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ハヤカワ文庫SFの歴史 History of Hayakawa Bunko SF


Ⅲ期(八〇年八月~八五年七月)401番~622番まで



 Ⅱ期の本文庫がハヤカワSFシリーズ(=HSFS)からの再刊を主としていたのに対して、この時期の本文庫は、再刊に頼らないオリジナル叢書としての存在意義を増していった。青背再刊率はⅡ期に比べて半減している。また、《海外SFノヴェルズ》が八三年七月に一期五十冊の刊行を終え、リニューアル後は巨匠の新作を年に数冊刊行するだけとペースダウンしたこともあり、八四年以降、早川書房の主なSF供給源は本文庫のみとなっていく。
 刊行点数が多い作家(シリーズものを除き上下等は一点とカウントして四点以上)を順に挙げると、まず六点のアシモフ。ハインラインとクラークの代表作がⅡ期にほぼ再刊を終えていたのに対して、アシモフはここでようやく『われはロボット』『はだかの太陽』などの代表作が一気に再刊された。HSFSでは一巻のみで止まっていた《銀河帝国興亡史》も本文庫からは新訳で全三巻がこの時期に刊行されている。
 同じく六点のゼラズニイは、この時期の本文庫を代表する作家の一人だ。長編五点に短編集一点とこの時期に集中して六〇~七〇年代の作品が紹介され、スタイリッシュな作風で多くのファンを獲得した。特に『ドリームマスター』『砂のなかの扉』あたりは世評も高く、ぜひ再刊を望みたい。七八年に一冊刊行されたきりだった《アンバー》シリーズも残り四冊が八〇・八一年にまとめて刊行されている。
 五点の作家はハインライン、クラーク、シマックと大御所が並ぶ。ハインライン『愛に時間を』クラーク『地球帝国』など、八四年からは《海外SFノヴェルズ》一期からの再刊も始まった。この中ではシマックのみ新訳が二点刊行されているのが目を引く程度。四点のレムは、『泰平ヨンの回想記』『ロボット物語』『泰平ヨンの現場検証』など、この時期に深見弾らによる精力的な紹介がなされた。
 話題を呼んだ作品として、ボイス『キャッチワールド』、フォワード『竜の卵』★、ベイリー『カエアンの聖衣』★『禅〈ゼン・ガン〉銃』★、スチャリトクル『スターシップと俳句』などが挙げられる。後に活躍することになる作家が二人、カードは連作長編『ソングマスター』で、マーティンは短編集『サンドキングス』で、それぞれ本文庫デビューを果たした。中堅どころの新訳としては、アンダースン『大魔王作戦』『焦熱期』、シルヴァーバーグ『ヴァレンタイン卿の城』などがあり、非英語圏の作品として、ストルガツキー兄弟『ストーカー』、カルヴィーノ『柔かい月』(再刊)が刊行された。ハードSFとしては、クレメント『重力の使命』、ニーヴン『リングワールド』★(どちらも再刊)、シェフィールド『星ぼしに架ける橋』などがある。
 アンソロジーは、六〇年代末の記念碑的アンソロジー、エリスン編『危険なヴィジョン』(1巻のみの刊行に止まったのが残念)、エルダー編『ラブメイカー』、欧州SFを集めたロッテンシュタイナー編『異邦からの眺め』、《SFマガジン・ベスト》第2巻『空は船でいっぱい』と四点が刊行された。
 シリーズものが質量ともに充実していたのもⅢ期の特色である。《キャプテン・フューチャー》は二十巻で完結を果たし、《ローダン》は556番『アンドロメダへの道』で百巻を達成。《デューン》は映画化(八四年)に合わせて旧作を映画版の表紙・挿絵に改め、新作二点(『砂漠の神皇帝』『砂漠の異端者』)を刊行した。特筆すべきは、待望久しきムアコックのヒロイック・ファンタジイである。《紅衣の公子コルム》を皮切りに《エレコーゼ・サーガ》《エルリック・サーガ》★とまさに破竹の勢いで一挙に十四冊が刊行された。天野嘉孝の流麗な表紙・挿絵も忘れ難い。他の白背シリーズには、セイバーヘーゲン《東の帝国》、ラインスター《メドシップ》などがある。ストールマン《野獣の書》、メイ《エグザイル・サーガ》、チェリイ《色褪せた太陽》、マキャフリイ《パーンの竜騎士》など青背のシリーズも続々と刊行された。スミス《人類補完機構》が短編集『鼠と竜のゲーム』で開幕したことも忘れてはなるまい。
(文中の★印は星雲賞受賞作を示す)
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