ラ・ピュセル
イラスト:雁川せゆ

連載第1回
15世紀、フランスの生命線オルレアン陥落寸前の春
神の使い「ジャンヌ・ラ・ピュセル」あらわる…………!
体内に幻獣を抱き、神の出現を求める若き将軍ジル・ド・レと聖少女ジャンヌ・ダルクのシノンでの衝撃的な出会い……聖性と魔性の長い戦いが今はじまる!

連載第2回
祝勝騒ぎの中、ラ・ピュセルは市民や兵たちに懺悔して祈れと命ずる。戦で凶暴化した幻獣をもてあまし、従者のトマを抱くジル・ド・レ。無力な少女でありながら謎の声に翻弄されるジャンヌ。それぞれの苦難を内に秘めて、次の戦いへと突入する。

連載第3回
ロワール川南岸の砦を崩そうと戦を仕掛けるラ・ピュセル。その時英軍の矢が彼女の胸を貫いた!
神の力を見届けようとするジルの前で、「謎の声」の主はジャンヌを見殺しにするかのような発言をする。ジルは魔性の力で彼女を癒そうとするが……。
敵将の前に力尽きる従者、幻獣を喚ぶジル……
オルレアン攻防のクライマックス!


肖   像

覚え書き(年齢は1429年当時)

証   言

ジャンヌ・ダルク(17才)

1月6日生まれ、山羊座。
通称乙女(ラ・ピュセル)
ドンレミ村の農夫ジャックの娘。
謎の声の「お告げ」に動かされて
オルレアンへ。

ええと、そのう……
あたし、ジャンヌ。
どうしてここまで
きちゃったんだろう。
でも、「声」は「行け」と
言うから……。

ジル・ド・レ(24才)

11月下旬生まれ、蠍座。
ブルターニュ地方に広大な所領を持つ、
フランスきっての富豪。
王太子シャルル7世の
信頼を得て王国軍を率いる。

頼りないバカ女だぜ。
目を離せやしない。
だが、面白い。
あいつは神の名のもとに
血と殺戮の宴を
もたらしにやって来た女だ。

シャルル7世(25才)

2月22日生まれ、魚座。
フランス国王を自称するも、
敵対するブルゴーニュ派と
通じた実母により
「不義の子」と宣言され、
窮地に立つ。

父は狂王、母は淫売、
そして側近は蛭(ヒル)。
これじゃ無気力になる
しかあるまいね。
神の使い? 
救国の少女?
もうどうにでもしてくれ!

アランソン公(22才)

シャルルの遠縁の従兄弟にあたる。
ジル・ド・レと共に国王軍を率いる。
ジャンヌの世話役をも引き受ける。

王族とはいっても
イングランドに囚われの身。
この屈辱は決して忘れない。
ジャンヌ?
ぼくは時々、本当に
神の使いなんだと
思う時があるよ。

トマ(26才)

ジル・ド・レの従者。
幼い時からジルと共に育ち、
ジルの抱く魔性(幻獣)を含めて
ジル・ド・レを受け入れ、
見守っている。

……(無口)。
黙っているのは本当は
怒っているからです。
いつものジル様らしく
ありませんね。
隙が見えますよ。

ラ・トレモイユ(47才)

シャルル7世の側近。
狡猾で、シャルルの
無気力につけいって私腹を肥やす。
ジル・ド・レの叔父
(従兄弟という説もあるが)。

たかが小娘に何が
できるというのかね。
うさんくさい娘を
陛下に近づけるな。
戦功など立てさせては
ならん。断じて!

エチエンヌ・コリオー(12才)

10才の時にその美貌が
ジルの目にとまり、
小姓として召し上げられる。
後にジルの愛人となる。
激しい熱情でジルを愛する。

ラ・ピュセルが神の
使いであろうと、
魔女であろうと
関係ない。
殿さまにふさわしいのは、
それはぼくだけだもの。

illustration:Seyu Karikawa←雁川先生のホームページへGo!