Top |>> 図書館 > 図書館に関するおすすめ本

図書館に関するおすすめ本

「図書館空間のデザイン デジタル時代の知の蓄積 益子一彦 丸善株式会社」

以前紹介した『図書館/建築/開架/書架』 の最新作と言ったらよいか。震災直後の出版とあって、3.11後急遽付け加えた最終の10章を「被災」としてあう。地震によって自分が設計した図書館がどのように被害が受けたか、調査の記録である。著者は主に茨城県内の図書館を手がけている。水戸東部、守谷中央、中央町立、結城市民情報センター、潮来市立。地震の研究者よりよっぽど将来に役立つ調査をしているのではないだろうか。

建築についての考えは哲学的で分かりにくかったが、図書館については必要な実務機能を研究しており、この事務所に依頼すれば実用的な図書館が出来上がるだろうと期待させるものがある。

図書館デザインの変遷が興味深かった。図書館が閉架→開架へと変化し、利用者の行動も貸出型→滞在型へと変化しているのだから、図書館のデザインも変化してしかるべきということだ。現在の図書館建築が日野市立図書館時代から進化していないのではないかと危惧している。エントランス、ロビー、開架フロアの役割や広さも変化してきた。自身の設計した図書館を時系列に並べて紹介してあるのも、さすが古くから図書館を手がけた事務所だ。

これから考えると、私の原点である気仙沼市立図書館は、ロビーを設けて飲食や会話ができるスペースを作るなど、当時の誰も考えつかないような最先端であったはずだ。昨年行ってみたがロビーにまで書架が置かれ、ゆとりは感じられなくなっていて残念なことだった。思い出して見れば、館内にインターネット端末などはなく、あるところで時間が止まってしまったんだなと思う。2階に生涯学習室があるようだったので、そこを見ればまた違った感想があったかもしれない。

図書館空間のデザインでは「一般書および児童書の分類とその比率(TRCモデル選書リスト)」が掲載されており、ここでも開架フロアにはただ書棚を置けばいいという、ありきたりの考えではないところが伺える。バーチャルな資料が増えればこそ、それを現実のものとする場所が必要だという。言ってみれば閉架式の資料が増え、閉架式の時代のように学習席の必要度が増すということだと。なるほど。目からウロコであった。