麸澤孝さん・『ワーキング・クォーズ』執筆者
重度四肢麻痺者の療護施設での生活や工夫

Mr. Takashi Fuzawa of "WORKING QUADS" writer

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麸澤孝さん:『ワーキング・クォーズ』執筆者:埼玉県
[写真説明:麸澤孝さん。第10回リハ工学カンファレンス大阪、1995年8月]
[ Photo : Mr. Takashi Fuzawa, in Osaka in Augtust 1995 ]

重度四肢麻痺者の療護施設での生活や工夫
(一般商品の福祉機器としての活用)

A Life and Devices in a Nursing Home
for People with Severe Physical Disabilities
( Utilzing General Products as the Devices for Independent Living )


埼玉県カーサ・ミナノ 麸澤 孝
Saitama-ken Takashi Fuzawa


[著者紹介]ふざわ たかし:1965年8月26日、生まれ。28歳。男性。1983年12月30日 交通事故(自動車)で受傷。C4頚髄損傷者。群馬馬県医師会 沢渡温泉病院。1992年4月より身体障害者療護施設カーサ・ミナノでの入居生活。イマセン電動リクライニング車いす(EMC-37BC)。スイング・コントロールボックス、呼気センサー速度設定。PC9801FAシステム、100MBハードディスク。埼玉県秩父郡在住。


[ Writer's Profile ]
Takashi Fuzawa : Born on
August 26, 1965. Male. Aquired his C4 quadriplegia due to a traffic accident on
December 30, 1983. Entered Sawatari Onsen Hospital. Left the hospital to nursing
home "CASA MINANO" in April 1992. Using NEC "PC9801FA" system ( CPU80486SX, 100MB
harddiskdrive. Lives in Chichibu-gun Saitama-ken.


 私は、いわゆるC4 と言われる頚髄損傷者です。この紙面では、初めてですが頚損連絡会やその他の機関誌に何度か載せていただき、ご存知の方もおられるかと思います。昨年4月より身体障害者療護施設カーサ・ミナノでの入居生活がはじまり今回、生産活動としての活動とは言えないかも知れませんが、私を取りまく入居者としての生活、電動車イス、福祉機器、パソコンについて書いてみたいと思います。


  まず、カーサ・ミナノという身体障害者療護施設ですが、  施設と言うと暗く・汚く・管理されている(施設の3k)と思われがちですが、個室と言う空間で、ベットやパソコンを置いても十分電動車イスで旋回でき、外出もある程度自由で、職員も若く、とても明るい雰囲気の施設です。 皆さんのように、住宅改造をして電動リフターやECSなど最新式の福祉機器をそろえ、在宅生活へ戻る事が一番の社会復帰であり、リハビリテーションのゴールと言われています。しかし私は家には帰らず、施設の中で様々な障害者と地域の福祉活動や、地元ボランティア育成などに力を注ごうと考え施設入居を決めました。もちろん自立生活をあきらめているのではなく、必ず実現できるよう努力していきたいと思っています。


 療護施設での日常生活で、私のような四肢麻痺者にとって電動車イスは無くてはならない物となっています。施設内でも数人が電動車イスに乗っていますが、私の場合朝、目がさめるとナースコールで職員を呼び、電動車イスに乗せてもらい洗面や食事に行くわけで、障害を持っていない人がベットから立ち上がり一日の生活をはじめるのと同じように、私も電動車イスに乗っています。現在はイマセン(EMC-37BC)で、九州の向坊さんから安く譲っていただきました。私のような頚損ですと、起立性低血圧や尻の除圧などの関係でリクライニングは欠かせません。この電動車イスはコントロールボックスのスイングやリクライニング、速度設定が呼気センサーでコントロール出来ますので、乗せてもらえば、降りるまで人的介助はいりません。電動車イスの工夫としては、常にマウススティックをいつでも届くコントロールボックスに付けて、テレビ・ビデオのカードリモコン(各メーカー共通、電器店にある)を固定し部屋のどこにいても操作が出来るようにしています。その他、時計、鏡、缶ジュース立てなどやウエストバックをアームレストに取付け、小銭入れ、テレカ、ストロー、アドレス帳をなどを持ち歩いています。


写真説明:麸澤孝さんの部屋。カーサ・ミナノ。
Photo : The room of Mr. Takashi Fuzawa. Casa Minaano.


