つけたら買うとくことにしてたな。

ほな、これは買い=B

げ。新刊買いに迷ってて、結局様子見で買えへんかった雫井修介『白銀を踏み荒らせ』があるがな。

うわあ。これは儲けもんやわな。これも…ぐ…ぐ…うう…買い=c…やなぁ、やっぱり。

 
つあ〜。結局、国産ものだけで15冊になってもうたがな。

今の段階でこれはちょと多すぎるわなぁ。まぁ海外もの見てちょと様子見ることにしとこか。

いざとなったらいくつか棚に戻したらええし。

 
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あ。もう戻ってきたん? 

お父ちゃんまだもうちょっと見たいねん。悪いけどもうちょっと時間つぶしといてくれる? ごめんな。

 
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さて。海外ものはどんなかな〜♪  ここは海外ものは出版社別に並べてるんやな。

まずは角川文庫。

角川文庫やとトニイ・ヒラーマン『祟り』をずっと探してるんやけど、やっぱりないなぁ。

あ。探しても探しても見つからず、結局よつやさんにゲットしてもらったトニー・ケンリック『殺人はリビエラで』があるやないか。はあぁ。まさか自分で目にするとは思えへんかったな。こら幸先ええかもしれんな。

ルース・レンデルもやっぱりいくつかあるなぁ。でもこの『薔薇の殺意』ってのは持ってへんな。

レンデルは重たそうやからちょと苦手気味なんやけど、ミステリ色強いのは読んでみたいしなぁ。

う〜ん。買い≠ノしよか。

 
創元推理文庫はそんなにないなぁ。

マーク付きの本も国名シリーズやカー作品で持ってるやつばかしやし。

まぁマークのあるなしで選んでるわけやないから、どっちでもええんやけど。たぶん。

 
ああもうなんかしんどなってきたな。ざっと見とくだけにしとこ。

そしたら欲しい本も気ぃつかんと通り過ぎて、買う冊数も増えへんし。

ハヤカワ文庫だけはちょと見るようにしとこっと。

 
うん?

集英社文庫のライオネル・デヴィッドスン『チェルシー連続殺人事件』か。

この作家ってどっかで聞いたことあるなぁ。ああ。『シロへの長い道』の作者か。

『シロへの長い道』はタイトルよう聞くし、面白そうなんもう一作ぐらい書いてそうな気するから、あと1冊ぐらい読んでみるのもよさそうやな。

タイトルべたやけど、これ買い≠ノしとこ。

 
さぁ。ハヤカワ文庫や。

ふんふんふん……。ふん? ミシェル・グリゾリア『海の警部』?

こんな作者聞いたことないなぁ。『海の警部』って海洋モノかなんかかいな。

まさか「こち亀」のドルフィン刑事みたいなもんやないわな。

なになに…。ふ〜ん。フランスの作家で批評家大賞とった傑作。ほんまかいな。

せやけどまぁ、フランス作品は米英作品に比べたらそれこそほとんど読んでへんしなぁ。

苦手系かもしれんけど買い≠ノしよ。

はまるかもしれんしアカンかもしれんけど、これはもう読まな判らんもんなぁ。

 
シリル・ヘアー『法の悲劇』。

この作者、どっかで聞いたことあるような…。

最近のミステリマニア向け出版のなかに含まれてたん目にしたんかなぁどうかなぁようわからんなぁ。

ようわからんけどなんやしら気になるわぁ。「本格派の雄の大作」って紹介がえらいそそるがな。

なんや買うといたほうが良さそうな雰囲気持っとるし。ああもう。買い≠ノしたろやないか。

 
87分署シリーズもいくつかあるわ。

ちょっと前から読んでない作品をぼちぼち買っていってるけど、まさかマクベインが亡くなるとは思てへんかったなぁ。最初の構想じゃキャレラは数作で死ぬ予定やったらしいけど、マクベインの死で、逆にキャレラは永遠に死なんようになってもうた。なんか作者と作品との間の運命を感じるなぁ。

あ。途中抜けてて読んでへん『死者の夢』があるわ。これは嬉しい。絶対買い=B

 
ロビン・ハサウェイ『フェニモア先生、墓を掘る』。

すずるさんがこのフェニモア先生好きって言うてたような気ぃするな。

でも1冊積読で、それまだ読んでへんからなぁ…。本もかさばってきたし今回は止めとこ。

気ぃついたら本がえらい重たなってきたな。ちょっとこれはセーブせなあかんかも。

最後、棚にいくつか戻さなあかんやろなぁ……。

 
あっ! ああっ!!

前から探してるジャック・フィニィ『五人対賭博場』があるやんっ!!

やったやったやった。買い∞買い∞買い=`!!!

わぁ。今日、古本屋に来た甲斐があったがな。むちゃ嬉しい〜。長い間探してたもんなぁ。

それなりの値段つけてる店には置いてたやろし、高い値段だしてまでほんま読みたいと思うまで入れ込んでる作家っちゅうわけじゃないねんけど、でもやっぱり見つかったら嬉しいなぁ。

 
ああほんまに気分ええわ。気分ええから本選んで棚にもどすのもめんどくさなってきたわ。

もうええわ。こんなええ日になったんやからもう持ってるもん全部買うてまえ。まだ床抜けへんやろ。

買うたったらええねん。たまにはこんな気晴らしが必要やねん。

酒もバクチも女もせえへんし、そんなんに使てまうカネに比べたらこんなんごっつ、しれてるやん。

このぐらいの楽しみ味わうことさしてくれてもええがなほんまに。

ほかの人に比べたらワシほんまにええ連れ合いやと思うで。

これぐらいの喜び味おうてもええやんか〜……って、ワシ何でこんな必死に心の中で言い訳してんねん。

 
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あ。また戻ってきたんか?

え? もうヒマでヒマでしゃぁないって? 

そうかえらい時間経ってるもんな。

ほんまにもうちょっとで終らせるから、もうちょっとだけ時間つぶしといて。

ごめんな。ほんまこんなお父ちゃんでごめんやで。

 
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ほんま早よしたらなあいつが可哀想やがな。えらい時間かけてしもた。はよせなはよせな。

こうなったら古本屋で未読見つけたら買うことにしてる作家もいったれいったれ!!

コリン・デクスター『謎まで三マイル』も買うたれ!

ディック・フランシス『騎乗』『出走』も買うたれ買うたれ!

ジェフリー・ディーヴァー『ヘルズ・キッチン』『ブラディ・リバー・ブルース』も……えらい厚いな……買うたれ買うたれ買うたれ!

ついでにさっき見送ったロビン・ハサウェイ『フェニモア先生、墓を掘る』も買うたれや〜!!

 
……………はあはあはあ。やっと全部見終わった。

結局何冊になったんや。ひぃふぅみぃ……ゅうろく、にじゅうなな。

げ! 27冊!!

あああ。

やってもぅたやってもぅた、またほんまにやってもぅたああぁぁ……………………。

 
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ええわ。買お。どうにかなる。どうにかなるって。

あ。戻ってきたか。ごめんごめん。もう終った。さぁレジ行ってから帰ろか。

お母ちゃんがたぶん待ちくたびれてるわ。早よ帰ってメシ喰おな。

(外にでて…)

ちょっとこっちおいで。アイス買うたろ。長いこと待っててくれたお礼や。

車んなかで一緒に食べて帰ろか。

でもお母ちゃんに食べ終わった後の棒見つけられたらあかんから、家に入る前にほかさなあかんで。

アイス食べたんは二人だけの秘密にしとこな。

ほな帰ろか。

 
 
 

 

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