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ハヤカワ文庫SFの歴史 History of Hayakawa Bunko SF


Ⅷ期(〇五年八月~一〇年七月)1525番~1769番まで



 〇五年から始まった本文庫からの再刊路線《名作セレクション》は、〇七年六月の『スロー・バード』まで全二十五点を刊行。他にも、映画化原作としてフィニイ『盗まれた街』とディックの短編集『ゴールデン・マン』が、怒濤のような勢いでムアコックの全作品が、そしてオールタイム・ベストの定番『虎よ、虎よ!』や『夏への扉』が、続々と再刊されている。これにスティーヴンスン『ダイヤモンド・エイジ』やウィリス『犬は勘定に入れません』など《海外SFノヴェルズ》からの再刊、ギブスン&スターリング『ディファレンス・エンジン』、ホールドマン『ヘミングウェイごっこ』など他社からの再刊を加えると再刊率は45%となり、Ⅱ期以来の多さであった。全体の刊行点数もⅣ期に次いで、史上二番目に多い。
 そんな傾向を反映してか、刊行点数順では、一位は十点でクラークが復活。再刊四点に加え、〇八年の没後には、自伝『楽園の日々』を始め六点が一挙に刊行されている。二位は五点のヴォネガット。こちらも〇七年の没後に代表作『タイタンの妖女』を含む五点が再刊された。同じく五点のクレスは、『プロバビリティ・ムーン』に始まる三部作及び短編集二冊(『ベガーズ・イン・スペイン』『アードマン連続体』)が刊行された。
 この時期の新たな潮流として、イギリスの若手作家を中心とした〈ニュー・スペース・オペラ〉の台頭が挙げられる。〇五年十月刊のレナルズ『啓示空間』(原著〇〇年)は、千頁を超える分厚さと背にまで入り込んだイラスト(本文庫では初、ファンの間では「柄背」と呼ばれている。ちなみに本稿では「柄背」「黒背」など「白背」以外はすべて「青背」としてカウントした)で話題を呼んだが、内容はまさに新感覚のスペース・オペラと呼ぶにふさわしいもの。半年後に刊行されたストロス『シンギュラリティ・スカイ』とともに、新時代の幕開けを飾った。
 他の主要作を挙げておくと、イーガン『ディアスポラ』★☆『ひとりっ子』、スコルジー『老人と宇宙(そら)』およびその続編(三作目『最後の星戦』が★)、スワンウィック『グリュフォンの卵』、ティプトリー『輝くもの天より墜ち』★、再刊されたマーティン《氷と炎の歌》あたりか。再刊とシリーズものに押されて、文庫オリジナルは点数的にちょっと寂しい感じではある。
 シリーズものでは、白背は〇七年の『銀河おさわがせ執事』以降は《ローダン》しか刊行されていない。あれだけ出ていた《宇宙大作戦》関連も、〇六年に斉藤伯好が亡くなった後は途絶えてしまった。《ローダン》自体も一〇年一月から、表紙を依光隆から工藤稜に交代、口絵を無くして月二回刊と新体制に移行した。誰も気づいていないとは思うが、結果として、三十九年間続いてきた本文庫の口絵の歴史はひっそりとその幕を閉じたのである(合掌)。青背のシリーズは、ウェーバー《セーフホールド戦史》、キャンベル《彷徨える艦隊》、シェパード《海軍士官ロングナイフ》、ベア《サイボーグ士官ジョニー・ケイシー》、ムーン《若き女船長カイの挑戦》、リンゴー《ポスリーン・ウォー》とますますミリタリーSFが勢いづいている。ウルフ《新しい太陽の書》は人気漫画家小畑健の表紙で再刊され、未刊であった最終巻が刊行された。
 〇九年二月、1700番『タイタンの妖女』刊行を機に、《ローダン》以外の本文庫はトールサイズへと移行する。青背、名作セレクション、トールサイズと本文庫の節目には常にヴォネガットが登場するのが不思議と言えば不思議である。
(文中の★印は星雲賞受賞作、☆印は「SFが読みたい!」ベストSF第1位を示す)
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