"WORKING QUADS"
頚髄損傷レベルで使用可能なツーピースベルト 1998
工藤 志朗 さん
Mr.Shiroh Kudoh, "WORKING QUADS" guests
"WORKING QUADS" homepage
工藤 志朗 さん、青森県在住
[写真説明:工藤 志朗 さん]
[ Photo : Mr.Shiroh Kudoh, "WORKING QUADS" guests ]
「頚髄損傷レベルで使用可能なツーピースベルト 1998」
頚髄損傷レベルで使用可能なツーピースベルト
機会あって何ヶ月かハンモックタイプの吊り具を使用したことがあります。
装着時のわずわらしさ、脱着の面倒くささを常々感じていました。自宅での利
用に際しては、介助者等も適宜入れ替わる可能性がある為、特により簡単な操
作が望まれます。また毎日欠かさず使う物、本人への負担や介助の軽減も考慮
しなければなりません。その為にもハンモックタイプの吊り具を諦め、頸椎損
傷レベルでのツーピースベルトの使用を決意しました。
ツーピースベルト
【利点】
○ペット上でも、車椅子上でも、最も容易に脱着できるタイプである。
○この姿勢は体幹が直立に近くなり、車椅子で着座する時には適している。
【欠点】
○一般的にこのタイプの吊具は、体幹ベルトによって肩が上がり、脚ベルトが
膝の裏に来て臀部が落下した吊り下げ姿勢になりがちである。
○脳性麻痺や頸椎損傷などの重度の障害を持つ方への使用は、安全上にも注意
が必要であり、使用不適。
工藤 志朗 さん、青森県在住
写真@
ツーピースベルトの欠点である胸を吊る方のベルトによって肩が上がり、脚
ベルトが膝の裏に来て臀部が落下した吊り下げ姿勢となる。特に頸椎損傷など
では、この傾向が顕著に現れ、高位頸損者や重度障害者の使用にツーピースベ
ルトはあまり適しません。但しこの姿勢では苦しそうに見えるが、本人が痛み
を感じたり、落下する危険がない場合にはそのまま使用できるとありました。
がしかし、いざ購入し使用してみると、そのままのツーピースベルトでは全
く適応できませんでした。腕で身体を押さえるほど力がないため身体がずり下
がり、脇が痛くて使えなかったのでした。移動の間少しは我慢できるかとは思
いますが、毎日欠かさず使う物、簡単で楽に使えるに超したことはありませ
ん。
そこで、青森労災病院のリハビリ(PT/OT)の先生方のご協力により、頸椎
損傷レベルでの使用可能なツーピースベルト型吊具を改良することになりまし
た。こういった場合私達障害者にとって、リハビリサイドによる積極的なる協
力は、快適な自宅療養には不可欠なものと思います。特に担当の佐々木美保先
生には数々のご協力に感謝いたします。
退院を3ヶ月後に控え、自宅療養に入るまでの比較的短期間という制約もあっ
て、購入したツーピースベルトを利用しての改良になりました。リフトに何度
も吊り下がり、何度も試行錯誤を繰り返し、安全で使いやすくしかも楽な吊り
具を目指しました。
↓比べてみて下さいこの姿勢の違い
既製品のツーピースベルトを使用し、胸ベルト・脚ベルト共に中央部から吊り
下げて見ると姿勢は随分と安定したものとなる。
[悪い姿勢とよい姿勢]
悪い姿勢(写真A)
股関節が強く屈曲してしまうと、に示すように、脚ベルトが膝の裏に滑り、
臀部が落下し、さらに肩関節の固定力が弱いと腕が上がった姿勢になる。この
姿勢では、肩関節への負担がより大になる。
特にハンガーの幅が胸の幅より広いホイストで吊り上げると、この傾向が強
く出ます。
工藤 志朗 さん、青森県在住
この問題を防ぐ方法には、次のような方法がある。
○体幹ベルトはできるだけ背中の中央にセットする。脇の下に近ければ近いほ
ど肩に負担がかかり、腕が上がった姿勢になりがちである。
○脚ベルトはできるだけ大腿部中央にセットする。膝の裏に近ければ近いほ
ど、臀部が落下した姿勢になる。また、ハンガーの吊り下げ用フックは、胸ベ
ルトと脚ベルトの架ける位置が離れている場合はこの限りでありません。(上
体が倒れ良い姿勢となる。)
良い姿勢(写真B)
Bに示すような姿勢が最も快適な姿勢である。
工藤 志朗 さん、青森県在住
リフト及びツーピースベルトの改良
写真C
写真D
←既製品のツーピースベルトの脚ベルトを改良し、胸ベルトととして使用。
(片側に楕円状の金具環を縫い付けて、もう一方の吊り具の金具を通しリフ
ターの中央のフックに架けて吊り下げる。)
脚ベルトを新たに作成。→
(長さ64p幅18p/ベルト長約50p調整可)
脚ベルトのベルトの長さを調整することにより、一番楽な吊り下げ姿勢を求
めることが出来る。
