市民自主企画講座 「子どもの本と 子どもの現在」
今、子どもの文学に何ができるか
─情報化社会の中で─
私たちはひとりでいることをしばしばマイナスだと考えるし、まして体がわるかったりするとますますマイナスだと考えだします。でも、『もりのなか』「鹿踊りのはじまり」を読む時、私たちより先に生きたひとたちはなんとゆたかな世界を用意してくれたことかと思います。ひとりでいることはけっしてマイナスばかりではありませんよ、と言ってくれている。
『幸福の書き方』より
…そうしなければ「アニーの家の幽霊になってしまう。」そんな危機感がヒーローにはあったのです。自分を“透明な存在”と書いた神戸のあのA少年にもひょっとしたら似たような恐怖があったのではないか。初校、再校と校正刷を読み返し、翻訳の文章をチェックしながら、私はたびたび、あの少年のこと、そして彼と同じ時代の雰囲気を生きている若い人たちのことを思っていました。
『ヒーローのふたつの世界』あとがきより
…学生には内緒にしてあったから、香り高いハーブの鉢をかかえて突然教室にあらわれた三人に学生たちはびっくりし、そのすばらしいストーリー・テリングにすっかり魅了されて、教室は静まりかえった。
『学生が輝くとき』「主婦三人教室にあらわれる」より
もし私たちがしずかにして、もっとよく耳をすませば、こういう声は本当に人間にも聞こえるのかもしれません。だってうんと幼い人たちが木々や草花とおはなししているのを見かけたことはあるでしょう。
そんな声は聞こえやしない、ですって?そうかもしれないし、そうでないかもしれない。それは私にもわかりません。でも、このおはなしを読んでいると、そんなことも含めたさまざまなふしぎをつい考えてしまいます。
『紙人形のぼうけん』あとがきより