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図書館に関するおすすめ本

「図書館/建築/開架/書架 益子一彦 丸善株式会社」

著者は三上建築事務所でいくつか図書館を設計した。守谷中央、下館など評判の図書館もある。下館市立図書館での実践例が載っているというので期待したのだが、例自体は業界用語が多く楽しめるものではなかった。実際に見学に行く下準備として読むには参考になるだろう。

用意された土地にどのように、どのような形の館を配置するか、内装(家具)をどうするかなどは哲学的とも思えるし、建築家とは芸術家と紙一重かとも思える。もちろん建物自体芸術的でもなんでも使いやすければいいのである。問題は「使いやすい」のがどんな建物なのか、私達にはわからないということだ。使ってみなければわからないのなら、いろいろな所をみてあるいて参考にするとか、あとは建築家にまかせるしかないのだろうか。

著者は「何々が欲しい」ではなく、そこで「何がしたい」という注文を望みたいと言っている(p23)。「図書館をどうしていくかという図書館員のビジョンがないところに、本来建築などない」とも。「したいこと」をできるようにデザインしていくのは建築家の仕事ならば、良い建築家を選ぶのが一番大切な仕事ではないか。いやその前に「何がしたい」か明確なビジョンを持った図書館員が必要で、さらに良い建築家を選ぶ権限を発注者が持っていなければいけないということだ。

考えるものがあったのは、実は竹内氏の序文だった。「従来、図書館の建築(公共事業)の発注者は行政だとされ、設計者と行政との話し合いだけで図書館ができてしまっていた」。現在でも、多くの場合そうではないのか。氏が言うように「だれが経費を出し、だれのために作るのかを考えれば、納税者である住民が本来の建築主である」のに。

利用者が図書館の建設にかかわるにはどうすればよいのだろう。前述したように「使いやすい」図書館「良い」図書館がどんなものかさえ具体化できないのであれば、ほとんど不可能である。万が一話し合いに参加できたとしても何の提案もできない。「良い」図書館がどんなものかとことん考えてみなければ。建築家に丸投げして、出来上がったものに不満を述べるだけでは旧来と変わらないのだから。

著者は「公共図書館は利用する利用者とそこに住む住民たちのものだが、図書館員の存在があってはじめて利用者は図書館を利用できる。図書館は市民のものであっても、図書館建築の主権は図書館員にある。・・・そうした前提に立てば、図書館建築を創る際にはその場に積極的に関与して責任ある言動をすることは、図書館員の権利であるばかりでなく、図書館員の重要な義務」としている(p22)。 今ある図書館に満足できないなら、図書館員にがんばってもらうしかないということか。新しい図書館を創るにしても、今と同じものがもう一つ増えるだけではしょうがない。

では、図書館員にかんばってもらうにはどうしたらいいのだろう?他人を変えるというのは至難の技で、まず不可能である。自分から変わってみるのが定石だ。かと言って、どう変わったら良いのか悩みは尽きない。