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(2011年12月~)
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ハヤカワ文庫SFの歴史 History of Hayakawa Bunko SF


Ⅸ期(一〇年八月~一五年七月)1770番~2021番まで



 前期からの再刊ラッシュは依然として続いている。一一年からアメリカでテレビドラマ化されたことを受け、マーティンの《氷と炎の歌》1・2巻が一二年に再刊され、続けて3・4巻がハードカバー版より一気に再刊された。ドラマの題名は言わずと知れた《ゲーム・オブ・スローンズ》であり、この後絶大な人気を誇るドラマへと成長していく。ブラッドベリ、ディックの諸作も多く再刊され、さらに、一五年四月からは、《ハヤカワ文庫補完計画》と銘打たれた再刊を中心とした企画が始まり、本文庫からは七月までに十点が刊行された。青背再刊率は35%で、《ローダン》を除いて三冊に一冊は再刊だったことになる。刊行点数も多くなり、前期を抜いて史上2番目となった。要因としては、再刊ラッシュの他に《ローダン》が月2点刊となり五年で一二〇点もの点数が刊行されるようになったことと、ミリタリーSFを中心としたシリーズものが多数刊行されたことが挙げられるだろう。
 一一年末には早川書房のSF出版に大きな変化があった。七八年から長く続いた《海外SFノヴェルズ》がクラーク&バクスターの『火星の挽歌』で終了し、代わって《ハヤカワ・SF・シリーズ》のフォーマットを踏襲した《新☆ハヤカワ・SF・シリーズ》が発刊したのだ。本格的な作品や話題作はこちらから刊行されることになり、本文庫オリジナルは、よりエンターテインメント色を強めた、軽めの作品が主体となっていく。一三年からは早くもこのシリーズからの再刊が始まり、再刊点数の増加に拍車をかけた。
 刊行点数順に見ると、一位は十一点のディック。オリジナル短篇集六点に、『ヴァリス』二部作の新訳、サンリオ、創元からの再刊が加わった結果である。二位は六点のブラッドベリ。『華氏451度』の新訳も含め、NV文庫から出ていた作品がすべて本文庫より再刊された。四点がカードとウィリスの二人。カードは、一三年の映画化に合わせた『エンダーのゲーム』新訳など代表作三点が再刊され、『道を視る者』が新たに刊行された。ウィリスはオリジナル短篇集2点に加え、『航路』☆『ブラックアウト』が再刊された。
 この時期の注目すべき新人として、チャイナ・ミエヴィル、パオロ・バチガルピ、アンディ・ウィアーの三人が挙げられる(すべて七二年生まれ)。ミエヴィルは、《バス・ラグ》シリーズ第一作『ペルディード・ストリート・ステーション』☆が再刊された他、ユニークな設定のSFミステリ『都市と都市』☆が刊行され、高い評価を得た。バチガルピは、『ねじまき少女』★『シップブレイカー』など石油資源枯渇後の世界を独自の視点で描いた作品が話題を呼んだ。ウィアーは、火星に生き残った宇宙飛行士のサバイバルを描いた『火星の人』★☆が刊行された。一五年に映画化されたこともあり(日本では《オデッセイ》の題で公開)、最終的には二十万部を売る異例のヒット作となった。
 他の主要作としては、見逃せない日本版オリジナル短篇集として、イーガン『プランク・ダイヴ』☆、ラファティ『昔には帰れない』、ヴァーリイ『逆光の夏』が挙げられる。イーガンは、仮想現実を扱った長篇『ゼンテギ』も刊行された。
 また、一五年四月には本文庫は2000番に達した。1000番までに二十三年、そこから2000番までに二十二年かかったことになる。四十五年に渡り、常に安定して年五十冊程度の作品を刊行してきたことには感嘆を禁じ得ない。記念すべき2000番作品にはレムの新訳版『ソラリス』が選ばれた。レムは、一五年の映画化に合わせて改訳版『泰平ヨンの未来学会議』も再刊されている。
 アンソロジーは、一〇年にSFマガジン五〇周年記念として、時間SF傑作選『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』、ポストヒューマンSF傑作選『スティーヴ・フィーヴァー』が刊行され(宇宙SF傑作選は前期の刊行)、一四年に、700号記念として、『SFマガジン700』国内篇と海外篇が刊行された。
 シリーズものは、ティドハー《ブックマン秘史》が異彩を放っている他は、スコルジー《老人と宇宙》、キャンベル《彷徨える艦隊》、シェパード《海軍士官クリス・ロングナイフ》、ブートナー《孤児たちの軍隊》、リンゴー《ポスリーン・ウォー》などミリタリーSFが相変わらず隆盛を極めている。《ローダン》は、刊行ペースが速まったため一一年に四〇〇巻、一五年に五〇〇巻を達成した。
(文中の★印は星雲賞受賞作、☆印は「SFが読みたい!」ベストSF第1位を示す)
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