 私とパソコンの出会いは約5年前で、ワープロに限界を感じ、グラフィックやデータベース、通信をやってみたかったのがきっかけです。 パソコンをはじめるにあたり(ワープロもそうですが)私達のような上肢に障害がある者にとって一番の問題が、2ヶ所同時にキーを押す場合とディスクの入れ替えです。今はハードディスクを購入しゲームやバックアップの時以外、ほとんど入れ替えは無くなりました。私は特にKBマウスなどは使ってなく長めのマウススティックでキーを直接押しています。ワープロ時代はキーの上に重りを乗せたり、キーを特別に改造してしていましたが、パソコンの場合、同時に押すキーが多いため、改造は無理のようでした。しかし知り合いのOTから、SHIFT.SYS という機能を教わり大変便利に使っています。このSHIFT.SYS は MS-DOSVer2.1以上で動き CONFIG.SYS に DEVICE=SHIFT.SYS と書き込み SHIFT.SYS をルートに置くだけでSHIFT・CTRL・GRPHを押すと電子音と共にロックがきき、続いてキーを押すと解除されます。パソコン通信のフリーソフトですので簡単に手には入りますし、ソフトに入ってしまうのでノートパソコンもOKです。私はハードディスクを使ってますが、メニューが立ち上がるときに組み込んでしまうので、一太郎や花子などの、どのソフトでも SHIFT.SYS がきくようにしています。そのほか特別な事はしていませんが、電源、リセット、プリンターのボタンなどマウススティックで操作できる位置に置いたり、ダブルピンのシートフィーダーを使い、2種類の紙の大きさを使い分けています。今はトラックボールを使っていますが、マウススティックで使いにくいのが唯一の難点です。


本体     PC−9801FA 2 メモリ1.6K
ディスプレー PC−KD1511
プリンター PC−PR201/63 ダブルピンシートフィーダ
HDD    DOODA A−100 100MB
モデム AIWA PV-A24A5 MNP5
3.5インチFDD   αデータ AD-F35FA
主なソフト 一太郎Ver.4 花子Ver.2 アイリス CCT98V FD   


PC−VAN ID:MHM12513


 現在は、PC-VAN だけですが、NIFTY-Serve などいろいろ始めようと検討中です。 今は、まだまだ説明書と格闘中ですが、パソコン通信をしている方がいましたら、地元草の根ネットや障害者関係の情報などお待ちしています。


写真説明:麸澤孝さん(中央)。山下朱美さん(右)。編集者。第8回リハ工学
      カンファレンス・所沢市・国立身体障害者リハビリテーションセンター。
Photo : Mr. Takashi Fuzawa ( center ). Ms. Akemi Yamashita ( right ). Editor.


 そのほか居室での工夫としては、テレビ・ビデオ・電話などの電器製品に、マウススティックで使いやすい物を選んでいます。テレビやビデオはリモコンで出来る操作のなるべく多い物を選びました。電話の場合は、受話器が持てないという事が一番の障害ですが、私の電話は、受話器は使わず通話できる「手ぶらコード留守」を使っています。この電話はコードレスで子機が一台ついており、親機を壁につけ電動車イス乗車中に、子機をベッドサイドに置き、24時間電話を使えるようにしています。カーサ・ミナノでは、各部屋に電話用ジャックがついており普通に外と通話できるほか、施設内での内線としても使え、職員室や事務室などと直接話したり、施設にかっかて来た電話を自分の部屋に回してもらったりも出来ます。自分の電話を持つ事で時間を気にせず話せますし、プライバシーの面でも大変助かっています。

 そのほか簡単な事ですが、ミニコンポのCDの入れ替えの手間を少なくするため、6枚一度には入りリモコンでコントロール出来る物を選びました。部屋の入り口の吊り下げ式スライドドア(病院にあるような)を電動車イスのフットの部分で開け閉め出来るように改造しました。

 以前の療護施設であれば、起床や消灯、外出などに制限があったり、自分で出来る事も職員がやってしまったりもあったそうですが、カーサ・ミナノでは“自分の意志で自分でする”ということで、私自身大変満足している毎日です。


写真説明:麸澤孝さん。
Photo : Mr. Takashi Fuzawa.


 施設内でパソコンなどの機器を使い、就労としての利益をえるような生産活動的な事は出来ませんが、パソコンや電話などで外部とのコミュニケーションをとったり、障害者団体への参加の様な活動は十分でき、在宅で活動している皆さんとも変わり無く活動できると思っています。

 療護施設での生活は、すこしでも自分で出来る事を増やし、いかに人的な介助を少なくし、職員の負担を減らすかだと思います。そのため天井走行式のリフターやECSなでを使えば良いのですが、なかなかそれも難しく、今ある残存機能でいかに周辺機器を活用していくのかが、療護施設でのQOLだと思います。


  ご意見・ご助言などありましたらおよせ下さい。


〒369-16
埼玉県秩父郡皆野町国神421
カーサ・ミナノ
麸澤 孝
TEL 0494-62-5420



麸澤孝さん:『ワーキング・クォーズ』執筆者:埼玉県


[写真説明:麸澤孝さん。第10回リハ工学カンファレンス大阪、1995年8月]
[ Photo : Mr. Takashi Fuzawa, in Osaka in Augtust 1995 ]

麸澤孝さん:『ワーキング・クォーズ』執筆者:埼玉県


[写真説明:麸澤孝さん。第10回リハ工学カンファレンス大阪、1995年8月]
[ Photo : Mr. Takashi Fuzawa, in Osaka in Augtust 1995 ]

麸澤孝さん:『ワーキング・クォーズ』執筆者:埼玉県


[写真説明:麸澤孝さん。第10回リハ工学カンファレンス大阪、1995年8月]
[ Photo : Mr. Takashi Fuzawa, in Osaka in Augtust 1995 ]


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清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会