◆ トイレの悩み
◆ トイレの悩み
ほとんどの頸損は浣腸をしないと排便ができないようです。それも年齢ととも
に自律的な排泄力が弱まってきて、イチジク浣腸３０ccに換算して５本も６本も
使わなければならなくなります。私もそんな苦しい状態ですが、下剤や摘便は副
作用があるので避けています。
● 排便の困難・・・四肢マヒ者の直腸には所々に袋ができます。とくに、下
腹の結腸部あたりです。そこに便を貯め込み、便の進行が妨げられます。そこへ
腸の動きを高める種類の下剤をのむと、袋が腫れて腸閉塞の状態に陥ります。整
腸剤などで袋を縮小して行く方が楽なやり方です。だから、下剤が効き目がある
ときは腸が健全な証拠です。
私たちが旅行するとき、例えばアメリカやフィリピンなどの外国でも自分なり
の排便のやり方を変えるわけには行きません。現地のヘルパーも技術を持ってい
ますから、排便のやり方をキチンと説明する必要があります。外国語が苦手な
ら、写真入りの説明書をあらかじめ用意して出かけると不安はありません。
● 排尿の困難・・・直腸に便やガスが溜まると、尿道を圧迫して排尿困難に
なります。反対に、排尿困難によって膀胱が大きく張ってくると、便やガスの排
泄を邪魔するので、苦しい悪循環が起きます。これは直腸と尿道がクロスする場
所があるからです。この場合、導尿によって排尿を先にすませば、圧迫が取れて
排便もスムーズにできます。
ペニスの萎縮に悩む人もあります。突然の萎縮で排尿コンドームが抜け落ち、失
禁につながるとなれば、おちおち車イスにも乗れません。これは膀胱の出口付近
に浮腫ができていて、排尿の時に充血して、その刺激で出口周囲の筋肉が反自律
的に収縮し、排尿が困難になってきます。そのとき、ペニスは貧血の状態になる
ので、異常に小さくなります。これを防ぐために、ペニスにシリコンを充填する
手術もあうようです。
● 旅行の途中で・・・ インドに行ったとき、いざ浣腸！というときに、
チャンドラ君というヘルパーが６人くらいの男をゾロゾロと室内に招き入れたの
で、「どうしたっ？」と驚いた私は大声で尋ねました。彼が言うには、カースト
制度のもとではクスリ（浣腸液のこと）を入れる人、腹部をさする人、尻を拭う
人、便を捨てる人、体を清拭する人、服を着せる人、みんな階級が違うと言うん
です。「どうだい、短時間によくこれだけの要員を集めてきただろう！」と自慢
げに鼻高々です。
「これでは出る物も出ないではないか、おまえがやれっ！」と私はチャンドラに
怒鳴りました。以後、彼は厳重に窓のカーテンを閉め切って、人に見られないよ
うにして、“泣く泣く友情のためにカースト破り”を１ヶ月間やってくれまし
た。
（ 終わり）
（1997年11月24日、『ワーキング・クォーズ』編集部へ電子メールで到着）
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