(既存の胸ベルトは、予備としてとって置きます。現在胸ベルトを利用しての
第2作目を試作中です。)
工藤 志朗 さん、青森県在住
工藤 志朗 さん、青森県在住
写真E
←リフターの中央にフックを取り付ける。既製品のツーピースベルトにて、胸
ベルト・脚ベルトをかける位置を両側からではなく、取りつけたフックによ
り、中央から吊り下げると姿勢は安定し楽なた吊り下げとなる。その方の状態
にもよりますが、既製品のツーピースベルトを利用して、そのまま中央からリ
フターに取りつけたフックに架けて吊り下げるだけでも締め付け等は大分軽減
される事も分かりました。ちなみに私は、頸椎C5レベルで脇を押さえる力は
殆どなく、改良無しでの中央から吊り下げでも痛みは代わらなかったため胸ベ
ルトを改良することで問題を回避できました。一概には言えませんが調査結果
C5レベルを基準にそれ以上の場合は改良型がベストで、C5より下や健常者等
の人には既製品のツーピースベルトを利用しての中央から吊り下げるだけの方
が楽との意見が多かったのです。
工藤 志朗 さん、青森県在住
写真F
頸損者特有の欠点を克服
@腕の力がないための身体のずり下がりと脇の痛さ。
→胸の吊り下げが脇からではなく胸の中央からの吊り下げになるため、吊り下
げによる締め付けが軽減される。胸の中央から吊り下げることで殆ど軽減でき
る。
A脚ベルトが細いための臀部が落下した吊り下げ姿勢。
→脚ベルトの幅を広くすることで、膝の裏からの吊り下げではなく、大腿部中
央に近いところからの吊り下げとなりより、安定した姿勢となる。
現在、既存の予備の胸ベルトを利用して第2作目を試作中です。新たな改良が
出来次第随時レポートしていきますのでこうご期待下さい。また、詳しい情報
は、
ホームページ『障害を乗り越えて』
http://www.infoaomori.ne.jp/~marin/main/main.htmlに掲載予定です。
ご意見アドバイスどしどしお寄せ下さい。
工藤 志朗 さん、青森県在住
今後の展望
◆検証はもっとたくさんのいろんな状態そしてレベルでの調査が望まれる。
(個人ではこれで精一杯。)
◆長さが固定であるため、胸ベルトのベルトの長さとリフターに取り付けた
フックの長さに注意。吊り下げ時に臀部が完全に浮き上がる状態に長さを事前
に決定すること。(姿勢については脚ベルトのベルトの長さを調整することに
より、楽な吊り下げ姿勢を確保できる。)
◆胸ベルトの幅がいち個人専用に作成したため、身体の大きさによる調整がで
きない。(これが今後の課題。)
◆胸ベルトの吊る方法が他にももっと良い方法があるのでは。
◆既製品のツーピースベルトを利用しての改良の為、より発展した改良に踏み
込むことが出来なかった。
そこで、この調査資料を基にある大手介護機器の会社に、高位頸損者や重度
障害者等幅広いニーズでの使用可能なツーピースベルトとして話を持ち込みま
した。その解答は、この不景気で新しい商品に研究又は開発にお金をかける余
裕はまったくないというお返事でした。私には、使用者が多少不便であれ我慢
我慢、たくさん売れて儲かるような製品しか作りませんよと言われたような気
がします。
障害にもいろんな程度があります。一つのものですべてに対応しようとする
こと事態無理があるのです。現在のリフターの中央にフックを取り付けるだ
け、たったそれだけで対応者も随分と増えるはずですし、楽に使えるのです。
このぐらい改良は、至って簡単に出来ることと思うのですが・・・。
大手介護機器の会社の皆様、儲けばかりり追いかけずに、もっともっと人に
優しい製品作りを目指して欲しいものです。
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あおもり 工藤志朗 TEL/FAX 0178-28-0604
http://www.infoaomori.ne.jp/~marin
http://www.infoaomori.ne.jp/~marin/main/main.html
Email ; marin@infoaomori.ne.jp
NIFTY ; HQC04040@niftyserve.or.jp/HQC04040
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(1998/8/3、画像ファイルも)
(1998/8/7)
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清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会